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西村賢太の没後刊行書・講談社文庫『瓦礫の死角』(2022年5月13日第1刷) の基本的疑問点
1.「新川」に対して、ルビ「しんかわ」を付与している
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落日堂主人の新川に対して「しんかわ」ルビを付与している。 単行本『瓦礫の死角』(127頁2行目) にはルビ無し。
角川文庫『人もいない春』(Kindle版) 所収の「二十三夜」では、 新川に対して「あらかわ」ルビを付与している。
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講談社文庫『夢魔去りぬ』所収「畜生の反省」でも、新川に対して「あらかわ」ルビを付与している。
いち読者としては、「新川」のモデルであろう朝日書林の荒川義雄氏を踏まえて「あらかわ」と読ませるものという認識だ。
2.「買淫」に対して、ルビ「ばいいん」を付与している
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一方で、西村賢太校訂・藤澤清造著の新潮文庫『根津権現裏』10頁2行目、角川文庫版『根津権現裏』、新潮文庫『暗渠の宿』26頁12行目、講談社文庫『藤澤清造追影』294頁6行目(日暮里②)においては、「買淫」に対して「かいいん」ルビを付与している。4点とも西村賢太が生前時に刊行したもの。
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現状、西村賢太が生前「ばいいん」ルビを使わなかったという絶対の確信がない(確証を得るためには全著作チェックを要する)。 もしかすると、生前の賢太が出版関係者とのやりとりにおいて「ばいいん」と発音していたかもしれない。本当のところはわからない。
3. 大下宇陀児に対して、ルビ「おおしたうだじ」を付与している。これは単純な誤り
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生前刊行の単行本『瓦礫の死角』84頁12行目にはルビ無し。
正しくは、大下宇陀児。よくある間違い。
・作家別作品リスト:大下 宇陀児(おおした・うだる)
https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person1872.html
・生誕120年 探偵作家 大下宇陀児
https://www.town.minowa.lg.jp/bunka/lib/lib000132.html
スペシャルサンクス『本の雑誌』2022年6月号
今回の調査において、新川の登場エピソードを探す手掛かりとして『本の雑誌』2022年6月号西村賢太追悼号所収の「北町貫多クロニクル」(杉江由次・作成) が大いに役立った。