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サッカーを越えたあの日のワンシーン


「忘れられない」と言われたら

10年前のあのシーン。

映画のようなワンシーン。

「このかっこいい人は誰?」

「海外のどこから?」

一瞬にしてテレビの画面に目がくぎ付けになった

忘れられないあの日。


「共に生きよう。」

爽やかな甘いマスクのサッカー選手が

Tシャツにマジックの黒インキで書いたであろう

手書きの言葉をカメラに向かって見せてくれた。

隣には背の高い海外の選手がいて

前へと促していたように見えた。


あの時は日本中が混乱の渦の中にいた。

そして悔しくも

今も渦の中からは

抜け出せていないのだが。


何が起こったのか

何が何だか分からなくて

悲しみとやるせなさと焦りと

どこにぶつけて良いか分からない怒りと。

感情がぐるぐるとミキサーのように混ぜられて

どうにもこうにも気持ちの行き場が見つからなかった。


そんな時に

テレビの中で

少しだけ遠慮がちに

でも強い意志を感じさせるたたずまいの

サッカー選手は

Tシャツをぎゅっと両手で引っ張りながら

画面に向かって

言葉たちを届けてくれた。


気がつけば

私は涙を流していた。

あの映画のようなワンシーンは

日本から遠く離れたドイツのピッチの上で真剣勝負をしている

サッカー選手の

リアルなワンシーンであった。


その当時サッカーに疎かった私は

後から調べてみると

内田篤人という選手で

Jリーグの鹿島アントラーズから

海外へ渡った選手であり

隣にいた背の高い選手はマヌエル・ノイヤーという

ドイツ代表のゴールキーパーであると知った。

(サッカー好きの人には今さら

説明をするまでもないビッグプレイヤーなのだが。)



はるか遠い土地から日本に思いを馳せ

サッカーの現場から何とかして

元気を届けようとしてくれた

人がいること。

頑張れ、とか

負けるな、ではなく

「共に」と

同じ目線で

隣に並んで声をかけてくれているような

暖かい言葉を選んでくれたこと。


サッカーの試合のみならず

心の奥まで響くメッセージを

日本へ届けてくれた。


ちなみにその試合は

内田篤人選手が所属していた

シャルケが勝利したとのことだった。


もしかすると

試合に負けていたら

この言葉は日本へ

届けられたかは分からない。

ノイアー選手の勝利への決意があったとのこと。


いくつもの思いが重なって

日本へとメッセージが届けられたのだ。


毎年3月になれば思い出す。

あのワンシーンを。

作り物ではなく

ピッチで戦うサッカー選手が届けてくれた

リアルなあの日のワンシーンを。


サッカーがサッカーを越えたあのワンシーンを忘れない。





#サッカーの忘れられないシーン
#内田篤人
#マヌエルノイヤー