自己流ゲーム分析方法(前半)
こんにちは!
久しぶりの投稿かつ2022年初投稿ですが、今年も随時更新していこうと思いますので、よろしくお願いします!
早速今回のテーマに入りますが、分析は皆さんどこで学ばれることが多いでしょうか?
最近アナリスト育成の専門学校やコースもあるかと思いますが、今プロクラブでやってらっしゃるアナリストの方たちでそこを卒業してる方はまだ少ないのではないかと感じてます。 (自分の知ってる範囲ですが)
スペインで分析官をやっていた時、バルサとはうちのチームのプレーモデルが似ていたので、よくお互いに同じリーグの対戦相手の動画を交換してました。その時のバルサのU19の分析官の話を聞いても、やはり自己流で、自分で学んでたとのことでした。
ここでの分析とは、戦術分析、そのための動画編集であり、データ分析に関してはまた別という認識、での話です。
指導者から分析官になられてる方も多いでしょうし、コーチ兼アナリストという肩書きも日本ではよく目にする気がします。
今回は自分の経験から、どのように試合を分析し、動画編集を行なっているかについて書いていこうと思います。
前半では、どのようにゲームを分割し、観ているかについて書いていきます。
後半では、動画編集も含め、どのように分析しているかについて書いていきます。
1. ゲームの流れの分割
サッカーという複雑で連続した流れのある時間を完全に分けることは不可能、もしくは必ず何かしらの矛盾が起きそうですが、あくまで選手やスタッフが分かりやすく、重要な情報を共有しやすいように、複雑性を減らす必要があります。
そのために、自分の場合は、まずありきたりですが、組織攻撃、組織守備、攻撃から守備へのトランジション、守備から攻撃へのトランジション、の4つに分け、さらに、組織攻撃を、後述の4つのフェーズ、組織守備を4つのフェーズ、トランジションを各2つのフェーズに分けて分析しています。
このように、分けて考えますが、自分のイメージとしては全てが繋がってグラデーションのように分かれているイメージです。なので、その境目はくっきりしているところと、曖昧なところがあります。
ちなみに、セットプレーは連続した時間の中でグラデーションではなく、区切られたところなので、別の要素として分けて考えてます。
ではここから、まず攻撃に関して書いていきます。
2. 組織攻撃/守備から攻撃へのトランジション(ポジティブトランジション)
組織攻撃をさらに4つ、ポジティブトランジションを2つのフェーズに分割と前述しました。
組織攻撃の4つは、ビルドアップ・前進・フィニッシュメイク・フィニッシュの4つです。
ポジティブトランジションの2つは、カウンター・組織攻撃への移行、の2つです。
2-1. ビルドアップ
自分の中のビルドアップの定義は、
相手のプレッシャーのファーストラインを越えて前進に移行するまで。
としています。サッカーの守備は、各ラインの人数がチームによって変われど、基本的に3ライン以上で守ります。定義の中の『ファーストライン』にサイドハーフやトップ下などが含まれるかどうかは、各試合によって変えてます。このチームの守備のやり方なら、この選手を越えるまで、といった考え方でやっています。
例えば、こういった場合、
433の赤チームのビルドアップに対する343の青チームのプレッシャーに焦点を当て、青チームの9番、10番、11番のプレッシャーラインを越えるまでがビルドアップ、そのプレッシャーラインの高さまで青チームのボランチも出てくるのであればそこもビルドアップに加えます。その高さを越えた後は前進のフェーズとみなします。
ちなみに、相手のファーストラインの頭上を越えてダイレクトに前進、フィニッシュメイクに移行する、ダイレクトプレーもビルドアップの場面に入れてます。
2-2. 前進
前進の定義は、グラデーションの中でも、曖昧にはなりがちなのですが、
ビルドアップ後、フィニッシュメイクに至るまで。
としてます。なので、フィニッシュメイクの定義とも密接に関わってきます。
例えば自チームの分析をする際、ビルドアップに問題があるか、前進に問題あるか、の判断は前述のように試合によります。
例えば541でブロックを敷いて守る相手に対して攻めあぐねているのであれば、どちらかといえば前進に問題があると考えます。
