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血の呻き/沼田流人(著)

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北海道のプロレタリア作家・沼田流人(ぬまた・るじん)。当時のタコ部屋(監獄部屋)を主題とする長篇小説。ロマンス要素が強め。 新字・現代かなづかいにあらため、人名や読みにくい漢字…
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2022年6月の記事一覧

目次 沼田流人『血の呻き』

上篇第1章 第2章 第3章 第4章 第5章 第6章 第7章 第8章 第9章 第10章 第11章 第12章 第13章 第…

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血の呻き 中篇(13)

         二九  ──薄暗い、落葉松林の端に、彼は立っていた。樹立の細い葉は、悩…

血の呻き 中篇(14)

         三〇  その次の日の夕方、あの魯鈍な百姓上りの若者が、一人の男を連れて…

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血の呻き 中篇(15)

         三一  山崎は、すっかり、厭しい情慾の恣楽の爪にかき挘られて、その膚も…

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血の呻き 中篇(16)

         三二  次の日、靴屋は自分の肩を負傷した。彼は、連れの男と一台のトロを…

血の呻き 中篇(17)

         三三  その日も、靴修繕師は、仕事を休んだ。 「痛むかい」  明三は、仕…

血の呻き 中篇(18)

         三四  彼等が、帰って行った時、時子は、扉に靠れて立っていた。靴修繕師は、人々の一番後について、隠れるようにして歩いて来た。  女は、何かを探し索めるようにじろじろと人々を見ていたが、その中に交って、俯れて歩いて来た明三を見ると、慴えたように立竦んで、微かな叫声をあげた。 「ああ……」  そして、二歩ばかり彼の方へ歩み寄ったが、後退りして、わなわなと慄え出した。  明三は、ちらと彼女を見たが、何も言わないで、そこに立止って人々を通り過した。 「何だい。お前

血の呻き 中篇(19)

         三五  ──明三は、灰色な渇ききった地面に跼まっていた。黄色く、熱の為…

血の呻き 中篇(20)

         三六  人々が、寝る頃になってから、時子は暗い壁の下、明三の寝床の所へ…

血の呻き 中篇(21)

         三七  その夜を、彼は、殆んど眠らないで、明した。次の朝、まるで死人の…

血の呻き 中篇(22)

         三八  暴風は、発狂した獣のような叫声をあげて、狂いまわった。  明三…

血の呻き 下篇(1)

         三九  昼前に汽車はB市に着いた。  明三は、故郷へ還された流刑者のよ…

血の呻き 下篇(2)

         四〇  彼等が行った時、酒場では恐ろしい混乱の中に何か大声で喚き立てて…

血の呻き 下篇(3)

         四一  室の前まで来ると、医師は急に立止った。そして、明三の手を離して、彼から二足ばかり走った。 「さよなら……」 「何故……。貴方は、何所へ行くんです」  明三は、慴えたように聞いた。 「静かに……。お寝みなさい」  医師は、力ない声でそれだけ言って、暗い戸外へ出て行った。明三も、彼について歩き出そうとした時、室の中で尖った雪子の声がした。 「何所へ、行くの……」  明三は、叱られたもののように俯れて、彼女の側へ帰って行った。雪子は、あの時のままの形で、