第6回(2024.10.28)授業へのフィードバックから
こんにちは。ちょっと遅くなりましたが、第6回の授業にもらったフィードバックをご紹介しましょう。
第6回は、第5回で紹介した「注意」の概念が産業などでどのような応用となるか、視覚サンプリング (visual sampling) を題材にお話をしました。
それではさっそくいくつかご紹介しましょう。
あ、その前に。
フィードバックは出欠も兼ねているので名前と学籍番号は記録されていますから、自分の名前をあらためてフィードバックの中に書かなくてもいいですよ。
今回の内容では無いが選択的注意と分割的注意の違いがよく分からなかった。
前回第5回で選択的注意と分割的注意のお話をしました。
選択的注意は基本的に一度に処理する情報は一つですね。(短時間で選択を切り替えれば擬似的に時分割になりますが。) 一方、分割的注意は同時に複数の情報をパラレルに処理する注意のモデルです。
眼球の追跡運動に関して、プロの投手が投げる速球は打者や捕手は本当に滑らかに追い続けられているのでしょうか。特に捕手は殆ど視線を動かす必要がないためどちらかというと注視時間がかなり短く視線の移動が小さいsaccadic運動を一瞬で行っていると思います。
視線を動かす必要がないから、ずっと同じボールを見ていると考えます。そのボールが滑らかに動いているので追跡(pursuit movement) になります。眼球運動を記録してそれを観るみるとよくわかると思います。もっともボールだけでなく、投手や野手、その背後で盗塁を狙っている走者などにも注意を払っている場合には、当然サッカード運動になります。
本日で、視覚、注意の範囲が終わった。インターフェイスの設計にこれほどよく役に立つ学問だということに興奮した。
自分自身の応用分野や取り組んでいる問題があると、授業で扱っていることの理解が進みますね。
研修医と経験がある医者の眼球の動きに違いがあるというのが面白いと思った。これは車を運転する時に初心者が一点だけ集中して見てるのに対し、ある程度運転してきた人がある程度周りも見ながら運転している違いと似たものがあると感じた。
ベテランは、真ん中に集中しつつも周りに気を配れるという話が印象に残った。
その通りですね。運転初心者は自分の進行方向や操作に集中しがちですが、熟練ドライバーはそれ以外の環境にも注意を向ける余裕があるようです。
探す時に左上から探す傾向は文字を読む方向が影響しているとありましたが、右から読む言語を使う人は右から探す傾向があるのか気になりました。
人間が垂直方向にscanするかどうかは縦書きの文化があるかどうかに基づくという説があるそうですが、それではアラビア語圏においては水平方向のscanにおいて左からではなく右からscanするのでしょうか。気になりました。
この議論は昔からあるのですが、私はちゃんと調べたことがないです。すみません。
今回の講義で人間は水平方向のスキャンをしやすいという話があったが、私なりの考えなのだが、外で外的などがいないかを確認するときに地平線に沿って水平方向でscanすることが戦略的によかったからなのではないかと思った。またscanの趣向が育った環境など(縦書きの文字)などに影響することが面白いと感じた。
なるほど。進化の過程で生き残った特性という仮説ですね。と言うことは、人間はこれまで上空から襲われることはあまりなかった、ということでしょうか?
視覚の探索について、人間は水平方向の探索が発達しているとのことだったが、これは人間が地上の動物なので、水平方向の認識をする機会が多いことが関係しているのではないかと思った。 一方で、樹上に上がることが多い猿などは、地上から木の実を探すなど垂直方向の探索もあるので、そちらも発達しているのか気になった。
興味深い視点です。猿にアイトラッカーとか装着できるのかな?
火事の時など時間制限がある場面と、X線写真の時など見落としが許されない場面とでは探索のやり方が全く異なるのではないかと思いました。
これもよい着眼点ですね。研究のテーマにしてはいかがでしょう?
アルバイトなどでミスをする時は今日学んだ認知トンネル現象が起こってることが多いので、気をつけようと思った。
今回の授業で特に印象に残ったことはある物事に集中しているとそれ以外の出来事に意識を向けることができなくなる認知トンネルという現象である。先生が例に出してくださった飛行機の墜落事故ではエンジンの不調を改善することに集中していたら高度計に意識が向かなくなり高度が低下しているのに気づかず墜落してしまった。認知トンネルはこういった事故を引き起こしかねないため物事の一点に集中しすぎるのは良くないと思いました。
認知のトンネルがとても身に覚えのある現象だった。対戦ゲームで自陣の戦術の穴をつかれたときに起こりやすく、想定を広げておくことが重要だと思った。
はい。自分が何かに集中している時に、もう一人、幅広い範囲(全体)を見てくれる人がいるととてもよいです。
認知トンネルの話があったが、マジックとかはよく、手元に注意を向けさせ、それ以外の対象への意識を薄れさせるという点でその一つであるなと感じた。
いい着眼点ですね。認知トンネルの応用の一つとも言えるでしょうか。
眼球運動の映像で、昔は頭に機器をつけて行っていたとおっしゃていましたが、現代では眼球運動を測定するための方法、機器は変わっていないのか気になりました。 現代での技術の進化に伴って、より機器の軽量化であったり、簡易的にも測定できるのでしょうか?
コンピュータディスプレイに投影されている映像の中のどこを見ているか、であれば、ディスプレイそのものに視線追跡をする装置を内蔵させることができます。一方、例えばスポーツをしている人がどこを見ているかなどは、やはり頭部に装着するものでないと難しいと思います。
情報源を呼び出さなければならないときに、サンプリングを忘れがちということが、よくわからなかったです。スマホのメニューから情報を呼び出すことと、管制室の計器を歩いて見に行くことでは何が違うのでしょうか。
「呼び出す」というアクションが一段必要になることが大きいです。そのアクションを何らかの理由で行わなかった場合に、どんなに重要な情報でも人の目に見える状態にならないからです。(そしてそういうミスは、必ず起こります。人間はおもったほど何かあるといろいろなことができなくなったり、やり忘れたりするのです。) 一方、管制室の計器として並んでいれば、少なくとも視野に入りますし、警報などを併設すればすぐにそこに駆けつけることができます。
スキャンする際に水平方向にスキャンすることが多くてこれは文字を読むときの文化から来てるのではという話があったが、現代では若者はスマホをよく使っていてスマホは性質上上から下にコンテンツを眺めるということが非常に多いので、今同じような実験を行うと上下方向のスキャンを行う人の割合は増えるのではないかと思った。
これもおもしろい問題提起ですね。しかしマンガのようにビジュアル表現されているものは確かに上から下に読みますが、文章の場合ははやり左から右、を繰り返しているように思います。研究テーマにして実験して試してみてはいかがでしょう?
さて次回第7回は、いよいよ認知プロセスの中心部、認知の段階に入ります。認知の段階の大きな特徴の一つに、作業記憶 (working memory) を使うことがあります。よって第7回はまず作業記憶を中心とした記憶の話から入ります。お楽しみに。