ドント・ウォーリー・ダーリン(2022)
ミッドサマーで主演を務めたフローレンス・ピューと、ONE DIRECTIONメンバーであるハリー・スタイルズが主演のスリラー映画だ。
これもまた好きな作品の一つ。
脚本もまずまず面白いのだが、それよりも画面を彩る若い二人の華やかさと、カラフルで美しいけれど現実味のない世界観がとても気に入った。
割と序盤から挿入される「何かがおかしい」感じもゾクゾクして良い感じ。
ちなみに怖くはないです。
<ざっくりあらすじ>
豪邸ばかりが建ち並ぶ住宅街。周囲は砂漠に囲まれている。ジャックと妻のアリスは仲良く華やかな生活を送っていた。この住宅街に暮らす妻たちは夫の職場や仕事内容について何も知らない。彼女たちに要求されているのは、お洒落をして綺麗な妻でいること、毎朝夫を送り出して家事をこなし、夜の相手をすることだけだ。
妻たちは皆バレエを習っている。そこで教わるのは「制御することの美しさ」。
アリスはこの「完璧すぎる」生活に疑問を抱くようになり…
<感想>
※以下ネタバレを含みます※
フローレンスのどこか危なっかしい演技が良い。
ヘルシーではつらつとした振る舞いの中に、制御できない衝動性を感じる。
あどけなかったハリーはすっかり大人になっている…
演技もすごく自然で、俳優の才能もあるとは驚いた。
どこでもお構いなしで始まる妻とのいちゃらぶシーンも激しめ。
フローレンスのむちむちボディも相まって非常にそそるのだ←
物語は序盤から違和感のオンパレード。
この世界は現実ではないことは明らかである。
ジャックや他の夫たちは何か隠している。
この手の話に慣れている人なら、すぐに勘付きそうなオチだ。
全体のテーマは、男性が求める良き妻像への批判なのかもしれないが、別に女性の全員がバリバリ社会で活躍したい訳ではないよなーと思う。最近はやたら妻も働くべきだという圧力が強まっているが、家庭という最小単位のコミュニティの中で生きていたいと考える人だっているだろう。
働くのって、もうめちゃくちゃに大変だもの。ほんと。
望んで専業主婦になる人だっている。専業主夫も然り。
働ける方が働けばいいんじゃないか。
実際、現実世界で女医であるアリスは仕事に忙殺されており、あまり幸せそうには見えない。本当に自分の人生を生きていると言えるのか疑問だ。
ジャックがそのことを指摘しているが、あながち間違っていないと思う。
そしてこの作品は理想の男性像にも疑問を投げかける。
仮想世界でのパーティーシーン。ジャックが上司からダンスを強要されるシーンがあるが、その姿はまるで操り人形のよう。妻をコントロールしているように見えるジャックも実は、このシステムを提供している組織の歯車の一部であり、この完璧な生活を維持するために、優しくて素敵な夫を演じているのだ。無職からエリート夫へと昇格を果たしたジャックだが、終盤で全てを知ったアリスと口論になる場面では「毎日仕事に行くのが嫌でたまらないよっ!」的なことを叫んでいる。
なんや、君もストレスMAXやったんか。100%ブラック企業だもんな。
そしたらもう誰のための仮想世界なのか分からない。
余談だがアリスと仲良くしていたバニーが、実は最初から全て知っていたという捻りは秀逸だ。彼女は実際には空想に過ぎない我が子たちを守るため、仮想世界にとどまることを選ぶ。それはそれで切ない選択肢である。彼女の現実の人生はどんな風だったのか気になってしまう。
あらためて書いていると本質的には誰も幸せにならないストーリーで、ぎゅっと濃縮したらブラックミラーにもありそうだ。
幸せについて本気出して考えてみたい人はぜひ鑑賞してください。
意外になくはないんだと気がついたら、是非スキを押してください。
私が幸せになります。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?