オープンイノベーションを通じて「パナソニックの技術」をシェアする! 「技術インデックス」とは ―enXross 2nd協賛企業インタビュー・パナソニックホールディングス
皆さん、こんにちは。
enXross事務局です。
日本最大級のエンターテインメントシティ・東京ドームシティを舞台に、デジタル技術を活用した経済圏創出や、お客さまの感動体験アップデートの実現を目指すプロジェクトenXross(エンクロス)。
今年はXR(クロスリアリティ)をテーマに、2024年7月4日にトークセッションや企業展示などのイベントが行われます。
今回は、パナソニックホールディングス株式会社知的財産本部の竹内宏樹さんに、パナソニックのオープンイノベーションに向けた取り組みについて、お聞きました。
創業以来、約10万件の知的財産を保有、無形資産を活かして社会価値を創造する
― パナソニックさんは、日本・外国特許保有件数ランキングでも常にトップクラスを誇る企業です。知的財産部門の成り立ちや位置づけについて教えてください。
竹内さん 1916年、創業者・松下幸之助が配線工事で使っていたソケットの改良に取り組み「二股ソケット(松下式ソケット)」を開発し、実用新案を出願したことから、パナソニックの知的財産(知財)の蓄積ははじまりました。国内外で知財活動を進め、現在では約10万件の知財を保有しています。
これまで、こうした知財はパナソニックグループのために使われてきましたが、10年ほど前からデジタル化が急速に進み、モノ消費からコト消費へと重視される価値が移るなどして、事業環境が著しく変化してきました。
そこで、サービス、データ、アイデアなどを無形資産として扱い、さまざまなステークホルダーと共創して社会的な価値を生み出していく方向にシフトしてきたのです。無形資産を活かし、オープンイノベーションを強化していくことが現在の知財部門のミッションになっています。2022年には「無形資産を巡らし、価値に変えて、世界を幸せにする」という知財部門のパーパス制定もしました。
パナソニックはホールディングス傘下に複数の事業会社をもっており、それぞれに知財部門がありますが、私たちホールディングスの知財部門は全社戦略を担っています。
環境とウェルビーイングに関連する知財を外部に公開、オープンイノベーションを促す「技術インデックス」
― オープンイノベーション創出の場をつくろうと立ち上げたのが、新サービスの「技術インデックス」ですね。
竹内さん そうです。約1年前に「技術インデックス」の公開をスタートしました。パナソニック内で蓄積され、まだ活かされず眠っている技術や現在開発中の技術をシェアしたい。そのために技術に「インデックス」を付けて、目的から検索できるようにして公開しています。
多くの技術は、技術者や専門家でないと探すことが難しいので、、知りたい技術を探し当てられるように、技術にわかりやすく「インデックス」をつけようと考えました。
「わかりやすく」と言っても、専門技術には専門用語が付き物で、それを噛み砕いても難しさは残ってしまいます。その技術を使ってどういうことを達成できるのか、何のために使うのかなど、技術を直接説明するのではなくて、目的に紐づくように情報を整理していることが特長です。
情報公開をしてマッチングを「待つ」だけでなく、ニーズをもっている方にシーズを届けるために、営業活動もはじめました。
― どんな知財が公開されているのでしょうか?
竹内さん パナソニックが保有する約10万件の知財から、私たちが特に力を入れている「環境」「ウェルビーイング」を軸に、約2万件の知財を公開しています。
例えば、環境技術には「太陽電池」「燃料電池」「エネルギー貯蔵」「リサイクル・廃棄物処理」、ウェルビーイング技術には「センシング」「仮想空間」「セキュリティ」「コミュニティ」といったキーワードを立てました。
気になる知財があれば「問い合わせ」からコンタクトしていただけます。入力項目は少なくしてあり、気軽に問い合わせできるようにしてあります。
お問い合わせ後は、まずは私たち知財部門がお問合せいただいた技術についてご説明し、その次に進む場合は、専門のエンジニアとの対話を通じて、技術の活かし方などをご相談いただけます。
私たちはこの過程を「イノベーション対話をしましょう」と言っています。ライセンスうんぬんや、連携ありきではなく、「試しに話をしてみよう」というくらいのライトな感覚でご連絡いただければいいなと思っています。
― パナソニックさんはSDGsについても早くからかなり熱心に取り組まれてらっしゃる印象があります。「環境」と「ウェルビーイング」の軸はここから出てきたのでしょうか?
