2024年6月末 投資メモ エヌビノミクス
今月のポイント
エヌビノミクス
現状はエヌビディアとクラウド業者がGPUを売ったり貸し出したりして潤っているが、GPUにお金を払う顧客が利益を挙げられずに苦しんでいる。エヌビディアを除くとAI銘柄の株価がむしろ下落している。これは長期的に持続不可能。
矛盾解消のシナリオとして、エヌビディアの株価が一旦調整することも考えられるが、中長期的には顧客がGPUから利益を上げ、それをさらにGPUへ再投資に回していくことでエヌビディアの業績も伸び、それによってGPU性能が向上し、さらにより強力がAIが生み出され、それがまたサービス提供者の利益となり、またエヌビディアへ帰ってくる、というサイクルが完成し一定期間続くだろう。エヌビディア経済圏が大きく成長する兆しが見え始めている
Adobeの決算でAI製品が寄与し株価反発
テスラ株主総会無事通過
イーロンの望んだ結果になった。次は夏のロボタクシーを待つ
全体像
今後5年〜10年の展開
ブーム(前菜)→低迷(休止)→本番(メインディッシュ)
次のように対応
前菜:95〜2000年のドットコムバブル期
休止:2000〜2002年のドットコム冬の時代
メインディッシュ:2002年〜インターネット全盛期
現在はブーム(前菜)序盤にある
ポイント
大相場で一番大事なのはいつ何を買うかではなく、乗っておいて降りないこと
上手に乗り換えられれば利益は増幅される余地がある
「インフラ → クラウドなどの中間サービス → 製品・サービス」の順で来る見通し
半導体銘柄の全盛期は序盤(今)
AI本命銘柄やAIによって躍進する銘柄は中盤から終盤
Nasdaqは全期間を通して強い
トピック:技術革新とバブルのメカニズム
まともな予測が当たるような成長はそもそも技術革新とは呼ばない。
技術革新はすくなくともあるフェーズではその成長が大半のまともなアナリストの予測を裏切る。それが何度か続くとやがて冷静だったアナリストも自信を失い、(かつてのニュートンのように)逆に買いに回ったりして、市場から「売り手」がいなくなる。そこで価格が合理的なラインを超えて高騰してしまう。これは人間性から考えて不可避なこと。
実際に蒸気機関、鉄道、電気、インターネットはそうだった。
現在のNvidiaの株価は少なくとも予想PERの観点で実績相場と言える。ただし予想PERはEPSをどう予想するかで値が大きく変わる。これに関しては悲観的なアナリストと楽観的なアナリストに分かれている。その分かれ目となるのは基本的に現状わかっている技術の展開をどのように見込むかにある。しかし本質的にはどちらのアナリストも一番肝心な点を見落としている。ほとんど言及されることがない重要な事実だが、今こそ爆売れしているH100が発売前、顧客から「高いから要らない」と言われていた。H100が発売してからLLMがそれで成功し、その結果需要が爆発した。
エヌビディアがたまたまH100でひとヤマを当てたわけではない。昔から顧客から要らないと言われてもその可能性を信じて作り続けて今日に至っている。B100でも同じことが起きる可能性は充分ある。
B100で計算量が3倍に増える。一般的に言ってそうなったときにどんなインパクトが起きるかは予想が極めて難しい。この点、世界で最も思慮深い人間が予想不可能であることをきちんと理解できるだけ、その一人はエヌビディアのCEO。当然、B100が不発に終わる可能性もゼロではない。ただ今回はスケーリング則によってポジティブサプライズはかなり高い確率で起きることが示唆されている。
現在ChatGPT4oの音声機能が話題になったり、アップルAIが注目されたり、Claudeの最高スコアのモデルが出たりしているが、これらはすべて線形的な成長にすぎず、予想可能な範囲内の話。B100によって全てが一掃されるほどのものが近いうち出てくるだろう。
関連記事:
