「アイヌの美しき手仕事」と「蒐集の時代」について(雑感)
たまには気楽なことも書こうと思う。先日珍しく札幌で休日を迎えたので、北海道近代美術館で開催中の「アイヌの美しき手仕事~柳宗悦と芹沢銈介のコレクションから」に行ってきて、考えた話を少しだけ。ちなみに「気楽なこと」「雑感」という割には2000文字以上の有料ページもあります。ちなみに本展の会期は2020年1月13日まで。どうでも良いんですが、北海道近代美術館ってオフィシャルサイトが存在しないんですが、このご時世にすごいな。
展示内容を簡潔にまとめると、柳宗悦と染色家の芹沢銈介のアイヌ工芸のコレクションを中心とした展示。展示会場にはロシアの方(ぼくロシア語が第二外国語だったので「ロシア語喋ってるな?」ぐらいはわかります)や、アイヌ衣装の方がいらっしゃったことが印象的であった。
民藝運動の主唱者として知られる柳はアイヌの手仕事の美しさに着目し彼を師匠と慕った芹沢銈介が作品選定と陳列を担当する形で「アイヌ工藝文化展」(こちらは杉山寿栄男が蒐集したもの)を1941年に実現させた(トップ画像は、本展で唯一撮影OKの場所で「アイヌ工藝文化展」の陳列方法に従ったもの)。その後、こちらのコレクションは震災で焼失してしまったが、その後も柳と芹沢はたくさんのアイヌ工芸を蒐集していた。本展はそのコレクション展。札幌市立大学の学生はぜひ行って欲しい。
全体を見て、当時は「蒐集」というものに価値があったのだなあ、ということを強く感じた。彼らの時代は気軽に北海道まで行って、気楽にいろいろなものを見ることができなかった時代だろう。わざわざ現地に行き、蒐集し、展示する、という行為にはかなりの価値があったのだと思うし、専門家の仕事の一つだったのだろう。
一方、現在はどうだろうか?まずは交通網の成熟があり、少なくとも日本国内なら2日あればどこでもいけるようになった。また現在のネットカルチャーは「見ることができるもの」を圧倒的に増やした。どんな辺鄙なところにあるものだとしても、一度写真や映像によって「蒐集」されれば、少なくとも表面的にはインターネット上で「展示」され、「見ることができるもの」になる。それによって毎日のように「見るべき」と感じるような面白いものに出会うことができる時代になった。言い方を変えれば、僕たちは視覚のインフレーションを体験している。また、当時ほどに「蒐集・展示」の価値は見出せないだろう。
と、言うことはだ、逆に「他の人にはできないこと」にこそ、次の時代の価値は移動するのだろう、と思う。柳たちが「わざわざ現地に行き、蒐集し、展示する」という行為に骨を折ったように、次の時代に「骨を折らないといけないこと」を、ぼくは見つけたい。
ぼくは「視覚の奥にあるもの」が大事になるだろう、と予測している。それは思想かもしれないし、コンセプトと呼ばれるものかもしれない。できれば、ストーリーやロジックが整理されていて、インターネット上で消費されにくいもの。そんなものをどこからか見つけるような仕事が重要になってくるのかもしれないなあ、と今回の展示を鑑賞しながら考えた。今日はそんな感じ。
なお、同時開催の「追悼 松樹路人展」と「瀧川嘉子展」も結構面白かったです。こちらも是非。
さて、久しぶりに有料ページをつくってみようと思います。
この展示で、柳宗悦や民藝運動にちょっと関心を持ち始めたのだけど、先日、それらに関する、とても参考になる一つの企画展と一冊の本に出会った。今回はそれらについてご紹介。ついでに企画展が開催されていた土地(北海道じゃないです)の美味しいご飯にもご紹介。2000文字以上あるので、それなりに楽しめると思います。
民藝運動の周辺には、実は現代のワークショップなどとも密接に繋がる概念が潜んでいた。MMMやMRSに本腰を入れる、このタイミングで出会えたことに感謝したい。
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