完全なキャッシュレス社会の先。

現金の流通高は、
日本がGDP比の20%ほどなのに対し、
スウェーデンはたった1.4%しかない。

首都ストックホルムではATMは続々と撤去され、
仮に現金で支払おうと思っても、釣り銭を持ち合わせていない店舗もある。
堂々と「現金払いお断り」の看板を掲げている店舗さえも。

クレジットカード以外にも、
国内複数の銀行が共同開発した「スウィッシュ」と呼ばれるスマートフォンの現金決済システムが定着しており、子供のお小遣いから路上のホームレス支援まで、このサービスを使って送金されている。

金融機関からすれば、現金を扱うコストを抑えことができるため、
物理的な空間や人材の必要がないのが、大きなメリットだろう。
また、ユーザーからすれば、第一のメリットは安全性にある。
個人であれば財布を持たなくてよく、
店舗であればレジを置く必要がないので、強盗に遭うことがなく、
犯罪率も驚くほどに低下している。

しかし、スウェーデンのキャッシュレス社会は、表層にすぎない。

その基盤には、超透明化社会がある。

たとえば、スウェーデンでは個人情報をインターネットで調べると、住所や電話番号、生年月日、仕事や住んでいる不動産の価値、結婚や事実婚の有無、おおよその収入予測など、あらゆる情報が一覧で表示される。偶然、カフェで知り合った女性の名前を検索し、住所がわかると「花束を送れる広告」までが表示されるのだ。

つまり、スウェーデンのキャッシュレス社会の大前提に、
「プライバシーレス」社会がある。
その一環として、マネーの透明性を高めるキャッシュレスがあるのである。
他の国からすれば、スウェーデンの「プライバシーレス」社会は異様に思えるが、
この国の人からすれば、これが当たり前の様子で、違和感を感じている人は滅多にいない。

この「あたらしいモラル」ともいうべき超透明化社会が、
キャッシュレス社会を構築しているのだ。

すべてとは言わないまでも、
いままで隠していた大半を、誰もが同時にオープンにする。

それによって、ネットワーク化された社会レベルを、一段階アップグレードする。

日本がどれだけ遅れているのか、ちょっと気が遠くなる。

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Enzo Suzuki
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