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シリコンバレー銀行の破綻 猫にもわかる銀行と国債 2023/03/28 株日記

【この記事は】
アメリカのシリコンバレー銀行破綻。その理由をやっと(おぼろげに)理解できたので解説を試みます。間違ってたらごめん。

トレード結果

昨年のトレード手法に戻したところ、いきなり含み益が出て草ですよ。今月の45万円急降下はなんだったのか。

27日。シリコンバレー銀行の破綻、クレディスイスの経営危機で落ちまくった銀行セクターに対し、表計算は〝買い〟の指示を出しました。買った27日は含み損となったものの、28日はそれを解消。なぜもっと早く昨年の手法に戻しておかなかったのかと・・・・・・。

というわけで、反省の意味も込めてシリコンバレー銀行の破綻原因について調べてみました。丁寧に、ゆっくり、わかりやすさ重視で解説を試みます。詳細は間違ってるはずなので、細かい部分を調べる際は専門家をあたってください。


銀行について

まずは銀行の根本について確認。というか認識のすりあわせ。


Q・銀行はどうやって儲けるの?

広く預金を集め、集めたお金を企業や個人に貸して、その利息で儲けます。


Q・銀行は集めたカネを全部貸し出すの?

んなこたーない。全部貸し出したら金庫にお金がなくなります。客が預金を引き出したいとき、金庫にお金がなかったら困りますよね。ていうか訴えられるし暴動起きますわ。カネ返せって。

なので、貸し出せるお金は、集めたお金の一部です。


Q・銀行の金庫には大量の現ナマが埋まってるの?

現ナマはあるけど大量の預金引き出しは滅多にないから、国債を買ったり、投資したりして儲けてます。日本の場合、バブルの頃に不動産投資や企業買収、不動産会社への融資をやりすぎて爆損喰らったので、今は安全な国債を大量に買っています。


Q・銀行って潰れないの?

潰れます。金庫の中身が空っぽになれば潰れます。上で書いたとおり、集めたお金は誰かに貸したり、不動産や国債を買ったりしてるため、すぐに現金へ戻せません。

貸した金が返ってこないと金庫のお金はズンドコ減っていき、潰れます。

また、「ちょっと預金を下ろしたいんだけど」という希望が一気に来た場合も、金庫の中身はバカスカ減っていき、潰れます。

銀行潰すに刃物はいらぬ。声を合わせてカネおろせ。

なんて言われたり言われなかったり。


Q・実際に潰れた銀行は?

かつて北海道拓殖銀行(拓銀)という大きな銀行がありました。建設会社のカブトデコム社へ貸した4000億円を返してもらえず、金庫のお金が一気に減ります。

他にも回収できない貸出しが大量に見つかり、拓銀やべーぞとなりました。拓銀は日々必要なお金さえ用意できなくなり、潰れるとの噂が北海道内を駆け回ります。各支店では朝から預金を引き出そうとする人達が列を作り、わずか3日で5,000億円近く引き出されてしまいます。

1997年11月、拓銀はついに経営を断念。破綻しました。

もっとも有名なのが、拓銀行員「伝説のインタビュー」。ぜひ見て。

ロックだろう? ダイナマイト爆破ですよ。

ちなみにこの人、今も存命でツイッターを更新中。1万4,000人ものフォロワーを抱えております。


Q・日本、クソじゃん

ええ、クソでした。大グソでした。それがバブルの時代。

その反省から日本の銀行は金融庁の厳しい監視に置かれ、二度とバブルを起してはならないと慎重な経営をするようになりました。

ただ、慎重なだけならいいんだけど、慎重になりすぎて、健全な企業にまでお金を貸さなくなっちゃった。企業は工場を作れず、事業を拡大できず、日本の不景気はひたすら続いたんです。

