3位じゃダメなんですか?
この記事は
小池はなぜ勝てたか
【現職は負けない】
小池百合子の圧勝でした。
小池百合子は王道の選挙戦でした。
そもそも都知事選、再選を狙う現職は落選したことないんです。初当選時こそ苦戦しても、2期目3期目は無類の強さとなる。
小池百合子は(是非は別として)東京五輪やコロナ対策など、とてつもない修羅場を乗り越えてきました。〝3密〟〝密です!〟は流行語にもなりましたね。
彼女の選挙戦略は「自民党から支持されてる臭いを消して実績をひたすらアピールすること」でした。
逆風吹き荒れる自民党とベッタリになってしまえば都民からソッポを向かれる。応援演説や決起集会などで、彼女は自民党議員の参加を認めませんでした。
これまでの都知事と違い、自前勢力の都民ファーストの会を持つ小池。自民党の協力を得ずとも勝てます。むしろ自民党は、都議補選で小池の協力を得ねば勝てない。彼女の指示に従うしかありませんでした。
現職の強み、2期8年の実績。職務を遂行しながら、王者の風格で堂々と振る舞う戦略は功を奏します。
【川上戦術】
さらに、小沢一郎直伝の川上戦術もはまりました。
川上戦術とは、選挙演説を人口の少ない田舎から始め、徐々に町へ出て行き、最終日は一番の都市部で演説を締めくくる手法のこと。田中角栄が提唱し、小沢一郎が継承。小池は新生党時代にこれを叩き込まれました。
これは理にかなっており、都会を優先すると田舎の住民は拗ねます。「はいはい都会優先都会優先」と呆れ、ソッポを向く。
田舎から演説をスタートすれば、「こんな田舎から!?我々の声を聞いてくれる!」と感謝します。
面白いもので、都会の人たちは田舎からスタートしても拗ねたりしません。
小池百合子の演説スタートは、なんと八丈島でした。次に多摩地区。まさしく川上戦術です。
結果、地域別の得票率を見ると、全体的に小池の圧勝ながら、島嶼部と多摩地区で無類の強さを見せたのでした。
蓮舫陣営・戦略の失敗
【そもそもの票数が足りてない】
ここからは蓮舫の敗因を探ります。まずは戦略面。
直近の国政選挙、2022年参院東京の得票数を見てみましょう。
<2022年・参院選東京選挙区の得票数>
蓮舫は4位。2位じゃダメなんですかどころではなく、3位ですらなく、4位です。元おニャン子の生稲に迫られる状況だった。
既存政党を中心とした組織戦を展開した場合、
基礎票の時点でもう負けてるのね。
国政選挙と都知事選は異なるとの意見もあるでしょうから、民進・社民・共産の野党連合が成立した2016年の結果を見てみましょう。
<2016年・都知事選の得票数>
小池百合子はなんとほぼ同数。
このとき、前岩手県知事の達増が立候補したことで自民党票は割れましたが、小池は無党派層から支持を集めて初当選を決めます。
今回は無党派層を石丸に奪われたものの、自民党票を固めた結果、似たような票数になったのですね。
一方、野党連合(民進・共産・社民)の候補は鳥越俊太郎。小池百合子とのニュースキャスター対決に挑みます。
文春・新潮にスキャンダルをすっぱ抜かれ、知名度抜群ながら票は伸びず、3位に沈みました。小池にはダブルスコアを付けられ、2位にすらなれなかったのです。
2016年の鳥越と、今回の蓮舫を比較してみます。
似てますよね。
菅直人を当選させ続けるだけあって、東京の左派(リベラル)は大きな勢力を持っています。しかし、130万票の壁があるのです。
野党が連合を組んでも130万票しか集まらない。小池を倒すには100万票近い上乗せが必要になります。鳥越俊太郎は「政党色を出し過ぎた」と敗戦の弁を述べました。
蓮舫陣営もこれを理解してるのかしてないのか、以下の戦略を立てます。
【悪の小池vs正義の蓮舫??】
蓮舫はご存知の通り、攻勢に強い政治家です。陣営は彼女の力を最大限発揮すべく「悪の小池vs正義の蓮舫」の構図を作ろうとしました。
正義が悪を倒す。いかにも左派・リベラルの好きな構図ですけど・・・
そもそも都民は小池を〝悪〟と思ってないんだよね。そもそも政治家を善悪で考えるほど、今の日本人はお人好しじゃない。
むしろ東京五輪やコロナ対策で見せたように、口先だけではない牽引力を持った〝強い政治家〟との評価を得ていた。
一方、蓮舫はどうか。
彼女と言えばやはりこれ。今回のタイトルでもこすった、これ。
民主党を絶賛する形で報道されたものの、このワンシーンは国民に広く(ネガティブな意味で)浸透しました。
蓮舫のイメージって〝正義〟ではないよね。むしろ「正義に酔った政治家は危ない」と国民に知らしめたのが蓮舫ら、当時の民主党幹部でしょう。
有権者は小池を悪と思ってないし、蓮舫を正義とも思ってない。カネの問題で揺れた猪瀬直樹や舛添要一らと違い、不祥事を抱えていません。
つまり選挙の構図を作る時点で、完全に失敗したんですね。
【反自民・非小池??】
小池を〝悪〟と設定すべく、蓮舫は出馬会見で「反自民・非小池」を掲げます。防災でも暮らしでも子育てでもなく、反自民。
いくらなんでもこれは無理筋。だって小池百合子といえば「都議会自民党」を叩きのめすべく都民ファーストの会を立ち上げたのよ?
