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2024年8月末 投資メモ 上昇への準備期間

今月のポイント

  • 今は次のステージへの準備期間(買い場)、それが秋まで続く見通し

  • AIの成長が続くも市場が懐疑的

    • その懐疑は正しくはないが、ある意味健全。相場は懐疑の中で育つ。懐疑がある分だけ、サプライズが起きた時の上振れが大きくなる。そういう意味でAI相場は今が育ち盛りだと言える

今月のトピック、AIの成長が減速している?

相場の調整に伴い、AIの成長減速懸念も取り沙汰されているので、それについて二つのポイントを整理したい

  1. モデルの開発スケジュールの都合で起きた錯覚

  2. 注目されにくいが非常に重要な進歩

一つ目、今回のAIブームが始まったのははスケーリング則による進化。パラメーターと学習データを指数的に増やすと、モデルの精度が向上するだけでなく予想外の能力も獲得(創発)してしまう。それがこれまでGPT2→GPT3(ChatGPT3)→ChatGPT4の順でモデルが大きくなって来たが、1階層あげるごとに10倍程度必要な計算資源が増えていくので、乱暴に言えばコストが10倍かかるようになる(実際はコスト削減の努力があってそこまではかからない)ので、そう簡単に次のスケールのモデルは作れない。GPT3からChatGPT4までスケールを一つ上げるのに2年はかかったが、問題はChatGPT3はGPT3が出てからしばらくして開発・発表された。それがちょうど世間が注目を始めた時期、そのために半年後にChatGPT4が出たときにはこのまま半年でスケールアップが起きるのかという錯覚が起きた。

実際はChatGPT4からほぼ2年が経ったのに、ChatGPT5がまだ出ておらず、その間様々な決して小さいとは言えない機能追加はあったものの、モデルには本質的な新しい能力の創発が見えていない。その点に注目すると成長が停滞していると感じるでしょう。しかしスケールの成長はあくまでも不連続的に起きるもので、徐々に見える話ではない。もし起きるとすればどこかの時点で突然発表されるはず。スケジュール的には今がちょうど次のものがそろそろ出てくるかなという頃になる。

二つ目。スケールアップせず、基礎的な能力が同じであってもそれ以外で重要な進歩がいくつもある。そのうち非常に近い将来に強烈な経済インパクトをもたらす可能性の高いものは:コンテキスト長の伸び(30倍以上になった)、ランニングコストの劇的低下(30分の1以下になった)、一度作った大きなモデルを小さなモデルへ凝縮させる方法(安価なPCでもそれなりのものを動かせるようになった)、あたりだと考えている。

実際にOpenAIのAPIが30倍以上安くなったのも最近のことである。人類の歴史上、何かの重要な財やサービスがこれほど短期間に30分の1になったことがあっただろうか。その事実は地味だが、影響の大きさを無視すべきではない。最近になってAIが論文を書ける、難しい数学の問題が解けるようになった研究も出てきているが、基本的な能力が伸びていないが、組み合わせ方を工夫すれば新しい力を発揮する例だと言える。それらの研究はコンテキスト長の伸びとコストの低下があって初めて起きることと言っていいだろう。大きなモデルを小さなモデルに凝縮する方法が進めば、今後このような進化がさらに加速するだろう。

特に近いうちに飛躍を遂げそうなのはエージェントAIとエッジAI。

全体像

  • 今後5年〜10年の展開

    • ブーム(前菜)→低迷(休止)→本番(メインディッシュ)

    • 次のように対応

      • 前菜:95〜2000年のドットコムバブル期

        • ポイント:個別株が辛い、かつてはバフェットさえも苦しんだ五年間。大型銘柄が牽引

      • 休止:2000〜2002年のドットコム冬の時代

      • メインディッシュ:2002年〜インターネット全盛期

        • ポイント:個別株黄金期

現在はブーム(前菜)の序盤

ポイント

  • 大相場で一番大事なのはいつ何を買うかではなく、乗っておいて降りないこと

  • 上手に乗り換えられれば利益は増幅される余地がある

    • 「インフラ → クラウドなどの中間サービス → 製品・サービス」の順で来る見通し

      • 半導体銘柄の全盛期は序盤(今)