銀行は、お金を日本中に回す心臓のようなもの。血液の流れが弱ると死んでしまうように、お金の流れが弱ると国の経済も死にます。


ひとまず、まとめ

・銀行は、広く集めた預金を貸し出して、利息で儲ける
・銀行は、国債や不動産などへ投資して儲ける
・銀行は、金庫の中身が空になると潰れる
・金庫の中身が空になる原因は、貸したお金が返ってこない場合と、一気に預金者が引き出そうとする場合

ここまで、大丈夫ですかね。分かりやすさ重視で書いたつもりですが、どうだろう。


国債について

国債ってなんじゃろ。金利ってなんじゃろ。

国債とは

国債とは、国が発行する債権のこと。

日本政府「吉田さんは日本政府に100万円貸してくれたので、10年後に5%の利息を付けて返します!これがその証明書です!」→証明書=債権(国債)

よくいう10年モノ国債とは、10年間持ち続ければ元本+利息をもらえる権利のことです。2年モノ、5年モノなど色々ある。建設国債なんかは30年とかじゃなかったかな。基本的に、長い国債の方が利息は高い。


国債の利息

例えば利息5%の10年モノ国債を100万円ぶん買ったら、10年後に100万円の元本が戻ってくるだけでなく、5%(5万円)の利息までもらえます。

国が保障するため、よっぽど政情不安な国じゃなきゃ安全。先進国の国債なら、民間企業の株を買うよりずっと安全です。


国債の売買

利息5%の10年モノ国債を買ったはいいけど、途中で生活が苦しくなり現金に換えたくなったらどうするか。国債は満期になる前でも売れます。もちろん買うこともできます。

Aさん「あと2年で100万円+5万円になる国債です! 誰か買って!」
Bさん「お、いいね。103万円なら買ってもいいよ」
Aさん「ぬ・・・」

あと2年我慢すれば105万円になるけど、今すぐ現金が欲しいAさんは、泣く泣く103万円で売りました。さ、3万円は儲かったからOK!と、無理矢理心を納得させました。

Aさんは8年で3万円(1年あたり3,700円くらい)の利益なので、旨味は小さいかな。

一方のBさんは、2年後に105万円となる国債を103万円で買えた。2年で2万円(1年あたり10,000円)の利益なので、Aさんよりおいしいね。

OK?


金利が上昇してるときに国債を手放すと大損する

国債の金利は、販売された年によって異なります。基本的に、日銀が決めた「政策金利」で上下します。

2020年に販売された国債・10年持てば利息5%
2023年に販売された国債・10年持てば利息20%

Aさんは2020年に100万円で国債を買いました。

ところが2023年に急遽お金が必要になり、国債を売却することにしました。

Aさん「100万円+5万円になる国債です! 103万円で買って!」
Bさん「いらない」
Aさん「は??」
Bさん「だって新しい国債を買えば100万円が120万円になる。10年で20万円の儲け。1年あたりなら2万円の儲けだよ
Bさん「あんたの国債は105万円にしかならない。それを103万円で買ったら7年で2万円の儲け。1年あたり2,900円しか儲からないじゃないか
Aさん「・・・」

Aさんの国債は満期まで持っても105万円の価値しかありません。仕方ないのでAさんは、Bさんが20万円儲けられるよう85万円で売ったのでした。大損。

つまり国債は、金利が上昇した時に手放すと大損ぶっこくんです。

満期まで持てば損しないけど、金利上昇局面での途中売却は損をする。

それが国債。


シリコンバレー銀行の悲劇

やっと本題のシリコンバレー銀行(以下、SVB)破綻。

この銀行は名前の通り、シリコンバレーを拠点とし、ベンチャー企業へ融資していました。特にスタートアップと呼ばれる、立ち上がったばかりの会社へお金を貸していた。ビジネスを見る目があったんでしょうね。テック企業ブームのここ10年は、さぞかし儲かったことでしょう。

