見出し画像

長崎の旅(3):島原半島周遊

前回の続きです。

旅行3日目、この日は朝イチで諫早のホテルをチェックアウト。本諫早駅から7時台の島原鉄道に乗り込み、島原市内に住む友人宅を訪ねます。宿は小浜に取ってあるので、友人の車で島原半島を時計回りにぐるっと観光して回ろうかという計画でした。

朝の島原鉄道

土曜日、朝7時過ぎの島原鉄道 本諫早(ほんいさはや)駅。わたしと友人の他には女性客が一人だけで、現金で買った紙の切符に駅員さんがハサミを入れてくれる。こういうの久しぶり。島原までは一時間くらいの鉄道旅。

日の出とともにやってきた黄色い一両編成の電車に乗り込んで出発します。進行方向左手に広大な諫早の干拓地の田園風景を望み、やがて堤防を通り過ぎると有明海が見えてくる。

車内は、いつの間にか大方の座席が埋まっている程度には乗客がおり、我々のような観光客のほか、地元の通勤通学の大事な足として使われているんだろうなという感じ。我々は最後尾の窓際に立って、グラデーションのように変わっていく車窓からの景色が楽しんでいる。

そうこうするうちに目的の駅に到着。出迎えに来てくれた友人と合流し、町の中を案内してもらいながらご自宅へ向かいます。古き良き街並み! 自分は父方の実家が和歌山のやはり海沿いで、こういったスケール感の家々にはどこか懐かしい雰囲気を覚えます。このへんは割愛するので、町の様子を撮った写真をいくつか。

島原半島を巡る

昼前には友人宅を発ち、半島の沿岸部を囲う国道251号を行きます。南島原市に差し掛かったあたりでは、今日も雲仙の平成新山の荒々しい山肌があらわ。前回来た時にも思ったことですが、島原の魅力のひとつは、見る角度によってまったく表情を変えるこの雲仙の山並みにあるように思えます。

まず最初に向かったのは、南島原市の「原城聖マリア観音ホール」。ここは今年9月にオープンしたばかりの施設で、一見して教会かと思うのですが、特に宗教的意味合いのある施設ではない。では何があるのかというと…

全高10メートルの木彫りの「大聖マリア観音」立像なのです。でかい! パトレイバーのイングラム(8.02m)よりも大きい。これを作ったのが、彫刻家で御年90歳の親松英治さん。40年もの月日をかけて、たった一人で藤沢市のアトリエでこつこつと彫り上げたのを、私財を投じ、さらには支援者と自治体の協力を経て、遂にここ島原の丘の上に設置されたのだとか。

樹齢300年もの楠をスライスして校倉(あぜくら)造りに組み上げたそうで、しかし頭部は一本の木からなるのだという。着手にあたってローマ教皇に手紙を送り、正式に祝福を受けてから始められたというのだからその信念たるや。その目的は、島原・天草一揆の犠牲者に対する慰霊のためだそうで、宗派を超えた追悼の祈りが込められているんですって。

島原を治めた有馬氏からとってARIMA MARIAというのもおもしろい

施設のとなりには、こういった最高のロケーションのブランコが設えられていて、祈りの場としては場違いのようにも思われるのですが、それこそ教会ではないのだし、これはまたアーティストの遊び心なのかも。おじさん3人でキャッキャとはしゃいでしまいました。

次に訪れたのは、「原城温泉 真砂」。ここは、天草四郎ゆかりの地として有名な「原城跡」にほど近い海岸沿いに建てられた、宿泊もできる日帰り温泉施設です。モダンな建物で、露天風呂こそないものの、オーシャンビューの巨大な窓に面した大浴場からはまるで湯舟と海が続いているかのような解放感。

併設のレストラン「はる乃」もやはり眺望のよいお店で、ここでは島原名物の具雑煮(ぐぞうに)定食をいただきました。文字通り、具だくさんのお雑煮です。

温泉で温まり、お昼ご飯を食べたあとに向かったのは、島原半島の南端に位置する口之津(くちのつ)港のフェリーターミナルに入っている「口之津歴史民俗資料館」でした。待合室の2階にちょっとした展示がある程度かと思いきや、2つの展示室にビデオや史料がたっぷりあって、島原の玄関口たる口之津港の歴史を概観できるようになっています。

口之津は、島原半島の先にさらに突き出た天然の出島のようになっている港で、有明海の玄関口であるばかりか、16世紀においては南蛮船を出迎えた貿易とキリスト教徒伝来の地であり、明治においては大牟田の三池炭鉱からやってくる石炭輸出船を外海へピストン輸送する拠点として、税関さえ設けられた港だったといいます。
今になっては、熊本県天草市の鬼池港との間にフェリーが運航されるほか、観光の目玉としてイルカウォッチングの船が出るというくらいの小さな港…。またひとつ歴史に触れる体験でした。

口之津を出たのは16時。ここからまた引き続き国道251号をひたすら北上して、この日の宿泊地である小浜(おばま)温泉を目指します。同じ島原半島でも、朝日を迎える東側と夕日を見送る西側、また内海である有明海をたたえる東側と外海の東シナ海からの波を受ける西側とでは、まるで表情が違う。2日前に佐世保の九十九島で見たような、海に向かって暮れゆく夕日のセンチメントがここにもありました。

小浜の宿

17時過ぎに今夜の宿「旅館 國崎」に到着。ここもやはり楽天トラベルで見つけた旅館ですが、素泊まりの前2泊と違ってたまの贅沢しましょうと、食事つきのプランにしました。部屋数10部屋の小さな旅館に、3つの貸し切り湯と内湯がついた、かわいくも風情のある温泉旅館です。「日本秘湯を守る会」掲載の宿。

まあお出迎えからして素敵な宿で。貸切風呂の状況は奥ゆかしく廊下のランプで知らせてくれて、空いていれば好きなように入っていいことになっています。露天風呂は、昔の日本家屋らしい細い急な階段を登って行った先にあり、これまた最高のロケーションなのでした。

豪勢!

4日目、最終日に続きます。


いいなと思ったら応援しよう!