第11回(2024.11.18)の授業のフィードバックから

こんにちは。
今年のこの授業も講義ができるのは今回のあと残り3回になりました。
今回は認知プロセスの最後、行動選択の2回目です。
前回 Hick-Hyman の法則のお話をして、人間を「情報処理速度一定の情報処理プロセス」と見る考え方について述べました。
今回は、その後おこったその考え方からの乖離、すなわち「それでは説明できない」人間の様々な性質について、特に S-C compatibility について扱いました。
それでは今回のフィードバックの中からご紹介します。

  • 前回の実験が情報処理速度が一定であるかのような内容で疑問に思っていたので今回の内容は興味深かった。互換性に関して、直観的なものもあったが直観的には理解できないものもあったので詳しく調べたい。

最後にお話しした「互換性」の話題は、正式には S-C Compatibility と言います。それだけで一冊の本になるほど様々な研究がなされています。興味があれば、本お貸ししますよ。

  • 授業内でメモリとダイヤルの順番を変えると直感的な操作になる、というものがあったがあれは具体的にどこに利用されているのか

何かをちょうど良い値に調整したい、というような場合に当てはまると思います。いろいろあると思いますが、例えばプラントの制御室などで圧力や流量を値を見ながら調整する、などはその例になると思います。

  • UIに関しては、ゲームをやってると強く実感できる箇所が多かった。たとえばスマートフォンゲームが普及し、ディスプレイとコントローラーが一体になったのはかなり大きく、クロスプレイ可能なゲームで別デバイス(たとえばPC)から同じゲームをしようとするとかなり操作性が悪く感じてしまう。 空間の動的な互換性に関しては、時計回り&下から上というのが現在普及している右ネジとはかなり相性が悪いのではないかと思った。

これはなぜかな?時計回りは数が多くなる、右ネジは圧が強くなる、という意味で同じ方向なのでは?

  • 動作の互換性を完全に逆にしたインターフェースにユーザーが困惑しまくる様子も、それはそれで見てみたいと思ってしまいました。

困惑させられている人は良い迷惑だと思いますが…

  • 数字の大小から偶数奇数に変わるのは話を聞く前に抜き打ちでやられたらもっと混乱したと思った。

途中で反応ルールがかわる実験ですね。来年からそうやってみましょうか?

  • 位置の互換性で相関係数が0の時よりも-0.3の時の方がRTが大きいことから、人間は無関係のものより固定概念の逆の方が処理に時間がかかるのかなと思った。

具体的な理由はわかりませんが、「完全な無相関」より「ちょっと逆」の方が難しいのかなと理解しています。

  • ここまでの授業で、飛行機事故の原因に人間の意識や行動を予測すれば防げるものがいくつか出てきて、技術だけでなく内面の部分も考えないといけないと感じた。

はい。ですから事故の度に人間工学の専門家が調査に参加して、それ以降作られる機械でヒューマンエラーが起きにくくなるように設計の変更を提言しているのです。

  • 飛行機の墜落の事件の話が興味深かった。車のアクセルとブレーキの左右の差がもし逆になった場合は、影響が出るのか気になる。

今回の表示器・操作器の話とは直接関係ありませんが、例えば輸入車など、ウィンカーレバーおよびワイパーレバーの位置がハンドルを挟んで国産車と逆の位置についていることがあります。車を乗り換えると間違えてしまう(=ウィンカーを出そうと思ってワイパーを動かしてしまう)人は結構見うけられます。あれはハンドルを中心としたユニット部品を、右ハンドル仕様、左ハンドル仕様と両方作るとコストがかかるから左ハンドル仕様のものをそのまま右につけているために起こる現象だと理解しています。あの場合結果的に輸入車と国産車で捜査機の位置が左右入れ替わっているのですが、結果はせいぜい変なところでワイパーが動くくらいで済んでいますね。しかしアクセルとブレーキが入れ替わっていたら大惨事です。ここはきちんと標準に合わせなくてはなりません。

  • パソコンの画面をタッチパッドを使って下にスクロールする時に指を下に動かす人と上に動かす人がいることから、互換性も人による部分があるといえそうです。見ている部分が下に行くのだから下に動かすという感覚と、実際に画面を触っているように上に動かす感覚で割と二分されているのが面白いです。

この現象は私も面白いと思っていました。いわゆるメンタルモデルの違いだとおもいます。今指で動かしているのは表示されている文字であるというメンタルモデルと、画面(枠)であるというメンタルモデルと。で、一回メンタルモデルができてしまうと、なかなか切り替わらないんですよね。

  • 真偽は定かでないが、危ない状況に遭遇した時、視界がゆっくりになり、彩度が下がって見えるという話を聞いたことがある。これは通常時の情報処理速度の限界を越える必要がある時に、他の情報を減らすことで、別のことにリソースを割いていると言うことなのかなと思った。彩度が下がっているのかは分からないが、自分も転びかけた時に視界がゆっくりに感じる経験はあったので、部分的には正しいのではないかと思っている。

これは初めて聞きました。調べてみましょう。

  • 研究のテーマ決めの話がありましたが、問題を見つけるコツや問題を見つけるために意識すべきことは何かあるのか気になりました。

うちの研究室では、以下の本をB4の学生に1冊ずつあげて読んでもらっています。
https://amzn.asia/d/21u55V6

さて次回からは認知主義を離れます。まず次回12回は、これらの認知主義の庶理論を導いてきた実験、すなわち心理学実験というものはどういうものかをお話しします。卒業研究(本学では特定課題研究)で実験をやる人もいると思うのでぜひ知ってください。
それではお楽しみに!

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