「日本一小さな酒蔵」より小さい酒蔵の酒
ネットなどで、「日本一小さな酒蔵」で検索すれば、まずは「射美」で有名な岐阜県の杉原酒造さんがヒットするだろう。
そもそも、「日本一小さい」というのは、何が小さいのだろうか?年間生産石高(製造量)?、資本金?設備規模?敷地面積?ちなみに、杉原酒造さんの生産石高は60石〜80石ぐらいという話は聞いたことがあって、同社サイトには100石以下って書いてある。一升瓶で一万本以下ってことだ。
100石未満だったら他にもあるんじゃないだろうか?ウチの近くの酒蔵も年間100石も造っていないんじゃないかなあ?なんて、昔から思っていた。
そしてこの「神池(みいけ)」という銘柄を醸す、兵庫県は丹波篠山の鴨庄酒造さんの年間生産石高は20石らしい。杉原酒造さんの4分の一程度。ええっ〜!20石でやっていけるの?と思うけど、蔵元杜氏の方一人でやっているらしい。。
鴨庄酒造さんの代表銘柄は「花鳥末廣」らしいけど、こちらの「神池」のシリーズは、今の蔵元が新しくチャレンジとして造りはじめたシリーズ。兵庫県の比較的新しい酒米である「Hyogo Sake 85」を使用している。
日本酒の代表酒米である山田錦の一大産地である兵庫県が、何故こんなローマ字表記の酒米を開発したかと言えば、海外向けの目指したというのがその理由らしい。
この酒米の特徴は、「あまり削らなくても華やかな香りになりやすい」ということらしいが、それは酵母との組み合わせにもよるのだろう。
この「神池純米吟醸」、上立ち香も、含み香も、有る方ではない。弱いながらも吟醸っぽい感じはするが、そこまでフルーティーでも甘旨でもなく、どちらかと言えば硬い印象。最初、舌先に甘味は感じるが、それが渋みや苦味のの硬い感じでスッと打ち消される。その後、麹の香りっぽいクラシックな酒の印象。
純米も試飲したが、酸が少し立って、雑味が前に出る。それを旨味が覆ってくれれば良いのだけど、そこは固く閉じている感じであり、酸味と雑味が目立つ単調な味になってしまう。ので、要熟成ではなかろうか。
純米吟醸は、純米よりスッキリとした仕上げなので、バランスが良い方向に転び、酒が持つ味の輪郭がはっきりとする。純米吟醸の方が好み。ともかく、全体には固くてさっぱりとしたイメージ。これは酒米の特徴かも。
このお酒、酒蔵で買うか、地元の地場産ショップのようなところで買うか、卸している酒屋は兵庫県でも一軒しかなく、生産量も少ないため、ある意味超レア酒ではある。まあ認知度は低いだろうけど。。
酒米の使い方も含め、発展途上にあるお酒だと思うが、丹波と言えば丹波杜氏。酒造りの技術はピカイチだと思うので、小さいながらも頑張っていただきたいと思う。
話は戻って、「日本一小さい酒蔵」とは?実はこの鴨庄酒造さんよりも、さらに生産量が少ない、マイクロブリュワリーみたいな酒蔵もある。でも、いずれも昔は桶売りなども含め、大量生産もやっていたようだ。鴨庄酒造さんも少し前までは、大量生産設備を無理して使って少量生産していたと聞く、その意味では「日本一小さい」とは言えないのかも知れないね。
大きくても小さくても、美味しい酒が造れるのであれば、飲み手としてはそれで良いけどね。
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