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血風録 2020年5月 第1週
○ 五月一日(金)
起床。朝八時すぎ。快晴。電気つけっぱなし。
乞食本の文字起こしを始めてから一週間が経つ。べつに文字起こしタイピングが好きなわけではないが、これをやらないとムズムズして落ち着かない心境になりつつある。自粛&無職生活におけるサボり防止とデスクに向かう習慣づけも兼ねている。おれというきわめて根がサボタージュ気質にできてる怠惰な人間に強制的にアウトプットさせる仕組みををつくり出すことに成功したのかも知れない。やったね!
午前中。リアルフォースが届いた。ゆうパック。2万円超えの商品なので対面で受け取る。フェイスマスクと手袋とボールペン持参にて対応した。
さっそく既存のキーボードとリアルフォースを交換したところ……指先が軽い! まさにフェザータッチタイピングである。リアルフォースキーボードを口にくわえて滂沱の涙と洟水を垂れ流しながら「これに比べるとバッファローのキーボードはカスや!」と宣う京極万太郎のモノマネでもするかな。まさしく、今まで使っていた2千円のキーボードは価格相応のカスであった。
作業用テーブルをインターネット上で物色している。二週間ほどまえから。いま使用しているのはアイリスオーヤマの折りたたみ式テーブルだ。けっして悪くない使い心地なのだが、大量にタイピングをおこなう現状下では用に耐えない。折りたたみできる利便性を備えている代わりに安定性が心許ないのである。ぐらつく。
新しいデスクの予算は5千円前後。これ以上は無理である。日本国政府による現金給付をひかえているものの、おれは働きに出る気概を失っており、そもそも貯金ゼロ。必要な設備投資といえども、現金は慎重に使っていきたい。
ということで、アスクルで良さそうなものを見つけた。
税込4,730円。きょうの正午すぎに注文したら、なんと明日到着するらしい。どんだけ。
いま作業用につかっている折りたたみデスクよりも幅が30cmも広い。高さは同じなので椅子がそのまま使える。天板を支える四つの足は金属製らしく、注文者レビューをざっと確認したかぎりでは「ぐらつき」の心配はなさそうである。わくわく。
○ 五月二日(土)
起床。朝八時半すぎ。快晴。
着荷。九時すぎ。アスクル。早いッ! テーブルが届いた。
開封の儀。天板と足四本と説明書。ネジやボルトはもともと付属しておらず。天板裏の四隅にネジ式の足を取り付けるだけで完成。五分もかからず。天板は思っていたよりも分厚くて、金属製の脚は思っていたよりも太い。グッド。ぐらぐらしないかといえば多少グラつくが、脚の先端にアジャスター付きなので、たとえ床に傾きがあっても調整できる仕組み。これで税込5千円ならば大満足である。
アスクル良いね。たとえ法人や個人事業主でなくとも、会員登録時にテキトーな屋号を入力すれば利用可能である。アスクルは購入金額1千円以上で送料無料。食品や雑貨はLOHACO(アスクルの個人向けショップ)が良いけれど、オフィス・ファニチャーについては、アスクルのほうが、アマゾンや楽天市場よりも安いものがある。
乞食本の文字起こし。売笑婦(売春婦)の章は一節が長くてつらい。この著者は同じことを繰り返し書く癖があるので、それも厄介である。
ちなみに。旧字や旧仮名遣いの文字起こしのコツ。ピアノを演奏するようにリズミカルに打鍵すること。「ゐる」や「洗ふ」などはあらかじめ単語登録してあってもIMEが一発で変換してくれない場合が多いので、なるべく短く区切ってタイピングすることが遠回りのようにみえて近道で確実である。
それにしても乞食本の文字起こし。キーボードを打っても打っても終わらない。深夜零時すぎたあたりで力尽きた。
寝るまえに『必死剣鳥刺し』を観た。U-NEXTの見放題対象。三度目の1ヶ月無料体験中。なぜか何度も無料で使わせてくれる。たしかにアマゾンプライムやネットフリックスと比べて割高であるから、競合とたたかう為には無料体験プロモーションしか打てる手がないのだろう。
鳥刺し。好みの仕上がりだった。主演は豊川悦司。おれの青春時代はトヨエツとキムタクいずれかが主演を務めるテレビドラマが多かったので自然に親しみがわく。だからひいき目かもしれないが、鳥刺しは面白かった。藤沢周平の原作も読みたくなった。池脇千鶴の存在感も良かった。蒼井優が登場したおかげで「池脇千鶴的な配役」を独占できなくなって久しいが。おれはひそかに応援している。
鳥刺し。2020年5月2日現在、Amazonプライムでも見放題対象。
二〇二〇年五月 第一週おわり