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長崎の旅(4):小浜温泉

前回からの続きです。

4日日の旅の最終日、小浜(おばま)温泉の宿「國崎」をチェックアウトして、温泉街をぶらぶらしてみます。夕方に長崎空港を発つ便に間に合えばいいということで、移動までも特に目的もなくゆったりとした時間。

小浜温泉は海に面した小さな温泉街で、島原半島を形作った雲仙温泉郷のひとつ。同じマグマだまりを共有しながらも、東側の島原温泉と、山中の雲仙地獄とはまた異なる泉質をもち、高温かつ全国有数の湯量を誇ります。

まず特徴的なのが、町のあらゆるところから湯気が噴き出しているんですね。温泉旅館の軒先のパイプからはもとより、道の側溝のようなところからさえももくもくと沸き立つ蒸気。とにかく、そこかしこから熱いお湯が出てしょうがないという感じ。ここまでのはあまり見たことない。

しかし日曜日の午前中にもかかわらず、少し路地に入ると人影はまばらで、熱海のような温泉街とはまったく違う雰囲気です。寂れているというわけではないんだけど、穏やかな時間が流れ過ぎていて、お店の人も観光案内の人もどこかのんびりしている。

そんななか、最初に訪れたのは小浜歴史資料館。ここは、江戸時代に端を発する「湯太夫」の役目を代々受け継ぐ本多家の旧家を改築した資料館兼カフェです。門をくぐってまず目につくのが木組みの何やら立派な源泉。

ここでは、月に2度ほど行われる清掃作業でパイプに詰まった湯の花を取り除くと、そのたびに膨大な湯が空高く吹き出すのだとか。結晶はそのまま近辺に積み上がっていて、案内のおばさんが持って帰りなさいよとしきりに言ってくれるのですが、持って帰ってもねえ。

資料館になっている本多家の家屋がまた大変に趣があり、カフェの受付を済ませると、先ほどのおばさんが座敷の縁側までコーヒーとお茶菓子を持ってきてくれます。至れり尽くせり。

お菓子はここ小浜に本社工場のある長崎銘菓「クルス」。クリスピーな煎餅がチョコレートを包む和洋一体のシンプルなお菓子で、このあとお店にも立ち寄っておみやげを買いました。パッケージの宣教師とシスターの絵がかわいらしく、グッズ展開している。

資料館を出て、小浜の街中を散歩。

路地裏で売っていた塩を練り込んだスコーン(かつて小浜では製塩業が盛んだった)や、観光案内所で紹介してもらった温泉あんぱんを買い込んで、町の名所のひとつだという海沿いにある全長105mの足湯を目指します。

観光案内所
120円のあんぱんを「はい1万2000円」と言ってくるおばあちゃんのお店
島原半島ではサイクルツーリズムを推進している

そういえば、小浜温泉で町歩きするとなったらぜひ見つけたかったのが、15年前にアメリカ大統領に就任したオバマさんに勝手に便乗した「オバマ看板」なんですけども、ありました。お食事処「海花亭」さんの軒先に…。

絶妙な絵心に、年月を重ねた風合いの良さ! やっぱこのノリ好きだなと思っていたら、その先の観光案内所で売ってるタオルにも、足湯スポットに立ち並ぶのぼり旗にもオバマさん。さすがにその公式感はちょっと不安になってしまうよ。

そしてこの屋外フリー足湯スポット「ほっとふっと105」というのが、海に面してずっと続いている。ここは最高ですよ。

この日12月8日、快晴とはいえさすがに日陰は肌寒く冬の訪れを予感させる気温でしたが、かなり熱めのお湯にひざ下まで浸かっていると、体の芯がじんわりと温まってくる。それなりに多くの観光客連れが代わる代わる足湯を楽しんでいました。

隣接する物産店でおみやげを購入。以前食べておいしかった雲仙ハム、最終日に空港に売ってなくて買いそびれてしまったので、今回ここで保冷剤もおまけで包んでくれて良かった。

13時過ぎには小浜を発ち、少しずつ長崎空港を目指します。途中、雲仙市を抜けて、諫早の手前あたりで立ち寄ったのが「風の森」。

ここは、地元の浜松建設という建設会社が切り開いた森のなかに、小さなカフェや菓子店、レンタル型のアート展示スペースや工房スペースを備えた、ちょっとした隠れ里のような空間。

なにしろここは思いがけず紅葉が美しく、温暖なためかこの時期の島原半島ではあまり見られなかった鮮やかな風景が広がっているのでした。

いつもはVRChat上でワールド巡りをしている友人同士であったので、物珍しい空間に突如POPして写真を撮ったりするムーブがそのままリアルで行われている感じがなんだかおかしかった。

空港へ向かうには少し時間が早かったため、そのあとEspresso D Works諫早店に寄り道し、珍しく暴力的に甘いフレンチトーストを食べる。

日暮れ前に長崎空港まで送ってもらって、これにて前半ソロ旅・後半3人旅からなる4日間の実り多い長崎旅行はおしまいとなりました。

個人的に2回目の長崎。熊本から島原、そして長崎市内を巡った前回とは異なり、西から東まで大きく移動し、また島原半島全体を見て回ったことによって、よりこの地域の解像度が高まりました。それでもまだ平戸や西海市のあたりはもやもやと謎に包まれているし、いつかは五島列島の教会巡りもしてみたい。長崎の広さと奥深さを感じます。九州もまだまだ行ったことないところばかりですからね。

知らない町で初めての風景と出会い我が身を見つめ直すひとり旅の良さ、20年来の気の置けない仲間と巡るのんびり旅の良さをどちらも噛みしめる4日間でした。また行かなきゃな。

家族用に買って帰ったおみやげ


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