逆に前からのハイプレッシャーに対して、相手のプレッシャーを越えられていないのであれば、ビルドアップに問題があると考えます。
あとは選手やポジション単位で、ディフェンスラインとキーパーに焦点を当てやすいのがビルドアップ、中盤より前の選手に焦点を当てやすいのが前進のフェーズになります。
2-3. フィニッシュメイク〜フィニッシュ
フィニッシュメイクの定義をはっきりさせるには、フィニッシュの定義が関わってきますので、まとめます。
まず、フィニッシュの定義は簡単で、
クロスとシュート
です。(クロスの定義はまたピッチの分け方とも関わりややこしくなるので割愛します。)
そして、フィニッシュメイクの定義は、
フィニッシュの1個前のプレーと、ゾーン6(ゴールから20m)でのプレー
です。 わかりやすいのはアシストですね。ただクロスをアシストするのも含まれるので、時にはアシストのアシストになります。さらに、結果的にはクロスやシュートに行かなかったけど、ゾーン6(ゴールから20m)でのプレーは全て隙があればフィニッシュに行きたい意図があるので、フィニッシュメイクのプレーとしてます。
例えば、自チームの分析において、ボールは持ててる、相手陣地に押し込んでいる、相手の中盤のラインを越えたりもできている、ただシュートまでいけない、フィニッシュを作れていない、という場合、焦点はこのフィニッシュメイクに当たります。
対戦相手の分析ですと、前進したあと、結局どこからフィニッシュにもっていく傾向があるのか、また、そのキーマンは誰なのか、に焦点を当てる場合フィニッシュメイクのシーンとして分析します。
前述のように、境目は曖昧なので、前進の場面と重なるところもありますが、結局どこに焦点を当てるか、によってプレーの解釈を変えてます。
2-4. カウンター / 組織攻撃への移行
自分のカウンターの定義は、
相手陣地でボールを奪ってから、相手が組織守備に移る前にフィニッシュまでいくショートカウンター
と、
自陣でボール奪ってから、相手が組織守備に移る前にフィニッシュまでいくロングカウンター
の2つに分けています。そして、相手が組織守備に移ったかどうかの基準は各チームの選手を基準にします。
つまり、例えばこのチームのプレーモデルに対しては、ボランチのこの選手と上がったサイドバックのこの選手が戻ってしまったら組織守備とみなす、これらの選手が戻る前にフィニッシュいけばカウンターとみなす、という考え方をしています。
組織攻撃への移行の定義は、逆に、
ボールを奪ってから、相手にボールを奪われることなく、カウンターを行わなかった場合
としてます。
例えば、以下のように343で攻撃している青チームに対してボールを奪い、カウンターを仕掛ける場合
この青チーム相手の場合、両WB、両ボランチ+同サイドのシャドーで2ライン形成されるまでにフィニッシュまでいくのがカウンターであり、それができなかったかつ、ボールを失わなかった場合は組織攻撃への移行とみなします。
トランジションの場面はざっくり観てると成功と失敗が曖昧になりがちなので、相手チームの分析ならば、目的はどこを狙うか、自チームの分析ならば、どこに問題があるか、改善させるか、を明確にするため、このように定義づけています。
上の例の赤チームのカウンターを改善をさせるなら、相手のWBが戻る前に3バックの脇を突き、そこに3バックから1枚を引き出してからフィニッシュに行く狙いを明確にします。逆に戻られたら失敗とすることでチームの狙いを明確にします。
以上、ここまで攻撃に関して、どのように分割して観るか、を書いてきました。
次は守備に関して書いていきます。
3. 組織守備/攻撃から守備へのトランジション(ネガティヴトランジション)の分析
守備の分割の仕方については全て攻撃の反対としています。つまり、組織守備の4つは、
ビルドアップの守備・前進の守備・フィニッシュメイクの守備・フィニッシュの守備
で、ネガティヴトランジションの2つは、
カウンターの守備・組織守備への移行
です。
また、各フェーズの守備の定義についても、攻撃の各フェーズの定義に対して、それを守ること、としてます。
詳しく、各フェーズについて書いていきます。
3-1. ビルドアップの守備
前述のように、フェーズの定義は攻撃の定義と同じで、その守備としてるので、
ファーストプレッシャーのラインを越えて前進に移行されるまでの守備
