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逆日影の考え方と使い方

今回は「逆日影」について、マニュアル等に載っていない内容のお話です。

ユーザーの方から
「計画地の周辺建物を見ると、規制条件が同じなのに逆日影計算のメッシュを大きくオーバーしているように見える。
メッシュに建築物を納めないといけないのでは?」
ということをしばしば伺います。

結論を言うと、逆日影のメッシュに建築物に必ず納めないといけないわけではありません。
どういうことでしょうか。少し詳しくご説明します。


逆日影計算とは

基準法上の高さ制限の中で、法56条各号の斜線制限は天空率による緩和規定があります。
しかし、日影規制にはそのような緩和出来るものが無いので、必ず守らなければいけません。
当然、クリアするようボリューム検討することが必須になります。
そこで、そのクリアできるボリュームのおおまかなイメージを掴むための機能が「逆日影計算」です。

Case A:逆日影計算▶建物に変換▶等時間計算

下の例を見てください。

<Case_A:逆日影計算→建物に変換→等時間計算>

逆日影の結果から建物変換し、その建物に対して等時間計算をしました。
建物変換したブロックは、逆日影のメッシュに限界まで近づけたものなので余裕は無いですが、規制自体はクリア出来ています。
ご存じの方も多いかと思いますが、メッシュに建築物が完全に収まっていれば、必ず日影規制はクリアできます。

では、この建物ブロックにさらにボリュームを足すとどうなるでしょうか。

Case B:逆日影メッシュをオーバー▶等時間計算NG

<Case_B:逆日影メッシュをオーバー→等時間計算NG>

少しですが建物がメッシュを超えてしまったことで、等時間計算でNGになっています。
これを見ると、やはりメッシュ厳守ということ?
と思われるかもしれません。

では次の例ではどうでしょうか。

Case C:逆日影メッシュをオーバー▶等時間計算OK

<Case_C:逆日影メッシュをオーバー→等時間計算OK>

Case Bよりもむしろ大きくオーバーしているように見えますが、こちらは等時間をクリア出来ています。

これは、オーバーしている部分はあるものの、それ以外の部分はCase_Bよりもメッシュに対して余裕を持った計画にしているからです。 
つまり、メッシュを超える部分があっても、他の部分を少し削れば、合計の日影時間はクリア出来るということを意味します。
最終的に、等時間計算の日影時間が規制値に収まれば良いのです。

 また、「設計の初期段階でのおおまかなボリューム検討に使用する」
という特性から、初期設定としては建物後退は想定せず、敷地いっぱい(建蔽率100%)で仮定しています。
 (初期設定:「後退無」※今回もその設定です)
したがって、仮に建物配置が確定しているのであれば、「建物後退」で計算すると、もう少し具体的な検討も出来るかと思います。

「逆日影」の使い方

以上のように建築物が逆日影のメッシュから飛び出していても、必ずしも日影規制がNGになるということではありません。
むしろ、メッシュ厳守と考えてしまうと建物の形状、容積に不要な制約をかけることになりかねません。

敷地全体でのボリュームイメージを掴む、あるいは、建物後退「有」で計算して配置検討を行うなど、設計初期段階での便利な機能としてご利用ください。
そして、必ず等時間計算で確認しながら、検討を進めて頂ければと思います。

※逆日影には「低層」「高層」タイプがありますが、今回は低層タイプで計算しました。
このタイプの違いもお問い合わせ頂くことが多いので、今後ご説明する予定です。

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