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ハッカソンの域を超えたピッチ。メッセージとして込めた「東京ドームシティをみんなでXRのコミュニティに」【enXross HACKATHON 参加者インタビューvol.8「U.D」(後編)】

皆さん、こんにちは。
enXross 事務局の木村です。

enXross HACKATHON」では、全93チームから選ばれたファイナリスト10組による最終プレゼンテーションが行われました。
ハッカソン参加者にフォーカスを当て、決勝に選ばれた日本チーム全6組、そして奨励ピッチの優勝チーム1組、計7組のインタビュー記事をお送りしております!

最終回は、enXross HACKATHON 決勝ピッチで見事優勝を果たした「U.D」の後編です!引き続き、チームメンバーの瀧 大補さん、尾上 兼透さん、荒木 裕さん、村井 亮介さんにお話を伺いました。

「ビジネス要件を理解し、クライアントへ提案する形が出来上がっている。ハッカソンの域を超えていた」

全ピッチの中でも、盛り込まれた要素や完成度は群を抜いており、最初から最後まで観客と審査員の心を掴んで離さなかった。現に、enXross特別協力のNiantic, Inc、白石 淳二さんはこう評する。「東京ドームというクライアントを見て、その先にはドームに来られるお客さんがいて。そのビジネス要件を理解されていて、それに対するビジネスピッチだったように感じます。クライアントへ提案する形が出来上がっているっていうのが、ハッカソンの域を超えていました。」

―――(瀧さん)チーム内の動きとしては、Git Hubでプロジェクトを共有していました。ゲームの構成的に、カードリーダーでタッチしてアプリが起動するっていうところと、アプリのカード毎にゲームが違うっていうところで、明示的に役割を分けました。エンジニアは、僕含めて尾上さん、荒木さんの三名で、三つのミッションをそれぞれ分担して担当しました。ベースの部分は尾上さんに丸っと投げると、まとめてくれるという。あとは村井さんがデザイン、そのような分け方になっていますね。打ち合わせは1回3時間とか、とにかく長かったです。

もともと一番最初に皆さんには、「ARグラスをかけたテーマパークを作りたい」というきっかけで声を掛けたんですよね。それでenXross HACKATHON Day 1に行くと、運営の方が「東京ドームシティをXRの聖地にしたい」と仰っていたんです。それを聞いて、単にテーマパークとして面白いことをするんじゃなく、XR業界として盛り上がらなければならない。そして東京ドームシティがその中心になり、すごく引力の高い場所にならなきゃならないというふうに、私の考えが切り替わりました。

本当に伝えたかったことは、ピッチ前半のアイデアよりも、後半の「東京ドームシティをみんなでXRのコミュニティにしたい」っていうメッセージ。そっちの方が実は重要でした。消費者向けのお客さんが直に触って楽しんでもらえるXRコンテンツの実験やトライアルができる場所が日本に無いなって思っていたんですよ。本来試行錯誤しながらユーザビリティを上げなければいけない、実験をしなきゃいけないフェーズの時に、直のお客さんと触れ合える場所が無いわけですよ。お客さんに喜んでもらえるXRコンテンツにするためには、お客さんを交えた実験を繰り返し、コミュニティとして全体でしっかりとコンテンツを育てていかなければなりません。東京ドームシティをそういう場所に、ひいては「XRの聖地」にしていきたかったんです。

具体的なプランニングはまだ全然これからなんですけど、今後XRのコンテンツを試行錯誤しながらお客さんに楽しんでもらえる形にまで持って行って、どんどん投下して知見を溜めて、みんなの共有財産にしていけるような場所にならないとダメなんです。それが今業界に必要とされていることなんじゃないかなって、青写真を描いてぶつけてみました。

「みんなでXRのコミュニティにしたい」と、ピッチでは決勝進出が叶わなかった作品も紹介した

「Vision ProもARグラスも山の両端にいて、一番テッペンを目指すところは一緒。今それぞれが登っている途中」

XRとエンタメを掛け合わせたときの親和性は非常に高く、可能性は計り知れない。とはいえ、「XR」やテクノロジーの領域自体に馴染みが薄い層も少なくない。ピッチで、XR×エンタメの可能性の一端を示した「U.D」。優勝者から見た、一般普及への道やXRの未来とはどんなものだろうか。

