お名前お披露目の小噺
以前noteに書いたコミティアのアレコレの記事、そこに載せた小噺2つ。
そのうちの一つのキャラデザが届きまして、めちゃくちゃ嬉しくて、明日名前と一緒にお披露目するわ!なんて言いつつ、数日。いや違うねん。どうせならなんかお披露目の仕方あるんじゃね?!ってなって、書きました小噺。
でもまぁた1人しかいない…さて、今度はどっちがお留守番でしょうか?
と言うわけで、以下小噺です。
の、まえに、前回の小噺はすぐ下のリンクから。今回の小噺はリンク下の区切り線の下からです。
弦楽器が奏でる陽気な音楽はきっと誰の耳にも届いていない。
ガラスや陶器製の食器が割れる音に酒に酔った男どもの罵声。笑い声や注文を聞き取るウエイトレスの声に混じり、弦楽器の奏でる曲とは全く違う旋律の歌声と、とにかくそこは混沌とした音にまみれていた。音だけではない、食べ物に汗や皮脂や垢のにおい。それからごった返している店内の中で蠢く人、人、人。視界一面の人と腕に当たる相手の体は音以外の混沌さも主張している。此処にも一つのグループが、周りと同じように酒を煽り、どうでも良いような会話に花を咲かせ、何があったか今は白髪の男と髭面の男が興じる腕相撲にやんややんやとヤジを飛ばしながら金賭けに盛り上がっていた。
『悪いなおっちゃん。オレの勝ちだ』
ごんっという賑やかな音を立て、ついた勝負。白髪の男が髭面の男の前に置かれていたジョッキを奪う。酒はいただくよ。にっと目を細めてからジョッキを煽り、うまそうに喉を鳴らす。
『かー!にいちゃんつえぇーな!温室育ちの皇族みたいな髪色してんのによぉ!』
『髪色が似てたって、皇族のお坊ちゃんがこんなゴリラみてーな身体つきじゃねぇだろーがよ!』
がっはっはと唾を飛ばしながら笑う男どもを気にせず酒を煽る白髪。飲み終わったジョッキをがんっ!と机を壊す勢いで叩きつけては、取っ手から離した手に、自分の顎をのせる。
『似てるだって?笑わせんなよ、おっさん』
オレの方が色男だろ?決め顔を作り込んだ男、ルカ・グイード。
ルカの言葉に一瞬だけこのテーブルをうるさいほどの静粛が襲う。だがすぐに、その耳の痛みは周りの賑やかさに溶け込んだ。
姉ちゃんもう一杯!
仲間がルカを迎えに来るまでの間、この酒を追加する言葉が彼らのテーブルで途切れることはなかった。