古き器に注ぐ新しい酒
石川県は白山市にある「吉田酒造」さんが造る、「吉田蔵」というシリーズ銘柄のお酒。我々のとっては、「手取川」という銘柄の酒蔵といった方が解りやすいだろうか。
その中でも「吉田蔵u」は比較的新しいラインナップで、地産地消、自然志向的な方向性のものだそうだ。
地元の酒米を使う。ワインで言うところの「テロワール」的な考えもあるだろうが、先細りする米農家の保護支援、そして自社の未来の酒造りを見据えた良質な酒米の確保といった切実な意味の方が大きいのだろう。
山廃造りの低アルコール13%。清酒を絞った後に、酒粕を加えて瓶内二次発酵を進めるという製法で、発泡性がある。
抜栓した瞬間、ぱっと放たれる「酒臭い!」という香りは、すぐにたち消え、穏やかな香りに変わる。柑橘系の少し苦味がある風味、味はしっかりと芯があり、甘さや酸も感じるが、全体的にドライな印象。13%ながら、薄い感じはなく、むしろアルコールのボリュームも感じる。抜け、キレは良く、アルコール感は後を引かない。酒粕が濃くなる底の部分は、麹由来の風味が増して、重く感じる。発泡は軽め、泡は荒め。
モダンな造りの味、ドライな発泡タイプで、味の芯がしっかりとしている。食前酒や、カルパッチョやブルスケッタ、軽めのピッツアなどのイタリアンに合わせると良さそう。。
なんだけど、どことなく感じる昔ながらの「The 酒」の骨格、低アルコールなのに、全体を支配するクラシックな酒っぽいアルコール感。古く、酒臭い日本酒の器の中に、フレッシュ柑橘系スパークリングを注いだようなイメージ。
ラベルも味もモダンな酒だが、その*先に*あるのは、古くて重たい昔ながらの日本酒を感じる。ちょっと不思議なお酒。