【1月6本目】殺人容疑 サルーンのオーナー 中村春根こと陳春根|裁判を傍聴してきた
追い続けている“サルーン”の件。
大阪高等裁判所で控訴審が開かれましたので傍聴してきました。千葉→東京→大阪→名古屋と、4都市を日帰りしており、しかもそれが全て緊急事態宣言の都府県というね・・・。
1月最後のコラムでは、この大阪高裁の控訴審について、裁判のあらましと法廷における被告の様子についてお伝えします。
なお、中村春根と表記するか陳春根と表記するかは悩みましたが、ずっと“中村春根”で調べ続けたため、書きやすい通名の方を使用します。
主文・本件控訴を棄却する
中村春根こと陳春根の容疑は、逮捕監禁、逮捕監禁致傷、生命身体加害略取、逮捕監禁致死、殺人など。
特に3件の殺人事件において、一審の無期懲役が覆され死刑となるか注目された。
「主文・本件控訴を棄却する」
裁判冒頭、裁判長の口から放たれたこの言葉により、サルーンオーナー中村春根こと陳春根の死刑はほぼ回避されることになった。
パチンコ業界内でもアンタッチャブルな話題とされているので、まずは事件のあらましやサルーンというホールについて以下の記事をご覧ください。
「本件控訴を棄却する」とは
なぜ控訴を棄却することが死刑回避となるのか。分かりにくいので解説します。
一審の裁判について、逮捕したのは警察。起訴したのは検察。起訴されたのは中村春根。
こういった構造です。今回傍聴したのは大阪高裁の判決であり、すなわち「控訴を棄却する」とは、両方の控訴を認めない、死刑でも無罪でもなく、一審の無期懲役判決を支持するという意味です。
最高裁判所へ上告できるのか?
日本は三審制なので、原告、被告とも最高裁へ上告できます。しかし、二審の高裁、三審の最高裁とも、審理をやり直すのではなく「一審判決が本当に正しいかを確かめる」ものでしかない。つまり書面審査なんです。
証拠の審理や証人を呼んでのあれこれは第一審で行います。「傍聴は地裁が面白い」といわれるのもこれが理由。
最高裁へ上告できるのは以下の二つのみ
今回の事件で大阪高裁は「中村春根が直接殺人に関わったのは一人のみであり、二人殺した実行犯とは量刑が異なる。過去の判例に照らし合わせても、死刑には到らない」と判断しており、憲法にも判例にも違反していない。おそらく検察も中村も上告しないと思われます。
仮に上告できた場合、最高裁の判決は二つだけ。
判決をひっくり返すような新証拠や新証言なんて簡単には出てきませんし、上告するかどうかは高裁の判決から14日以内に行わねばならないため、まあ、無期懲役で決まりでしょう。
一審・神戸地裁の裁判はなぜ注目を集めたか
パチンコ業界としては「あのサルーンの裁判」ですけど、世間的には裏モノだの何だのはどうでもよく、「史上最長の裁判員裁判」という一点で注目を集めていました。
地元で最も有名なワルが暴力団員を殺した。
そんな裁判で裁判員になる地元の人達はどんな気持ちだったか。私なら引き受けません。「死刑判決をしたら報復されるのでは??」「無罪としたら暴力団から狙われるのでは??」という恐れを抱くもの。
実際、拒否する人はとても多かったそうですよ。しかも200日以上に及んだわけで、数十回も行われる法廷の度に呼び出される。みんな生活や仕事もあるだろうに、過酷な制度だなと思いました。
苦しい中、裁判員は“無期懲役”という判断を下した。
被告の無罪主張を退けて無期という重い判決を導いたのですから、それを高裁が書面だけでひっくり返していいのかって話になる。だから今回の高裁判決は注目を集めたんです。
これは外に貼り出されていたものなので撮影しても平気。
「事件名」のおどろおどろしさヤバい。
傍聴席はなんと抽選
「裏スロ屋オーナーの裁判なんて聞く人いないだろ」くらいに思っていたんですけど、驚いた。27人の傍聴席に対して集まった人は54人。さすが高稼働店サルーンだね、朝の並びは凄いね。
抽選券は一人一つ、偽造も譲渡もできないよう腕に巻かれます。
正直なところ、私はこの手の抽選で通ったことがない。驚くべきクジ運の悪さです。当選者は番号を貼り出すという形式も、落ちまくった高校受験や大学受験を思い出して嫌だった。
40054・・・・・・40054・・・・・・
おっちゃん左手どかして! 紙の傾きなんて直さなくていいから左手どかして!
「パチンコの神様は必ず僕に味方する。今日の裁判を語れるのは僕だけだ。神様はその使命を僕に与えるはz あっっっっっったあああああ!!よっしゃあああああああ!!!」
40054!
番号ありました!
1/2抽選を当てました!
傍聴モード突入です!!
全力でガッツポーズした。直前まで会話していた裁判所の職員から「良かったですねw」って声をかけられました。恥ずかしいな!
これで入れなかったら往復の新幹線代が無駄になりますからね(汗)
傍聴人は個性派揃い
全国的にも注目を集めたため、開廷前にはテレビカメラが入り、傍聴席の最前列は10人以上の新聞記者が陣取りました。法廷画家までいましたよ。ナンバの飲み屋で安酒飲んでそうなオッサンもいた。
熱心にメモを取るオタク風の女性は裁判マニアでしょうか。学生風の団体は大学の法学部生かな。高裁の職員に聞いたところ、大阪府警や検察関係者も傍聴の抽選に訪れたそうです。注目度が凄い。
他には、真っ黒なサングラスに真っ黒なスーツを着た男や、明らかにカタギじゃない紫のスーツを来た男。屈強な体格に明るい茶のエナメル靴を履いた身長190くらいの男など、ちょっともうなにこれ抗争の現場かよ。
裁判所の入口では空港で行うような所持品チェックを受け、金属探知ゲートをくぐらされます。しかし今回の裁判はそれに加え、裁判長の命令として触診によるボディチェックまで行われました。
触手・・・。
リュックの奥に入れていたお茶や消毒スプレーまで回収保管されました。それほど厳重なのは、裁判所内での抗争や被告の殺害を警戒してのことなのでしょう。
本館201号法廷
写真撮影はできず、文字で伝えるしかないのがもどかしい。
厳か(おごそか)というのは、この雰囲気のためにある言葉かもしれない。正面の最も高い位置には3人の裁判官。弁護側、検察側、書記らが着席し、透明なアクリル板を挟んで傍聴席。コロナ対策で間隔を開けて着席すると、なんだか観劇でも始まるのではないかという気になります。
↑この写真の撮影位置では分かりにくいですけど、傍聴席から見ると裁判官はえらいこと高い位置に座っています。有無を言わさぬ圧力でした。
到着の遅れで5分ほど待たされ、その圧倒的な静寂と厳粛さに皮膚がヒリつきます。そしてついにその時は訪れました。
右側から4人の警察官に囲まれ入廷した中村春根こと陳春根は、
陳春根は・・・
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