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フランスに初めて渡って地上に足を踏み下ろしたときの感覚は、今でも忘れない。 その場所の空気に肌を触れさせた瞬間に出てきたフレーズは、 「ああ、水が合うってこれか」だった。 ほとんど、自分でも意味がわからなかったが、ただそう思った。
ごはんを作るシゴトをしている。 毎日、毎食、毎回真剣だ。 何十食も立て続けにフライパンを振っていると 次第にやっつけシゴトになってくる。 レストランで働いたことのあるひとはわかるとおもう。 日々当たり前に 山のように捨てられる残り物や食材達。 にんじんの端っこや 容器からあぶれたインゲンは まだ人の口へ行くのを楽しみに待っているのに 色んな理由から 次々とゴミ箱へ捨てられてゆく。 だから私は一日に 何十本ものにんじんやたまねぎを 腕に抱えてめちゃくちゃに愛を注
どこにでもある死ぬほどありきたりなハナシで申し訳ないんだけど ちっさい商店街の角っこにあるおかしやさんの そこでいつもお店に立ってる彼女が 気になって 最初にここに引っ越してきたときに 地元の店が立ち並ぶ並木路を探検してふらり入った角っこの店 薄っぺらいクッキーみたいのをあったかいうちにくるくる巻いてあるお菓子 お店の前で熱いなか次々に くるくる くるくる くるくる お菓子を巻いてくんだ ちょっと離れたところから くるくる くるくる くるくる 巻かれてくお菓子を
いつか、がいこくにすんでいたとき とても寂しくなると わたしはイケアに行った。 フランスで暮らした小さな古い、rue dupet のアパートには イケアのポエングが置いてあって わたしは窓際のその上に腰掛けて 毎日フランス語で「どうしたしまして」を 完璧なアッシュの音が発音できるまで 繰り返して喉を震わせた。 イケアは 世界のどこでもあった。 上海に引っ越して その街の激しい混沌としたエネルギーのなかで こころぼそくなったときに わたしを慰めるの