
(悪夢)月明かりが怖い街
安全な筈、ここで合っている筈。
只薄暗いフェンスの横を、仲間を引き連れて、徘徊する。
こっちだ、こっちで合っているのだ。合っていなければ、誰かに殺されてしまう。
ビュービューと、冷たい風が吹く中を、僕達は逆らいながら向って行かなければならない。
僕らは何処かへ向っていた。道を探していた。然し安全な道ではない。何処かに唯向っているのだ。
フェンスを攀じ登り、右か左か、、、奴らに追い越される前に、、、早くここではない場所へ。
急いでこの夜の街から安堵できる場所へ。
兎に角この狭いブッロック塀の道を早く!正解の方向へ走っていかなければならない。
(何かが追って来るのだ。)
左を向けば、住宅地を抜けて、大通りを!車一台無いこの荒涼とした道を呆れるほどに眩ゆい月明かりが我々を照らす。
そんな中、息を乱しながら我々はスローモーションの様に進んで行く。
足もとのねずみに気を取られている暇なんかは無い、必死で何処かへ集団で移動しているのだ。
(お前は誰だ?)
そのうちに仲間と逸れて、残っていた者達と、同じ道を進んでいた筈なのに、先に行ってしまった仲間の姿だけが、小さな路地の向こうの方へ横切って、何処かへ消えていくのが見えた。
とても不安になって、取り敢えず残っている仲間と集団で、今分かっている事の情報共有をしようと思い、兎に角、必死に皆に伝えようとした。
情報の伝達が上手く行っているのかどうだか分からないが、兎に角必死になって皆で焦って話をしているとき、頭の中には、一つ不思議な映像が流れてきた。
其れは、自分がまるで宇宙人にでも、、、顔を操られているが如く爆散する寸前の顔をした自分の顔を横から見た状態で、とても痛々しい顔をしていた。そして其れよりも目に付いたのは脳みそが赤く光って今にも、飛び散りそうな印象を抱かせるような悍ましい映像が飛び込んできたのである。
それは、目で見た情報ではなく、所謂テレパシイと云う物では無いだろうか。
其の映像が頭にファッと浮かび、目の前の者がどんどん、どんどん、同じ様な奇声を発しながら、一瞬のうちに目は血走り、私達に目をやったあと、何処かへ消えていくのである。
直感、我々は、この不思議な名称の分からない街を照らす、あの月の灯りのせいではないか、、そう考えた。
又同じ様な、写真と言うかイメージと言おうか、頭に直接浮かんできたので、我々は、痛いアスファルトの上を裸足で移動しながら、潜み凄む恐怖に怯えながら、息を殺してまた、何処かへ移動を始めたのである。
(原文、ボイスメモ)