      • AI本命銘柄やAIによって躍進する銘柄は中盤から終盤

      • Nasdaqは全期間を通して強い

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方針

今の局面は向こう十年単位でみれば数少ない買い場になるだろう。インフレ問題、大統領選、そして予想通り夏の調整が訪れたが、AI相場の基本に変化はなく買い増しの機会と考えている

  • 戦略1:積立買い

  • 戦略2:上抜け

をうまく組み合わせたい。

テーマと見通し

  • 次の順で業績に現れ、株価が動く可能性が高い

    • エヌビディアなどAI半導体 → AWSなどクラウド提供業者 → AIを使って稼ぐ企業

  • 現状

    • エヌビディアなどのAI半導体が絶好調、グーグルとマイクロソフトの決算にクラウドも成長加速が見えた。AIを使って事業する会社は先行投資で苦しいが、Adobeやウォルマートなど、成果が見え始めている会社がすこしずつ出てきている

  • 当面は先行投資フェーズ、AI本体よりもAIのハコ

    • 応用上クリティカルな問題の多くはまだハードウェアの進化によって解決されることが多い

関連テーマ:
(そのうち書きたい)「AI事業はワープ付きマラソン」

市場

展望・予想

  • 夏の調整は続きそう。秋後半には本格的に上昇する見通し

    • Adobeやウォルマートに続き、AI活用による業績効果が決算に現れ、サプライズが起きるだろう

    • 利下げが始まる

      • 過去の高金利環境にも関わらず直近2Qはビッグテックを除いた企業利益成長が加速している。

    • AIスマホ・ロボタクシーの発表

    • 大統領選によるアノマリー:序盤は候補者による有権者の機嫌取りのための非現実的な政策発言でマーケットが不安になり下落、選挙終盤になると現実的なものに引き戻すのでマーケットが落ち着き、上昇する傾向

    • 新しいAIモデル

      • StrawberryかChatGPT5か

  • これまでのAI半導体銘柄への買いは短期勢によるものが多く、彼らはAIの将来性を理解して保有しているわけではなく、調整局面になるとAI相場の終焉だAIバブルだと言って逃げ出しているところ

    • 相場の一段の上昇は日見より勢が抜けたあとから始まることが多い

  • 本格的な相場は先行者の成功に他社が追随することから起きるだろう

    • 最も本格的に動いているのは最先端をいくメタとテスラ。つまりアーリーアダプタかイノベーター。これが今後どのようにアーリーマジョリティに広がるかが重要

      • 今はウォルマートまで広がっている。ウォルマートはインターネットが出た時もいち早く取り入れて利益率を飛躍させ、一気に大企業へと成長した歴史がある。技術に対して先行者になる企業文化があるだろう。

    • AIで本格的に稼ぐようになるのはまだ先、しかし業績効果がすでに見えている。第一段階、つまり前菜の段階ではそれが相場を押し上げる原動力になるだろう

      • GAFAMの利益率が劇的上昇

      • Adobeやピンタレストの業績成長

      • ウォルマートの好業績

        • ウォルマートはインターネット初期でも他社を先んじて活用を進め一気に巨大企業へと成長した。アーリーアダプターかイノベーターの遺伝子がある企業か。

    • イノベーション普及の一般的な現象として、初期の恩恵はどうしても大企業のうちの、一部の積極的で熱心なところに集中してしまう

      • 理由

        • イノベーションの初期はまだ技術への理解と経験がすくなく、本来の使い方がわからない。だから画期的なサービスよりもコストダウンと効率アップを先に行う方が賢くて効果的。それに関してはチャンスは大企業に多い。

        • イノベーション初期で技術が未熟で高価であるため、技術導入コストが高い。

    • 時間が経つにつれて技術導入コストが下がり、革新的なサービスや使い方が出てくるので、そこで中小型株に恩恵が広がる。大企業に比べ成長率ではより大きなものが期待できるため、本来ここが一番楽しい時期、つまりメインディッシュ。しかしそこへ行くには一度大きな試練が待っているだろう。

  • 高金利による消費の冷え込みと雇用悪化のマイナス面を、AI投資による押し上げが相殺するだろう。ポイントは二つ

    • 米国大企業が潤沢なキャッシュを使った怒涛のAI投資

      • GAFAMがAIで利益率を上げ、それがまた先行投資の余裕を生み出し、その投資の波及効果が大きいだろう

      • ここ半年でAIへの先行投資がネガティブに受け取られてきたが、最近は市場も慣れてきた模様

      • 参考として、95〜2000年のドットコム相場では大手の投資はキャッシュフローの1.3倍で、つまり借り入れをしてまで投資をしていた。それに対して今はまだ0.7倍程度で、利益の範囲内の投資になるため、さらに増やす余地はある。

