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【小説】文芸部2人
栞が落ちた。
と言ってもどこかの記念品という訳でも
誰かから貰った大事なものという訳でも無い。
文庫本を買えば挟まっている短冊型のアレ。
12月はコンクリートの床は冷えるので
触りたくはないが、身を屈めると真紀さんが
「んっ、」と先に拾って渡してくれた。
「ありがとう」
入部して半年以上経っても彼女の表情は読めないし、
読めた所で僕は話は広められない。顔は綺麗なのに。
「あの、私ね、昨日、部屋の、百合の花が枯れたの。」
ぎょっとして思わず「えっ」と出た。
若しかするととんでもないことを聞かされたのか。
先輩たちはテスト期間なので、教室には2人。
「あっ、普通にねっ、その枯れただけなんだけど。」
「あ、だよね、うん。育てるの難しいよね。」
勿論難しいかなんか知らない。
彼女は露骨に文学少女という雰囲気を出しながら
偶にこんなスレスレなジョークを呟くので
その都度驚く。でも訂正は早い。
変にドキドキしていると鐘が鳴る。
さっさと気まずい空間から出よう。
「あのっ!」
「えっ、何!?」
「月が、綺麗でっ、すね。」
顔がやたら赤い。月はまだ出ていない。
しばらく待っても訂正はしなかった。
「…。」
恐る恐る伸ばした彼女の手は、僕に届いた。
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おはようございます、こんにちは、こんばんは。
又ははじめまして!えぴさんです。
普段は小説というとショートショートを
投稿していますが、今回は小牧さんの企画に沿って
掌編小説を書かせて頂きました。
楽しんで頂けたら幸いです!
また「別なのも読んでみたい!」と思って頂けたら
ぜひこちらから。
それではまたお会いしましょう、
以上えぴさんでした!
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