竹内さん そうですね。我々がステークホルダーと連携して価値を出していくという点、この2つを選びました。
眠っていた技術が外部企業のアイデアで思わぬ活用に。鳥取の中小企業との事例
― 「技術インデックス」を活用してマッチングできた事例などはもうありますか?
竹内さん 技術インデックスは公開して間がなく、まだまだ活動開始した段階で事例はありませんが、技術インデックス以外の当社の知財活動で事例が出ています。現在は鳥取県の企業であるイナバゴム株式会社様と新たなセンサの開発に乗り出しています。
イナバゴムさんには、従来絶縁体とされているゴム材料に導電材を混ぜることで導電性をもたせ、圧力を加えると電気を通す感圧導電性センサ「イナストマー」という製品がありますが、3D曲面への取り付けが難しく、これが長年の課題だったそうです。
そんなとき、パナソニックの知財である曲げることができるディスプレイ「ストレッチャブル LED」を知っていただき、センサを置く場所として使っていただくことになりました。その結果、センサを取り付けできるようになり、現在ではゴルフのクラブやテニスのラケットなどに使える、グリップ握り圧力センサの製品化を目指し、取り組みが進んでいます。
パナソニックとしては、ディスプレイとして開発した技術だったので、「センサを置く場所」としてこれを使うということは、私たちだけでは生まれない発想だったと思います。ステークホルダーの方々と一緒に対話し、考えることで、眠っていた技術が思いもしない活用につながり、価値を出すことにつながった事例のひとつです。
パナソニックには、大勢の技術者がおり、いろんなところで役に立ちたい、世に技術を出したいという思いを非常に強く持っています。これまでは、技術の出口は基本的にはパナソニックグループの中にしかなく、一定の市場規模がないとその技術を活かすことは難しかったため、たくさんの技術が眠っている状態です。アイデアをもつスタートアップやベンチャー、中小企業にぜひ「技術インデックス」を活用していただき、新しい価値をつくっていきたいと思っています。
enXross 2nd会場ではXR関連の展示を実施、技術に触れることで共創の糸口を
― 最後に、「技術インデックス」の展望、また、enXross 2ndへ期待することや、当日の会場展示について教えてください。
竹内さん 「技術インデックス」は今後、事例の掲載など情報の充実を図り、知財を活かす際のポータルになるようにしていくつもりです。
7月4日の東京ドームシティでのイベントでは、感動体験を支えるもの・感動体験につなげるもの・感動体験を演出するものという3つの切り口から、パナソニックのXR関連のソリューションなどを展示予定です。
ひとつは道頓堀で実証実験をしたソリューションでタッチポイントを強化して回遊性を向上させるような取り組みです。ブース内をアバターが案内してくれる仕掛けも用意します。ぜひパナソニックの技術・ソリューションに触れていただき、共創のきっかけになればと考えています。
― 実際に会場でパナソニックさんの技術、ソリューションに触れた後で「技術インデックス」を見ると、何か新しくやりたいことや、こんなことはどうだろうというアイデアが湧いてきそうですね。本日はお話をありがとうございました。
パナソニックの昨年の記事はこちらから:
「まちづくり」と「観光」の視点で課題解決のソリューションを提案し、新しい社会をつくる
東京ドームシティの新プロジェクトenXrossについてはhttps://www.tokyo-dome.co.jp/enxross/をご覧ください!
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