関連テーマ:
(そのうち整理したい)「95年に何が起きたか」

インフレと利下げについて

歴史的にみて利上げサイクルで結果的に金融危機が起きやすい、しかし実際に金融危機が起きるのは利上げの時期よりも、大半は利下げ始めに起きるものだ。利下げは景気減速や雇用の悪化など経済に問題がみえて始めてから行われることが多いので、今回も失業率の上昇が懸念されている。

利下げ局面で相場が暴落しやすい、という経験則には例外もある。それは95年、利下げ後、Nasdaqが5年程度で10倍になった。

今の状況と95年を比較する意見が多い。似ている点も多いが、違う点も指摘されている(特に95年は失業率が高くなかった)。私は本質的なことが一つだけだと考えている。それはインターネットによる生産性向上とAIによる生産性向上、それらに伴う富の創出。

95年ではFRB長官が統計データをみて目を疑った。そこでわざわざ統計部分を呼びつけて詰問したエピソードもある。今からは30年に1度の、これまでの経験や常識が単純には当てはまらない期間に突入する可能性が高い。

このような時代では初期において企業の設備投資によってインフレが押し上げられるものの、それが生産性向上につながるため、インフレはそこまで加熱せず、そのために

  • ほどほどのインフレ

  • 高めの金利

  • 高い成長

という通常では起きえない「虫のいい」ことが起きる。

今のところ市場はこのことを織り込んでいないので、雇用統計・物価統計・長期金利の動きに一喜一憂している。逆に言えば、それはチャンスでもある。

基本ポートフォリオ

注:推奨というわけではない

  • イーサリアム

    • 長期的な上げ要因:ETF承認。FIT21で法整備が進む

    • 普及まで最大の障害だったものが解決された

      • エネルギーとガバナンス問題:The Merge

      • ガス代問題:zk-rollupで解決

      • 法的問題:ETF承認、FIT21

    • それでも規制は依然として不十分、ハッキングや詐欺、ブロックチェーンが犯罪の温床になっている状況がすぐに変わらないだろう。四年周期の暴騰後にまた暴落が起きる可能性が高い。

    • 長期的にはWeb3とDAOがAIと結びついて資本主義のバージョンアップにおいて重要な役割を担うことで躍進すると期待

  • NASDAQ

    • 足元は高めのバリュエーションやAIの有用性への疑問から反落中

    • 長期的にはAIの進化から最も恩恵を受ける銘柄がひしめく。向こう3〜5年にかけて力強く上昇するだろう

    • AI恩恵銘柄がバランスよく入っているので、長期にわたって比較的に安定して強い

      • エヌビディアなどの半導体銘柄

      • クラウド事業者

      • AI活用するサービスの提供者

  • Nvidia

    • H100やB200など、AIの進化にとって最も重要である計算コストの低減に一番積極的に取り組んでいる

    • スケーリング則から考えてモデル更新に伴う需要は非常に強い

    • ただAIの未来とスケーリング則のインパクトやそれによる需要を充分に理解していない短期投資家が多い。また、アナリストと機関投資家もこの点を把握していない可能性が高く、一時的な調整が何度も起きるだろう。

      • 逆に言えば、B100でサプライズが出て一段高を目指す可能性も高い。目先の振り落とし場面が仕込むチャンス。

  • Tesla

    • 最悪期は脱したが本格上昇はまだ先になる見通し

      • 6/13株主総会無事通過

      • EV車売上が底をうって上向き

      • 自動運転が順調に性能を上げている

      • 来年末には上昇してそう

    • サプライズとして本業だったEV並みの利益を出し始めたメガパック、自動運転、そしてOptimusと強烈な成長ポイントが並ぶ

      • ただ時間軸は難しい

    • FSD12.5の性能が驚異的。これまで更新がある度にテストを行って問題点を整理してきた専門家や自動運転の元開発者たちはロボタクシーが思ったより時間かかると比較的悲観的に見ていたが、ここに来て考えを変えている。来年中、早ければ今年にも試運転が始まるだろう


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