2024年4月 今からの未曾有のバブルが起きるかーーイノベーションの歴史からAI時代を展望する https://note.com/epicurus/n/n6e5eaf2d7767
Nvidia相場はどこまで続くかーーポイントはスケーリング則だ(投資の観点で整理するGPU需給) https://note.com/epicurus/n/nc6b441bafbed
2023年暮れ イノベーションとバブル、生成AIバブルについて https://note.com/epicurus/n/na68582bcef34
方針
今の局面は向こう数年でみれば数少ない買い場だろう。インフレ問題、大統領選、夏にかけて調整・足踏みする可能性が高いだろうが、それは買い増しの機会として考えたい
戦略1:積立買い
戦略2:上抜け
をうまく組み合わせたい。
テーマと見通し
見通し、次の順で業績に現れ、株価が動く可能性が高い
エヌビディアなどAI半導体 → AWSなどクラウド提供業者 → AIを使って稼ぐ企業
現状
エヌビディアなどのAI半導体が絶好調だが、もうすぐ3大クラウドが一段と大きく伸ばすはず、AIを使って事業する会社は軒並み苦しい中、Adobeなど、成果が見え始めている会社出てきている
当面は先行投資フェーズ、AI本体よりもAIのハコ
応用上クリティカルな問題の多くはまだハードウェアの進化によって解決されることが多い
関連テーマ:
(そのうち書きたい)「AI事業はワープ付きマラソン」
市場
ネガティブ要因
インフレ長期化
個人消費冷え込み
原油リスク
前回放出して助かった戦略備蓄原油がもうない
原油在庫が低水準
何らかの理由でシェールオイル生産増が遅れると一気に高騰する可能性も
不動産リスク
高金利によるストレス
展望・予想
夏には一度調整して、秋の決算サプライズで本格的に上昇すると見ている
AI半導体銘柄への買いは短期勢によるものがほとんど。AIの将来性を理解して保有しているわけではなく、何かがあると一目散に逃げる。インフレ懸念、利確売り、さらに設備投資の一時的な遅れなどでここからは調整と短期勢の振り落としが起きても不思議ではない。
Nvidia B100はさっそく供給不足、数カ月後にはもう一段と業績が伸びているかもしれないが、しかしそれまでは材料乏しく、勢いだけの買いが持つとは考えにくい
本格的な上昇相場は先行者の成功に他社が追随することから起きるだろう
最も本格的に動いているのは最先端をいくメタとテスラ。つまりアーリーアダプタかイノベーター。これが今後どのようにアーリーマジョリティに広がるかが重要
グーグルやピンタレスト、AdobeなどAIによる業績押し上げがちらほら見え始めている。
もっと強いインパクトがどこかで出てくるだろう
例えば、メタの新しいキラー機能、自動運転、AIスマホなど
中長期的にはAIが経済を押し上げるだろう。ポイントは二つ
米国大企業が潤沢なキャッシュを使った怒涛のAI投資
それがネガティブに受け取られて一時的に下がることもあるが、すぐに戻すだろう。例えば少し前のメタ、最近のマイクロン
AIによる生産性と利益の向上 → すでに見え始めているが注目まではされていない
業績改善が何期か続けば効きそう
気になること
米国不動産
米国中小事業者環境悪化
関連テーマ:
(そのうち整理したい)「95年に何が起きたか」
インフレと利下げ見通し
今の状況と95年を比較する意見が多い。あの時と違う点も多いが、本質は一つ、それはインターネットによる生産性向上とAIによる生産性向上(このことは感覚的に容易にわかる話だけれど、経済学的にしっかり「証明」することは簡単ではない。証明できた頃には相場が終わってしまっているので、投資判断をする上ではいったん「証明」技術の問題に過ぎないとしておくのがいいだろう)
このような生産性向上の初期では企業の設備投資によってインフレが押し上げられるものの、それが生産性向上につながるためそこまでは加熱せず、そのため