ではここでもう一度問題。

Q・集めた預金20兆円のSVBと、200兆円の三井住友銀行。潰れやすいのはどっち?
A・SVB

Q・2人から20兆円集めたSVBと、1億人から200兆円集めた三井住友。一人が預金を下ろしたとき、潰れやすいのはどっち?
A・SVB

Q・スタートアップに貸していたSVBと、大企業に貸していた三井住友。潰れやすいのはどっち?
A・SVB

Q・預かった資産で国債ばかり買っていたSVBと、国債だけでなく株や不動産などリスクを分散して買っていた三井住友。金利上昇局面でダメージを受けるのはどっち?
A・SVB

つまりそういうことでして。

そもそもの経営規模が小さいため潰れやすく、少数の企業から大金を預かっていたため(さすがに2人ってことはないけど)その少数がお金を引き出しただけで倒産危機に陥りました。

米国債は簡単に売れるので問題ないはずだけど、運の悪いことに史上空前の金利上昇中だった。すなわち国債の価値が大暴落していた。売れば大赤字、売らなかったら金庫が空になる、地獄のような二択を迫られます。

そもそも現在のアメリカは、Googleやマイクロソフトなど、巨大IT企業の業績不振から分かるように、景気を引っ張ってきたシリコンバレーが成長の限界にぶち当たっています。

巨大IT企業・2022年10月-12月決算
利益は大きく減り、IT成長の限界が明確になった
画像引用・マネクリ

特に立ち上がったばかりで財務の脆弱なスタートアップは、手元の現金が不足する恐れから預金をすぐ下ろしがち。

なのにSVBの資産は長期保有前提の米国債。

この組合わせの悪さにより、SVBの金庫はあっという間に減ったのです。

SVBは持っていた国債を売って金庫に現金を補充しようとしますが、アメリカは史上空前の金利上昇。上述の例え話みたいに、100万円で買った国債が85万円でしか売れないなら、SVBそのものが赤字となってしまいます。

米国債の金利チャート
急速な金利上昇によりSVBが保有する国債の含み損は膨らんだ

「SVBは赤字になるぞ!」との噂は、スタートアップ創業者らのSNSにより瞬く間に広がり、わずか2日で5兆円もの預金が引き出され、SVBの金庫は空っぽとなり倒産しました。

2日で銀行倒産。

早いわ。いくらなんでも。

拓銀は不良債権発覚から倒産まで5年かかってるんだよ。いくらSNS時代とはいえ、2日て

アメリカの中央銀行が「とりあえず資金をSVBに貸す! 足りなくなったりしないからみんな落ち着いて! 一気に下ろさないで!」と叫んだって間に合いません。

本来ならSVB程度の銀行が潰れても問題ないはずなのに、2日で5兆円という速度と金額のダブルコンボが、世界の金融関係者を震撼させました。


リーマンショックのような展開になるのか

先日書いたとおり、クレディスイスの破綻はシリコンバレー銀行とは無関係です。金正日やオリガルヒ(プーチン側近の新興財閥)の口座まであったらしいからね。やりすぎたんだよ。

だからリーマンショックのような、同じ金融商品を世界中の金融機関が買ってしまい大爆発、なんて展開にはなりません。

しかし世界の金融機関は密接に関わり合ってる。巨大銀行は各国の〝心臓〟として企業へ血液を送り届けています。

世界中で「次はどこだ?」と、銀行の脆弱性探しみたいな展開となっており、神30の一角であるフランスのBNPパリバや、ドイツのドイツ銀行が狙われ、株価は大きく下落しました。どちらも1ヵ月で20%以上も落ちてます。

欧州の金融機関は日本のような普通銀行と違い、銀行や保険会社に証券会社を混ぜ合わせた〝ユニバーサルバンク〟です。部門をまたぐと何をやってるか分からない。透明性に欠ける。ゆえに破綻の種を発見しにくい。

リーマンショックは起こらずとも、別の形の金融ショックは十分可能性があるのではないでしょうか。

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