希望の党を作った際は、選挙の鬼・安倍晋三をして「あの時はまずいと思った」と言わしめます。
なのに「小池=自民=悪」なんてレッテル、貼れるわけがない。
【正義の象徴として〝弱者〟〝マイノリティ〟を使うが】
党内から保守派が次々と離脱し、今や社民党か共産党かというほど左傾化した立憲民主党。当然、LGBTや移民・外国人といった少数派に手厚い政策を掲げます。
全国をターゲットとする比例代表なら、色んなジャンルの〝マイノリティ(少数派)〟を集めて大きな票を集めることも可能です。しかし、都知事選は違う。多数派の票を集めねば当選できません。
例えば子育て。結婚して子供を育てる女性は多数派。結婚しない、あるいは結婚しても子供を作らない女性は少数派。良い悪いではなく、そういう現実がある。
なるほど、蓮舫の主張は素晴らしいです。
でも、より多くの票を集めるのはどちらか、なのね。
【立憲共産の腐臭】
知事選挙や市長選挙では、既成政党に対する反感から、地域政党や完全無所属の候補が当選したりします。
細川護熙の日本新党で初当選し、自ら地域政党・都民ファーストの会を立ち上げた小池百合子は、第三勢力の〝新鮮さ〟は武器になると熟知していた。
東京はリベラルも創価学会も強いんですけど、最も強いのは無党派層です。だから青島幸男も当選できてしまう。
自民党という大きな家を飛び出し独立した小池。
民主党の幹部となり、民進党の党首を務め、立憲民主党に居続けた蓮舫。
既成政党の色が付いてるのはどちらでしょう。
蓮舫に〝新鮮さ〟はありません。
すなわち無党派を取り込みにくい。しかも今回は(後述するように)共産党や支持者が舞い上がってしまったことで、腐りきった〝旧態依然〟の象徴となってしまった。これでは無党派は動きません
蓮舫支持者のXポストを眺めると「石丸さえ立候補しなければ、蓮舫票+石丸票で逆転できた」と言う人を見かけます。これは明確な間違い。勘違い。
石丸へ投じたのは無党派層であり、彼が立候補しなければ、そもそも選挙へ行かないか、他の〝新鮮な候補〟へ入れる層です。国政ギトギトの蓮舫が、石丸票の全てを奪える道理はありません。
戦略の失敗・5つの「そもそも」
そもそも蓮舫は4位レベルの基礎票しかない
そもそも野党連合では130万票が限界
そもそも無党派層が動かねば勝てない
そもそも蓮舫は少数派にアプローチしており多数の無党派を集められない
そもそも無党派層を動かすための〝新鮮さ〟はなく、現職の不祥事もないから〝悪〟を倒す構図が作れない
戦術の失敗
「戦略の失敗は戦術で覆せない」と言われますけど、今回の選挙、蓮舫陣営および支持者の戦術は、戦略の失敗を拡大させるバカ騒ぎでした。
戦略にあった〝小池=悪〟の構図を作ろうとするあまり、数々の醜態をさらします。
【共産党支持者による事前運動】
選挙では、公示前に投票を呼びかける行為(事前運動)を禁じています。共産党は以下のビラを作り、広く配布しました。
【神宮外苑の再開発を止めようとする】
共産党は「100年の森を守れ!」と叫び、神宮外苑の再開発を止めると主張しました。しかし、100年の森は神宮〝内苑〟です。
何も分かってないのに「小池が貴重な樹木を切り倒そうとしてる!」と叫んでたわけ。
ご存知のように樹木は人間の手を入れねば荒れます。外苑を管理する明治神宮は樹木を守るべく、枯れかけたイチョウ並木を伐採し、健康な木は植え替える計画を立てました。
外苑の再開発により樹木はむしろ増えます。
蓮舫や共産党、環境保護団体や支持者達は、これに反対した。
そもそも神宮外苑の所有者は明治神宮です。三井不動産や伊藤忠と組んで開発計画を立てた。東京都は法に従い審査し、許可を出している。なのに活動家らは明治神宮へ抗議せず、小池百合子や伊藤忠商事に圧をかけた。
一旦許可した民間の計画を知事の一存で白紙に戻せば、巨額の賠償金を請求されるでしょう。