ほどほどのインフレ
高めの金利
高い成長
という通常では起きえない「虫のいい」ことが起きる。
今のところ市場はこのことを織り込んでいないので、雇用統計・物価統計・長期金利の動きに一喜一憂している。逆に言えば、それはチャンスでもある。
AIの状況
アップルAI → AIスマホのイメージが明確になる
Claude、ChatGPT4超えのモデルを発表
スケーリング則による性能飛躍は次世帯GPUを待つことになるか。それまではエッジAIやコツコツとしたモデルの改善による話題が注目されているが、まだモデルの大きさの暴力が生きているので、次のスケールの大規模モデルが話題を全部さらっていくだろう。
ニュース・出来事、いろいろ
イーロンマスク報酬承認
Optimusが進むだろう。テスラの長期目標株価2000ドル→8000ドルへ
Adobe、AIが業績を押し上げ始め、株価反発
アップルAI、AIスマホのイメージが具体的に
イリヤ、新会社立ち上げ
カリフォルニア、OSSのAIモデルで被害が出た場合、モデル公開者が罰せられる
このような法案を通す民主党、さすがに度が過ぎる
基本ポートフォリオ
注:推奨というわけではない
イーサリアム
長期的な上げ要因:ETF承認。FIT21で法整備が進む
普及まで最大の障害だったものが解決された
エネルギーとガバナンス問題:The Merge
ガス代問題:zk-rollupで解決
法的問題:ETF承認、FIT21
それでも規制は依然として不十分、ハッキングや詐欺、ブロックチェーンが犯罪の温床になっている状況がすぐに変わらないだろう。四年周期の暴騰後にまた暴落が起きる可能性が高い。
長期的にはWeb3とDAOがAIと結びついて資本主義のバージョンアップにおいて重要な役割を担うことで躍進すると期待
NASDAQ
目先は高めのバリュエーションに対する警戒感で足踏みすることもあるだろうが、長期的にはAIの進化から最も恩恵を受ける銘柄がひしめく。向こう3〜5年にかけて力強く上昇するだろう
AI恩恵銘柄がバランスよく入っているので、長期にわたって比較的に安定して強い
エヌビディアなどの半導体銘柄
クラウド事業者
AI活用するサービスの提供者
Nvidia
H200やB100など、AIの進化にとって最も重要である計算コストの低減に一番積極的に取り組んでいる。スケーリング則を考えれば需要は非常に強いが、一時的に足踏みする可能性もある。
AIの未来とスケーリング則のインパクトやそれによる需要を充分に理解していない短期投資家が多い。また、アナリストと機関投資家もこの点を把握していない可能性が高く、リードタイム短縮や在庫増のリスクによって一時的に調整する可能性がある。
逆に言えば、B100でサプライズが出て一段高を目指す可能性も高い。向こう3ヶ月〜半年くらい調整して振り落としの場面が来れば買いのチャンス。
Tesla
6/13の株主総会無事通過、個人株主による圧倒的支持
当面は自動運転、長期的にはOptimus、そしてサプライズとしてメガパックと強烈な成長ポイントが並ぶ
ただ時間軸は難しい
テスラの自動運転は世界最大のAIプロジェクトだと言われているが、言い過ぎともいいきれないところ。テスラの自動運転のレベルは飛躍中、現在99%くらいの部分は人間を超えていると言って良さそうだが、残り1%のミスも許されないのは自動運転なので、びっくりするようなスピードで進化し続けているけれど、果たして実用の壁を超えられるかどうか、ここが正念場。今年夏にロボタクシーの発表が注目。株価が動くのは利益に反映される前くらいになりそうなので、来年後半になる可能性が高い。その前に次の決算で引き続きAIに対する大規模投資でキャッシュフローのマイナスが続くだろう。そこで大きく下落すれば買いのチャンスになるだろう。
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