"研究ごっこ"
7月に入ってから休日出勤の頻度が多かったため、noteから遠ざかってしまった…という言い訳を交えつつ、だらだら書いていこう。
さて、運良く食品メーカーの研究職として従事している酵素道だが、入社してから「これは研究の質としていかがなものか…?」と思わざる得ない場面に幾つも遭遇してきた。そんな中、twitter上で出逢った”研究ごっこ"というパワーワードが、正に"言い得て妙"だったため、自分の考えを言語化せねばと思った次第である。
ただし研究と一口に言っても、仕事の種類や納期に依存するところが大きいので、今回は企業の研究部門の中でも基礎研究の業務(基礎研究から開発への橋渡し的な業務も含む)を前提としたい。
研究業務への取組み方
企業風土によって異なるものの、基礎研究における業務の進め方は担当の裁量に依存している部分が大きいため、進捗報告では個性?がより濃く反映される形となる。(研究部門には個性豊かなメンバーが多い。笑)
例えば、以下の様に色んなタイプの研究員がいると思うし、自分に合ったスタイルで研究を進めれば良いと思う。
・事前調査を丁寧に行い検討を1つずつ着実に重ねていくタイプ ←自分はこれ
・とにかく手を動かしまくるタイプ
・コミュ力が高く、効率良く情報収集を行い、実験に活かすタイプ
…etc
ただ、中には
「興味があるものに手当たり次第に取組み、検討内容が中途半端」
みたいなタイプがいるが、これが一番"研究ごっこ"に陥りやすいタイプだと感じている。つまり、適切な試験系が組まれていないため、結果が不足しており、結論を出せない。
この手の人はポジティブな結果が出ないとすぐに投げ出す傾向にあり、うやむやの結果のまま月日が流れ、実験自体が忘却の彼方に消えていくことが多い。
査読付きの論文投稿をする意味
ここから少し視点を変えて"研究ごっこ"に迫りたい。
企業研究員の研究目的は「新製品を上市し、会社に利益をもたらすこと」であり、その過程で特許出願や社内のノウハウ蓄積といった成果を出していくことになる。しかし、論文発表を行い成果を残す人は限られているのではないだろうか?少なくとも酵素道が勤めている会社では1割程度か。。
実はこの点に大きな問題があると考えている。
論文を投稿する際には、基本的に査読というシステムを通過しなければならず、研究の「新規性」「独創性」「有効性」「信頼性」を客観的に評価され、容赦なくreject(却下)を受けたりするのだ。
つまり論文を書き上げ、投稿し、掲載されるまでの間に、自分の研究と徹底的に向き合い、精度の高いデータを出す必要があり、その過程で研究遂行に必要な能力を身につけることができる。
企業においても研究に対して真摯に向き合い、しっかり議論しているところが多いと思うが、論文レベルのデータを出さなくてもやり過ごせることが多いことも事実。論文が出すことが目的ではないから致し方ないものの、スピードを重視するばかりに、正確なデータを出すための実験デザインが出来ない="研究ごっこ"な実験デザインしか出来ない課員が出てきても不思議ではない。(実際は相当数いるのではないだろうか…)
個人的な経験談ではあるが、スピード感を優先して、雑な実験デザインをした場合、結果が出揃った後に一からやり直し…なんて事もあり得るのだ。多くのサンプル数をこなすスクリーニング系の実験であれば、数が多い段階では精度を犠牲にせざる得ないが。
以上のことから、研究ごっこを抜け出すためには、
目的に応じて、限られた条件の中で、論文投稿を見据えた実験デザイン及びデータ取りを意識的に実施すべきではと勝手に思っている。(色んな人から反論受けそうだな。笑)
ちなみに、酵素道も論文執筆に取組み始めた。
当該論文の内容は過去に見つけた酵素に関することであり、現在の業務に関係のない内容であるため、業務時間外に論文執筆と足りないデータ取りを実施するという、結構しんどいタスクである。(既に悲鳴が…)
この論文に取り組むにあたり、以下の言葉をテーマに頑張ろうと思う。
「自己満足であると共に、自己満足で終わらせないために。」
今日はここら辺で。
お付き合いいただき感謝です。