でもやっぱり物足りないくらいが丁度良い
今年1月に観た映画のどちらにもスズナリが出てきて驚いた。しかも2作連続。
お金がなくても良いから下北に住みたい。
なんて思えるほどもう若くない。
いやまだ若いけど、衰えた。
第一、下北は私なんかには似合わないし、
片手で数えられるくらいしか行ったことがない。
この日は正直全然乗り気じゃなくて、
なんとかして帰りたかった。けど無理だった。
君の髪が風に触れたときと同じように
柔らかくて甘い香りがする部屋で、
言うなれば2人だけの劇場で、
十分良いじゃない。足りない?わけないよね?でも
「ねえやっぱり帰ろう?」
って言わなくて良かった。
演劇は最悪だった。演技の良し悪しの問題ではない。最後のシーンがうるさすぎて忘れられない。
思わず客席から、うるせえ!と叫びそうになった。割と真面目に危なかった。
マジであの坊主誰か止めろよ。
次は私が止まれない。
ちゃんと稽古してるのか?(あれ?問題はやはり演技なのか?)
次の公演のお客さんに心から同情する。私は後列だったから、特に前列のお客さんに同情する。
でも空間は最高だった。君の部屋だったら、
2人だけの劇場だったら、どうしたって物足りない。
あの空間でただいつまでも呆然と出来たら素敵だと思う。もちろん君が隣に居てくれるのが大前提。
でもその間に私だけほんとに留年なんかしちゃったりするかもしれない。そして、やっぱり下北に住みたいと思ってしまう。かもしれない。
私は演劇じゃなくて、あの空間に2時間弱座る権利を買った。椅子の座り心地の悪さは、私にはむしろ心地良かった。
外の階段、降りるの怖かった。
踏み外したときが怖い。
君が後ろにいてくれて安心した。
「期待外れだったね、次は大学生のくだらない恋愛物が観たいな」
その彼女との次は来なかったけれど、それで良かった。