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それは、待ってはくれない。


<妊娠12週頃のきろく>

人生は、決して待ってはくれない。
ともだちの、恋人が、山にいってそのまま行方がわかっていないことを今日知った。


わたしの父方のおじいちゃんは、愛するおばあちゃんを残し、山に消えた。


わたしはそのとき小さくて、おじいちゃんが死んだことはまだあまりわからず、焼却場に行ったとき、そこが病院のような場所だとそう思ったことだけ、微かに覚えている。
 


生や死は、いつもだいたい忘れたころに ありありと何かをたたみかけるように 浮かび上がる
 
そしてわたしは、今回じぶんが新しい命を生み出そうという出来事のなかでいままで生きてきた中で最もこの身が「死」に近い状態に近づいたと感じたことがとても興味深い体験だった。
 
一度、意識と身体が完全に離れてしまったときがあり、それはそれは奇妙な時間。


頭ははっきり起きているのに、身体が痙攣して動かない、「疲れているだけだ」とするにはあまりに異様な今まで感じた事のない状態のそのとき
自分のからだに何がおこっているのかはわからなかったが、そのまま全身麻痺になってしまうのだろうか人が死ぬときはこういうときなのかもしれないと、恐怖と冷静さがふたつに重なっているようなそんな感覚がした。

指折り数えてみると、おそらくその日に、受精している。

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