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次男に「子育てうまかったね」と言われました。

「俺、今自分がすごく豊かだと思うんだ」
一人暮らしを間近に控えたある日、次男が急に話し出した。

「自分の興味のある分野に進んで、希望の仕事について、その他にやりたいこともあって。なんでかなって考えたら、小さい時から今現在まで、時間を全て自分のために使えたからだってことに気が付いたんだ」

 次男曰く、裕福ではないけれど、給食費に困ることもなく、友達と普通に遊べる程度にはゲーム機なども与えられ、親の手が回らないなどでの家事の分担もなく、夫婦仲も良いから家庭での心配ごともなく、学校以外の時間は全部自分のために使えたと。何のために勉強してるかわからないと言う人もいる中で、確かにやりたいことが見つかっている自分は、とても豊かなのではないかと。

 産院で「赤ちゃんが0歳なら、お母さんも0歳なんですよ」と言われたことを思い出す。長男から数えて26年。その長男も今年素敵な人と結婚した。

 そうか、私はお母さんとしてとっくに成人していたんだね。子育て真っ最中は必死で、何が正しいのかはわからなかったけれど。
 そして思う。そんなふうに思える君は素晴らしい。

「お母さんとお父さんは子育てうまかったんだと思うよ」という言葉の卒業証書をもらい、これにて子育ては卒業。

 君たちのお母さんであることは、この先ずっと変わらないけれども。

2022年 朝日新聞 ひととき欄 ボツ投稿

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