残響を楽しむ酒
「隠れた名酒」このお酒はそんな部類に属するのではないだろうか。
日本酒評価サイトなどでは評判が高い、特に地元山口県では人気があると聞く。ただ、流通は少ない。地元での流通はあるのかもしれないが、首都圏、関西圏などでこのお酒を見かけることはほぼ無いだろう。
山口県は岩国の堀江酒場が造る「金雀」という銘柄。レア酒と言われていても取り扱いの酒屋は存在するし、購入できないとしても、呑み屋さんなどで呑むことはできる。これが日本酒の良いところだ。日本で造られているんだから、よほどで無い限り呑むことはできる。
上立ち香はほのかにある、フルーティー。一口含むとフルーツ系の甘さがボン!っと広がり、酸がゆっくりと追いかけてくる。面白いのは、米由来の香ばしさや苦味、酸味、エグ味などが独立した構成要素として、一体となっていたものがバラバラと解けてゆくように現れること。これはちょっと独特の感じだ。甘旨フレッシュフルーティーな流行りの味ではあるが、様々な要素が乱立し、複合的な風味を感じる。
口に含んで呑み込むまで、さらに呑み込んだ後の余韻の部分に厚みがあり、複雑な変化がある。「余韻の長さを楽しむ」のではなく、「残響を感じて味わう」という感じだろうか。。
さらに熟成を重ねれば、味の一体感が出て新たな世界も開ける感じもある。もちろんこのままでも、美味しいお酒なので。昨今の日本酒党の受けも良いだろう。
食に合わせるには、この残響が邪魔をするかも知れない。難しくも面白い酒だ。
筆者 facebook 2023年5月 投稿より抜粋