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【小説】ラブコメ

「本っ当、男ってクズしかいないのかなぁ?
今回もそうだったし。なんだったのあの男。」

「まあまあ、今まで付き合ってきたのが
たまたまそういうのだけだっただけだよ。
次に期待しよ?ね?」

この店は有名雑誌の口コミやSNSでも話題の
大人気飲食店だ。

現在はお昼時、1日の中で1番の繁忙期。
そんな中厨房では両者の言い争いが勃発する。

「大体向こうからこっちに
転がりこんできた癖にさ。なんなの本当。

「僕に付いて来なよ」みたいな感じで来るからさ、
惚れるに決まってるじゃんそんなの。」

「でも大したのじゃなかったんでしょ?」

「そう!最初はそんな感じで芯が強い奴だなって
思ってたの。ようやく運命の…!って感じ。

でも結局ダメ。
時間が経つにつれてなよなよしてきてさ。

実家離れたら
段々最初のその強さがなくなっていく感じ。
もうこっちからついて行くのなんてやめたわ。」

「やっぱりさぁ、そういうマジメなのじゃなく
取っかえ引っ変え色んなのと遊んでみたら?」

「そういうのは嫌いだって
何回も言ってるでしょ!!
あたしは刺激的な恋を求めているのよ!」

「1回やってみればいいのにー。
この間遊んだ塩顔の子も凄く良かったなぁ〜」

「え、アンタまた別なのと付き合ってたの!?
この間言ってたしょうゆ顔イケメンの子は
どうしたのよ!?」

「んー、なんかまぁ悪くはなかったんだけど、
飽きたから今度はもっとSっ気のある子も
いいかなぁって。

その子ずっと前からなんかの神5?みたいなの?
に選ばれてたみたいで〜」

「前の男もそんなこと言ってなかった…?
大体、なんかのって何よ。」

「いいじゃないそんなの。
飽きたらまた別な子に変えればいいんだし。
なんかソース顔ってのも最近はやってるのよね。」

「あんたねぇ…」

話題が盛り上がってきた所で
両者は持ち場へと移動させられる。

そこには、実は密かに両者が狙っていた者が
待っていた。

「やぁ、今日も会ったね。よろしく。」

何者をも拒まないような、
それでいてどうだっていいような
適当な存在じゃない、唯一無二の姿に。

2人は、淡い恋心を抱いていた。

「あの…きょ、今日もよろしくお願いします。」

「よ、よろしくね〜!」

「うん、よろしく。」

「(…何だかんだアンタもやっぱり
この子には本気なんじゃないの?)」

「(うん…でも私今日肌焼いて来てるから、
正直自信ないかも…。ねぇ、今日も
2人で協力して話さない…?)」

メリットなど一つもないこの提案に、
しかし引っ込み思案の彼女は

「(全く…今日だけよ!)」

何度繰り返したやりとりか、
だから進展はいつも起こらないのだ。

厨房の周りの仲間にも気付かれたことは無い、
両者のみの秘密だ。

ましてや、


「(やっぱり今日は目玉焼きトッピングして
よかったぁ…腹減ってたんだよなぁ…!)」

目の前がそんな状況となっていようが
ただカレーライスを食べに来た客など
知る由もない。

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