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肉月と言わなくなることが、子どもの人生を左右するかもしれない話
子どもの頃、父と妹たちと、よく漢字で遊んだ。
「にんべん」や「さんずい」などのお題で思いつく漢字を並べてビンゴゲームをしたり、漢字の一部を繋いでいく漢字しりとりをしたり。
今思えば、お金のかからない、なかなかにアカデミックな遊びである。
そんな歴史があるので、わが三姉妹は漢字好きで、妹たちは熱心に漢検チャレンジを続けているくらいだ。
ある日、下の妹が
「今って肉月ってあんまり言わないらしいよ。どっちも月偏て呼ぶみたい」
と言う。
「え?そうなの?」
月偏と肉月は見た目は同じだが、部首的には全く別。
月偏は、服、朋、有、朗など。
肉月は、肉の字から変化したものなので、肝、肺、腹、臓など、体を表すものにつく。
前にネットの記事か何かで、子どもの名前に「腥」(たぶん、せいと読ませる)とつける人がいると言うのを読んだのを思い出した。
「腥」=「なまぐさい」 である。
多分、月と星でかっこいい!みたいなノリだったのだろうと想像する。
そう言うと妹が
「膀胱の胱って字を使う人もいるんだってよ」
「まじで?」
「やっぱり月の光できれいな感じがするんだろうね」
「漢字の意味とか訓読みとか調べないのかなぁ」
「胱って訓読みなんだっけ?」
「・・・・・・」
調べると「ゆばりぶくろ」とあった。
「ゆばりって何?」
Google先生曰く、古くは排泄を「まる」と言った。「温かい湯のようなまる」で、尿のことを「ゆまる」と呼ぶようになり、それが変化して「ゆばり」となった。
つまり「ゆばりぶくろ」=「尿の袋」=「膀胱」!
ちなみに膀の字も同じ読みであった。
訓読みを重ねれば。「ゆばりぶくろゆばりぶくろ」
膀胱以外のナニモノでもない。
小学生の頃、訓読みは漢字の意味を表していると教わった気がする。
湯桶読みとか、重箱読みとかテストに出たなぁ。
くだんの「腥」や「胱」も部首が肉月とわかれば、なぜ肉月?と改めて漢字の意味を調べたかもしれない。
本当にこれらの字を子供の名前に使ったのかどうか、真偽はわからないけれど、学校の課題で自分の名前の意味を調べた時にショックを受けるのは避けたいものだ。
「僕の名前、おしっこ袋なの?!」
なんて。
実家でまったりお茶など飲みながら
「漢字の世界は奥深いねえ」
「私たちってアカデミック〜」と笑い合った土曜日の午後だった。
まあ、すべてスマホでの調べ物だったのだが。
辞書、引かなくなって久しいなぁ。