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ほはばに見上げる空

2015年9月23日



名古屋にきた。

駅から歩くあいだに、わたしの横を抜かしていくひとが2、3人いて、

あれ?

とおもう。



ときは2012年。父ひろしが、ニューヨークに遊びに来たときのこと。

マンハッタンの街中で、いつも通り歩いていたわたしが、
父の歩く速度がもの尋常じゃないほど遅いことに気づいた。

ひとの波の中で、ビルを見上げたり、

景色を眺めたりする父は、

そのスピード感のある街の流れを邪魔しているように見えた。


そのだいぶあとになってから、

世界の中でもマンハッタンのニューヨーカーが歩く平均速度が
世界でもトップくらいに速いということを知った。


日本に帰国して間も無く、いつものニューヨークの歩幅で
大きくズンズン颯爽と歩く格好いい自分は、

多分誰より歩くスピードが速かったことに、あまり気づいてはいなかった。


そして今日。


キレイに身なりを整えたヒールの女性は、
わたしがノロノロぺたんこの靴で歩く横を抜けていった。

わたしはものすごくリラックスした、丈の長いスカートのついたTシャツのような服装で、
じっと空を見上げたり

木の種類について思ったりしていた。



 
それが、数週間前に歩くようになった一歳の息子がもたらした

「ほはば」

なのだときづく。


 
5メートル歩くのに、

よちよち、よちよち、

1分くらいかけて進む存在。


 
わたしはその横で、なにを、見て、

なにを、聞いて、

なにを感じていたんだろう。


 
彼のほはばを思い、

そして自分が立ち止まることを

知らないうちに学んでいることを思ったら、



その感覚が

とてつもなく甘く優しく

胸がきゅーんとふるえた。

 


小さなこどもは、クルマにのせたり自転車の後ろにのせたり

ベビーカーを押して歩くこともできるけど


いまこのときに

その

「ほはば」


余すことなく


味わおう

そう思った朝。




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松永 まい
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