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Eat, Live and Love.

<マガジン味付>ジャンク☆☆☆☆☆ 甘さ☆☆☆☆ 外国で暮らしたときにみつめてきた風景や、瞑想に参加したときの記録・海外出産のときに目にした出来事などをストーリー仕立てでお届け…
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#ベジタリアン

台所で、命のはなしをしよう②

病室でほぼ力尽きながら、ひとつの大仕事を終えたばかりのわたしの代わりに、Joが方々に連絡をとっていた。 病院から宿泊施設に予約をとる際に、 食事のリクエストを聞かれた。 これはちょうど機内食と同じで 日本ではベジタリアンのオプションは一般的ではないが 欧米では食事のチョイスとして 通常か、菜食かくらいは必ず選択肢がある。 普通のとベジタリアンがあるけど、どうする?と聞かれ、 間髪入れずにベジタリアンをお願いした。 ◯ わたしが当初出産をする予定だった滞在先は

台所で、命のはなしをしよう①

その日外に出たときには、あたりはもう真っ暗だった。 わたしはほとんど機能しなくなった下半身を引きずり 車椅子に載せられて、車の寄せられた病院の暗く寒々しい出口にいた。 車の中には、産まれたばかりの新生児を載せられる 買ったばかりのぴかぴかの、爽やかな緑かかった空色の ベビーシートがつけられている。 Joに手を引かれ、わたしは総合病院から 宿泊施設へと移動するところであった。 日本とは違い、欧米の病院では産後 その日のうちに退院するのが一般的だ。 欧米人とアジア人の、

水の無い台所- June

思い思いの水無月は こっちでもあっちでも着実に過ぎて行って 水のない月の間わたしは混乱したまま 気づいたら時間だけが過ぎていた そんな夜 久しぶりにもう一度 色々な事を素直に楽しいと感じられて もう一度シンプルに、いこうとやっと思えて 食べる事も料理をすることも 苦しくてしょうがなかった数日を抜けて カリフラワーを食べたときに、 なんと、カリフラワーの味がした。 そのとき本当にほっとして にんじんが、甘いと感じられる そんなあたりまえの感覚を失っていたわ

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レモン味のキスと月夜のアーティチョーク

マンハッタンの島から出て一駅くらいの Queensboro Plazaの駅で、黄色から紫の線に乗り換えるために一度プラットホームに降りて、 そうしてもうじき次の日になるような深い時間でも、絶え間なく動いている人達の間で私はずっと月を探していた。 みえるのは、Citi bankのよく目立つ高いビルの光だけで、 あとはあまり何も見えなかったし、いつもは五月蝿い各国の声もあまり耳にはいらなかった。 長い一日が終わって、私はずっと彼のことばかり考えていて、雲隠れした月を見つけ

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