【プロジェクションマッピング】
都庁のプロジェクションマッピングに対しても批判が集まります。
電通や博報堂に金を流したとの疑惑を検証しようと、都に情報公開請求したところ、黒塗りの書面が出てきた。かつて都知事選へ立候補した際に「徹底した情報公開」を叫んだ小池百合子、お前はなんやねんと。
その怒りはまあ分かるんですけど、これって民間業者に対する普通の発注なんですよ。
小池百合子個人が多額のキックバックを受けていたとか、親族企業が中抜きしていたなら都民も怒るでしょう。贈収賄は犯罪ですから。
でもこんなん、「○億円は高いと思うけど、プロジェクションマッピングすっげー」で終わりじゃないかな。
【学歴詐称疑惑】
カイロ大学を卒業したとする小池は学歴詐称だとして盛り上がりました。元都民ファーストの会事務総長・小島氏が文春に暴露したんです。
しかし、この人の証言がメインで物的証拠は出てこない。仮定に仮定を重ねて騒ぐばかりです。
【AIゆりこ】
AIを使った技術にちょっと驚かされました。現時点でこれなら、ディープフェイクによる大混乱は間近だなと感じます。
蓮舫支持者らはこれを予算の無駄遣いだと批判。キモい、悪趣味だと叩かれました。
キモいってのは分からんでもない。
ただ、かつて蓮舫は「VR蓮舫」を作ってるんですよ。
蓮舫からの罵倒を味わえるんだってさ。
他人の性癖をとやかく言うつもりはないけど、発想のキモさはAIゆりこどころじゃないだろ。
【ペラペラな公約とチャレンジャー発言】
蓮舫は、小池百合子が選挙公約を示すまで、自身の公約を発表しませんでした。ひたすら「反自民・非小池」とだけ叫び、小池と同日発表にすることで自分たちの優位性を見せようと試みた。
で、満を持して発表した公約はこんなシロモノ。
具体性、なし。
2016年に〝7つのゼロ〟をぶち上げて当選した小池に対し〝7つの約束〟を打ち出した。小池の公約を検証するとロクに達成できてないとの批判付きで。
主張の骨子は分かる。でも、目標の達成度合いを叩くなら、自身の公約も後で検証できる内容にすべきだと思いませんか?
実際、取材記者からも、
と、当り前のツッコミが入ります。
これに対し蓮舫は、
と開き直ってしまった。
達成度合いで小池を叩きつつ、自分は達成度合いを検証できない公約にする。しかもその理由は〝チャレンジャーだから〟。
それを言ったら小池の〝7つのゼロ〟も、彼女がチャレンジャーだった頃に作られた公約ですよ。
ちなみに今回の小池は〝3つのシティ〟を掲げました。
暴走を始める支持者達
SNSを中心に、蓮舫の選挙戦は盛り上がりをみせます。
#蓮舫流行ってる #蓮舫を勝たせる などのタグが並び、まるで圧勝しそうな雰囲気でした。しかし、彼ら、彼女らは暴走を始めます。
【〝R〟のシールを無許可で貼りまくる】
都議会議員の尾島紘平氏が以下のようなポストを行いました。いわく、蓮舫陣営は街中に〝R〟マークのシールをベタベタ貼りまくっているのだと。
これに対し弁護士の堀氏は、「支持者ではない人が貼りまくった可能性」「選挙活動ではなく芸術活動」と、アクロバティックな反論をします。
しかし実際は、
蓮舫支持者やないかーい
さらに、自分たちが作り、貼ったと主張する人物が現れます。
なんで得意げなんだよ・・・。
しかもこの人達、リンチ事件を起こした左翼集団「C.R.A.C(対レイシスト行動集団・旧称しばき隊)」です。
これに対して蓮舫氏は関与を否定。
尾島議員はぶち切れます。
蓮舫陣営は「私たちの指示じゃない。剥がすべきは貼った人たち」と主張していますけど、尾島議員のいうとおり、たとえ陣営の指示じゃなかったとしても「東京を汚す行為は許せません」くらい言えたでしょうに。
見かねた立憲民主党議員は、蓮舫シールを剥がしに街へ出ました。
貼った連中は、今も自身の正当性を主張するか黙殺しています。
【歌と踊り】
※音量注意
ドン引きしません?