となります。
これも、基準となるのは各チームの選手としてます。相手がどのように守備をするのか、にしても、相手のビルドアップに対して自チームの守備がどうなっているか、に関しても、基準となる選手を決めて、この選手が越えられるまではビルドアップの守備として分析する。という考え方をしています。
例えば、先ほどと同じ動画ですが、
青チームを自チームとして守備に焦点を当てると、9番、10番、11番+ボランチ1枚までをビルドアップの守備とし、そこを越えられない練習をします。
また、攻撃と同じで、ダイレクトプレーの守備もこのビルドアップの守備の中に入れています。
例えば対戦相手分析時に、相手キーパーがボールを持つとDFラインを上げてFWめがけてロングボールを蹴る、というチームであれば、それに合わせた守備をビルドアップの守備としてトレーニングすることになります。
3-2. 前進の守備
前進の守備の定義は、これまた境目は難しいですが、
ビルドアップ後、フィニッシュメイクされるまでの守備
となります。
このフィニッシュメイクも、攻撃と同じで、フィニッシュの1つ前のプレーになるので、状況によっては、攻撃側がビルドアップから前進を飛ばしてフィニッシュメイクに行ってる場面もあります。
前進の守備に焦点を当てるのは、例えば自チームのファーストプレッシャーを越えられたあと、フィニッシュメイクされるまでに簡単に自ゴールに近づかれて、自チームのDFラインがズルズル下がってしまっている場面や、サイドチェンジされている場合、よく前進の守備に問題点として焦点を当てます。
また先ほどの例でも、青チームの9番、10番、11番+ボランチ1枚を越えられた後、フィニッシュメイクされるまでは前進の守備となります。
ただ練習を作る際は、ビルドアップの守備と分けた方がいいか、つなげてやるかはチームの状況によって変わると思います。
3-3. フィニッシュメイクの守備〜
フィニッシュの守備
組織守備の最後、フィニッシュメイクの守備、フィニッシュの守備の定義です。フィニッシュの守備は、単純に
クロス、シュートに対する守備
フィニッシュメイクの守備は、
クロス、シュートの1つ前のプレーとゾーン6(自陣ゴールから20m)におけるプレーに対する守備
になります。
そのプレーがクロスなのかシュートなのか、とか、結局ラストパスになったかどうか、は結果論です。そういった場合意識するところは、各プレーの意図を重視することです。
各チーム、各選手の意図はどのようなのか。例えばとにかくアーリーでもクロスをどんどん入れてくるチームや、CBからでもどんどん相手DFラインの裏にボールを供給し、フィニッシュに行こうとするチームであれば、たとえばそれが自陣からのロングボールであっても、フィニッシュメイクとして判断する事も多くなります。
3-4. カウンターの守備 / 組織守備への移行
カウンターの守備の定義は書くまでもないですが、前述した自分で定義しているカウンターに対する守備です。
また、組織守備への移行に関しても、上に書いたように、複数選手を基準として、自チームでも相手チームでも、この選手たちが戻ってラインを作ったら組織守備への移行とみなす、としてます。
また、攻撃中のリスクマネージメントに関しても、カウンターの守備として分類しています。
こちらも組織攻撃への移行と同じ動画上で例としてみると、
まず青チームの3バックのリスクマネージメントもカウンターの守備とし、その後誰がどこに戻るか、この青チームなら、両WB、両ボランチ+同サイドのシャドーで2ライン形成されると組織守備への移行と判断します。
仮にこの青チームを自チームとするなら、もちろんプレーモデルに寄りますが、ボールを失ってからこの2ラインを早く形成する練習をしたりします。
4. 前半まとめ
今回、分析に関する記事を2回に分けて書こうと思い、前半では自分がどのようにゲームの流れを分割するか、について書いてきました。
後半は、各フェーズにおいて、どのように分析するか、何を見るか、そして自己流分析資料の作り方まで書いていこうと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます。もし気に入っていただけたらシェアしていただけると嬉しいです。
また次回、よろしくお願いします!