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【エッセイ】 老け顔、ですがなにか?
年上に見られてきた歴史がある。
学生時代、美容院の鏡の前で
「今日はもうお仕事終わりなんですかぁ?」と言われること数知れず。ケープかけてるけど、さっき制服着てたの見てたよね?と反論する気も起きないくらいに。
落ち着いていると言えば聞こえは良いが、いわゆるひとつの老け顔だったのだろう。
実年齢と顔が釣り合ってきたのは、ここ十年くらいか。
おばさんと呼ばれるのは嬉しくはないが、アラ還であるゆえ、分類としては受け入れざるを得ない。
ある日のこと。
スーパーでの買い物をすませていつものように駐輪場に向かうと、私より少し年上と見られるおばさまが三人、話し込んでいるふうだった。よく見ると子供乗せ自転車を囲んでいる。後ろの席にはピンクのヘルメットを被った三歳くらいの女の子が座っている。
今どきの子供乗せ自転車はタイヤが小さめで電動アシスト付き。前後に子供用シートがついていて、もちろんハンドルストッパーも付いているようだ。きっと安全性が高く安定した乗り心地なのだろうことは想像に難くないが、いかんせん重い!余談だが、以前斜めに停まっているのを修正しようとして大いに後悔したものだ。
この時は有料の駐輪場だったので、時間が来るとガッチリキープされるタイプのスタンドがあり、よっぽどのことがない限り倒れることは無さそうだった。ああ、お孫さんかな。かわいいなと思いながら通り過ぎようとしたところで、
「ねえ?そうですよねえ?一人でこんなところにいたら誰かに連れていかれちゃうかもしれませんよねえ」と聞こえてきた。
「ほんとほんと!」
「物騒な世の中ですもんねえ」
察するところ、子どもが自転車に乗せられたまま駐輪場にいるのに、近くには保護者が見当たらない。おばさま達は善意で見守っている、と言うことのようだ。話し言葉から、三人は知り合いではなく、たまたま前後してここで出会ったらしい。
当の女の子は口をへの字にして固まっている。
無理もない。知らないおばちゃん達に囲まれているわけだから。
子どもを自転車に乗せたまま保護者がいなくなる…どんなワケがあったのだろうと考える。
例えば、前のシートに乗っていた下の子が急にトイレに行きたくなってママ(またはパパ)が焦った。
例えば、急ぎの買い物があるのに、どうしても降りないと駄々をこねられたので仕方なく。
例えば、自転車を停めたところでひったくりにあい、慌てて犯人を追いかけて行った。
いやいや、どんな理由があっても子どもを置いていくのはまずいよなぁ。
暑くも寒くもない穏やかな日ではあったけれども、外的要因は気候だけではないはずだ。
まずいはまずい。
まずいけれども、こんな風に待ち構えていられたら、ママも帰りにくいよなぁ。少なくとも私なら、いたたまれなくなりそうだ。
見ないふりは良くないけれど、これ見よがしもどうかなと思う。
こっそり密かに見守るのは無理なんだろうか。アニメ『巨人の星』の明子姉ちゃんのように、物陰からそっと見守れないものかなぁ。
何もなければそれでヨシ、ママ(もしくはパパ)が戻って来たらそっと立ち去る。
万が一不埒な輩が現れて、子ども危うし!となったら颯爽と登場して守る。
想像だけど、おばさま達はママまたはパパにわからせたいのかもしれない。
こんなことしたら、危ないのよ。
周りが心配するようなことなのよ。
あなたがしたのは、良くないことなのよ。
もう少し穿つならば、
私たちがいたからこの子は無事だったのよ…。
あくまでも、想像ですが。
おばさま達と女の子を、明子姉ちゃんのように見守ることはせずに帰ってきてしまったので、ことの顛末はわからない。
良かれと思うことを躊躇せずにできるのが、おばさんの良いところであると昔から思っていたけれど…あれ?
夫君に、こんなことがあってさぁと話しながら、自分がママ側のきもちでいたことに気づいた。
ずうずうしいにも程がある。あの子のママは、自分の子どもと言っても良いくらいの歳であろうに。
見た目と歳が釣り合っても、中身の成熟が伴わない。難儀である。