歌や踊りを混ぜる手法は、SEALDsの安保法制反対デモで大々的に実施されました。いわゆるコール&レスポンスもその一つ。
今思えば、なんでこいつら英語で叫んでんだろね。
その後、リベラルは歌やダンスを多用するようになります。
【小池百合子の演説にヤジ】
支持者達はこのやめろコールを「自然発生」としていました。
しかし、現場にいた人からバラされます。
【ガセ情報を流す芸能人】
有名人の応援団も酷かった。
【演説妨害を肯定するジャーナリスト】
【島しょ部を小馬鹿にする元文科事務次官】
【都民を愚民と罵る司法書士】
どうでしょう。正直、不快じゃない?
蓮舫、そりゃ落ちるよ。
民主主義の根幹を成す〝選挙〟を愚弄しているのは、ポスタージャックをしたN党なんかじゃなく、蓮舫支持者達かもしれないと思ったよ。
リベラルの暴走に対し、中央大学法科大学院の野村修也教授は警鐘を鳴らします。
まとめ・3位じゃダメなんですか?
蓮舫さん、最後は〝弱さ〟を出してアピール。
男性顔負けの勢いで他者を攻撃しつつ、困ったら〝女〟を出して同情をもらおうとする。
こういう〝媚び〟の姿勢、嫌う女性は多いんじゃない?
一方の小池百合子は、71歳になっても徹頭徹尾「現実的かつ強い政治家」を見せつける。
実際、蓮舫は女性からの支持で小池に完敗しました。
見てきたように、そもそも蓮舫は都知事選で善戦できる要素がないんです。現職絶対有利であり、「古い既存勢力vs新鮮な無党派」の構図に持ち込まねば勝負にすらならない。
石原慎太郎は既存勢力からも無党派からも支持を受けたし、今の小池百合子もそう。なのに蓮舫は、票数不足の既存勢力「立憲共産」を前面に出した。かつての鳥越俊太郎と同じ轍を踏んだのです。
立憲執行部は敗北理由を「分からない」としています。共産党の小池晃書記局長は「民主主義の力を示した!」「新たな民主主義の動き!」「希望が広がった!」と言っています。
いやいや、貴方達の立てた戦略の失敗に、暴走支持者をたしなめることなく事実上黙認する戦術の失敗まで重ねたから負けたのよ。
取り入れねば勝てぬ無党派層から無視され石丸に奪われ、女性票もとりこめず、2位にすらなれなかった。
空前絶後の間抜けな選挙運営こそ、敗北の原因でしょうよ。
立憲民主党も日本共産党も。戦略を立てた蓮舫陣営も支援した著名人も。乱痴気騒ぎに興じた支援者も。彼らは身内にのみ通用する〝正義〟に酔い、ある種の抵抗運動をした気分でいた。
民主主義を守る高揚感、言ってしまえば「ただの気分」に浸ることこそが目的となったため、圧倒的に排他的かつ他罰的だった。
中立意見さえも許さず、部外者を〝悪〟と断じ、広く支持を得ねばならぬ「選挙戦の目的」を忘れてしまった。
小池支持者を民主主義の敵と罵り、石丸支持の若者を世間知らずとあざけった。無党派層を「選挙に行かない愚かな連中」と批判した。
無党派を罵倒する姿勢では票の広がりなんて見込めません。4年後の都知事選も野党連合は130万票で敗北するでしょう。
何かを変えようと叫びつつ、自分たちの行動や思考は一切変えない。その姿勢は〝知性の怠惰〟です。彼ら彼女らは徹底して不自由かつ暴力的だ。リベラル・平和を標榜する中、なんたる皮肉か。
今回の都知事選を俯瞰して見ると、
戦後の長い保守政治の中で、揺れながらも保たれた〝民主主義〟への感謝を忘れ、自分たちこそ正義だと思い上がった人達がいた。その傲慢な姿勢に、「2位じゃダメなんですか?」の迷ゼリフが15年越しのブーメランとして突き刺さったのではないでしょうか。
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