―――(瀧さん)例えば、Apple Vision Proを被って現実とシームレスな表現が出来上がったなと思うんです。ただ、どうしてもまだAppleでさえ重くってゴテゴテししいものを装着しなければ表現できない世界だなっていう限界を私自身も感じてしまったんですね。片やARグラスっていうのは、デバイスとしてはめちゃくちゃ気軽にかけられるけど、やっぱ表現の幅に限界があってデバイス毎の差があります。

要するに、Vision ProもARグラスも山の両端にいて、一番テッペンを目指すところは一緒なんですけど、今それぞれ登っていってる途中で、どちら側に位置してるかだけの話だというのを感じています。我々はグラス側にいて、グラス側にいる人間がやるべき使命というのは、できるだけ日常使いで、一般の人達に馴染んでもらうという作業です。

例えば、なんばパークスさんで開催された「イルミネーションダイビング なんば光旅」では、グラスをかけると光るイルミネーションとバーチャルの光る魚が融合して、どちらが本物か分からなくなるような体験をプロデュースしたんです。このプロジェクトでは、ARグラスとかの言葉は一切使わずとも、絵とビジュアルがテレビに出たら予約が殺到してチケットが完売するほどの反響がありました。このように魅力を感じて「面白そうだ」って思ったらデバイスとか関係なく単純に人は来ますが、それを示せる事例がまだまだ少ないんですよね。


―――(尾上さん)私こういう業界にいるんで、こういうことは大きい声で言えないんですけど、正直一般普及はあんまりしないんじゃないかなって思ってます。というのも私は開発でデバイスを沢山触っていて、Meta QuestやApple Vision Proも買ったりしましたけど、正直なところ全然使わないんですよね。コンテンツが面白くないとかそういう話ではなくて、使い心地が悪いっていうのがあります。髪の毛ぐちゃぐちゃになったりとか、女性の方だったらもう化粧が崩れちゃったりとか、単純に重いっていうのもありますし。

ただ一般普及はしないけれども、XRが衰退していくかっていうとそうではなくて、使える場所はたくさんあるなというのは思っています。というのは、一般の方が日常使いでスマホの代替としてみたいなイメージではなくて、「こういう作業してる時にすごい不便なんだよな」みたいなところに刺さったりという部分あると思ってて。小型化が進んで、AIが搭載されて、みたいなところでいうと発展途上であり、これから楽しみな感じではあります。


―――(荒木さん)じゃあどうやって広がっていくのかっていう僕の想像では、スマホの拡張をするものだと思っています。わざわざスマホを無くす必要はなくて。今は「被る」ですけど、もっと違う形で街中に浸透して、ディスプレイの代わりみたいになるかもしれないですし。立体的な普通のモニターとかもあったりしますけど、そういった形が街中にいっぱい点在してて、立体的にインタラクションできるモニターとかが、いわゆるXRとして出てくる、それをちょっと拡張するための簡易的なメガネなのかもしれないですし。多分僕らが想像してるかなり斜め上の方で発展すると思っています。

スマホの代わりって考えるから難しくなっちゃうんですけど、Apple Watchとかが普及してて、それなりに使ってる人達がいたりしますよね。あれに近いもので、スマホをちょっと拡張してみたい時とか、何か街中にあるものをちょっと拡張して見たい時に、さっとそこでかけたらその見たいものが見れる。もしかしたらそれは片目で見るものかもしれないですし、いわゆる3Dでインストラクションできるメガネみたいなのとは違う、もっともっと簡易的なものかもしれないですけど。それがスマホや街のインフラと連動することによって、すごい意味のあってニーズのあるものになったりして使われていくのが最初かなと感じます。

インタビュー・テキスト by木村亮
決勝ピッチ直前、最終調整中の一枚


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