【小説】空飛ぶストレート
バキャリーンと割れるガラス。
驚いて庭を見ると2人のピース、1人は少し悔しげに。
「じゃあおれがここまでとばしてやるよ!」
無理だ、と思った。
虚太郎も私と同じく骨が脆い病だからここに居るんだ。
泥だらけのバットを持てているのも正直信じられない。
「いいよ。できたら私も頑張る。」
「よっしゃ!じゃあいくぞ口太!」
「せめて俺が投げなきゃなぁ。」
足早に3階分、病院内の庭へ降りていく2人。
そんなことしても無駄なのに。
おれの名前は虚じゃなく虎だったんだけど親父がとか
俺は強肩のピッチャーでとか。
2人は私を励まそうと毎日来てくれる。
正直嬉しかった。ここに同年代の子は少ない。
でも、感情論と治療とは無縁だ。
せめて私も一緒に行けたら、と庭を覗くと
雨の中何度も空振る虚太郎、松葉杖でも器用に口太。
何か話し合ってるけど、やっぱり無理だ。
カーテンを閉めよう。
(…そっか。)
床に破片と綺麗な球が1つ。
私は可笑しくなって、ピースを返した。
創作の原動力になります。 何か私の作品に心動かされるものがございましたら、宜しくお願いします。