![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/54271469/rectangle_large_type_2_1b95ca8ab990964f41267b7f1a1c6854.jpg?width=1200)
【衝撃】Spotifyがオンラインライブを開始【業界ニュース】
個人的には非常に関心の高い分野ですので、この記事は衝撃でした。
Spotify、バーチャルにコンサートを視聴できるオンラインサイトspotify.live開設
実は、つい先日私は自分の記事の中で、「オンラインライブは答えにならない」という記事を書いたところでした。
それは「この1年やってみて、体験価値が低いことが一番の原因であり、そのことに出演者も視聴者も気づいたから」でした。
しかし、Spotifyがやるのなら可能性が出てきます。
既にアーティストをブッキングできる土台が構築されている
Spotifyは、言わずと知れたミュージックストリーミングの先駆者です。
デジタル時代のサブスクリプション(月額課金)とフリーミアム(広告が入る代わりに無料)を掛け合わせたビジネスモデルを作ったと言っても過言ではありません。
サビスクリプションというビジネスモデルそのものは、昔からありました。
新聞の定期購読もそうですし、NHKの受信料もそうです。
これとフリーミアムを組み合わせて、シェアを広げていったSpotifyのビジネスの手腕と情熱は何と言ってもアーティストに対するリスペクトと、音楽業界に対する危機感があったと思います。
このように市場のニーズと、当時売れなくなってきていたダウンロード販売に対する答えとして、このビジネスモデルを持ち込み、カタログの充実を図ることで、さらに規模を拡大していきました。
そして、今では世界トップシェアを持っているのがSpotifyなのです(2021年5月現在)。
そのSpotifyがオンラインライブを行なうと言っても、出演するアーティストにオファーしなければなりません。
一方で、アーティスト側は自分たちで発信は出来てしまいます。
アーティスト自身や所属事務所が、撮影の手配をして、オンラインライブのプラットフォームを選んで使うだけで、簡単に配信出来てしまいます。
わざわざ外部に頼んで余計な支出をしなくても、自分たちのコアな顧客を持っているアーティストは、自分自身でやった方が効率が良いわけです。
しかし、実はオンラインライブを実施するときに最も苦労するのは実は集客なのです。
コアなファンは、勿論観ますが、やはりオンラインライブの体験価値はリアルライブを下回るので、コアなファンであればあるほど満足度は低くなります(超コアなファンは観られるだけで良いのかもしれませんが…)。
ですので、オンラインライブで狙うべき顧客は「ライトなファン」なのです。
ライブ会場へ足を運んで、それも全国回って追いかけるようなファンは、最も大切にすべきです。
ファンをそこまでに育てるためには、ライブには行ってみたいけど、ちょっと怖い、とか、値段が高いと感じる、とか良い席でないと見たくない等、色々な理由でライブ会場に行かないファンをいかにして取り込むか、が大切でそのために様々なメディアを通じてアーティストの認知度を高めて、ライブの告知を行なっていくわけです。
アーティストだけでそれをやるのは、マンパワー的にも、経済的にも非常に負荷が高いのです。
そうしたときに重要になるのがプロモーションなのです。
その意味で、サブスクリプション世界トップシェアのSpotifyは最高のパートナーと言えます。
そもそも音楽が好きで、いつでも聴いていたいからサブスクリプションの会員になるわけですが、潜在的な顧客になり得ます。
さらに、Spotifyの利用者が、登録されている全てのアーティストのファンであるわけはなく、常に新しい音楽を探していて、好きなものを調べて探して聴いている、言わばライトなファンです。
アーティストがまさにターゲットにしたい顧客を持っているのがSpotifyなのです。
そして、当然視聴数のようなデータや旬なアーティスト、急上昇中の楽曲など、様々なデータに基づいて、顧客が興味を持ちそうなアーティストをピックアップすることが出来ます。
そのデータに基づいてアーティストに出演のオファーをすることが出来るのですが、アーティスト側がほしい顧客をSpotifyは持っているので、これらをブッキングすることにかけては、少なくとも他のメディアよりははるかにアドバンテージがあるのではないでしょうか。
強みを活かせる
オンラインライブはSpotifyの強みを活かせる分野です。
マーケティングデータを使ったプロモーションとして、ある個人がよく聴いているアーティストのオンラインライブの告知を入れることも出来るでしょう。
その似たようなジャンルのアーティストのオンラインライブを紹介を出すことも出来るかもしれません。
プロモーションとしてはそれだけでも確実に顧客を増やせると思いますし、さらには何と言ってもそもそもグローバルな市場を押さえているため、世界中を相手にビジネスが出来ます。
そのための素地を、今からの投資する必要なく、既に持っているのです。
これは、私が常々「日本人アーティストが海外に出るべき」と言っているその橋渡しになる強力な戦略になり得ます。
何と言ってもSpotifyはインターネットサービスですから、興味のあるアーティストであっても、わざわざ海外にまでは行けない、というファンを取り込めることにこそ強みがあります。
オンラインライブが収益的に厳しいのは、世界中に対してプロモーションする術がないからです。
しかし、単価が下がったとしても世界中からファンが観られるようになれば、それこそ一気に収益が爆増します。
これこそが、Spotifyのような企業がやるべきことであり、強みを活かせることになります。
サブスクリプションの再生数が増え、オンラインライブの視聴者数が増えた国へ、リアルライブをしに行くようになるでしょう。
私が常々言うところの海外での活動の足掛かりになる可能性があり、非常に期待できるところです。
マネタイズしやすい
これは簡単ですね。
既に決済サービスを持っているし、フリーミアムモデルで広告収入も入りやすいです。
そして、ある程度予算の予測が立てやすいのがサブスクリプションの特徴ですので、余剰資金から少しづつアーティストのギャラを決めてブッキングすることもしやすいです。
出演するアーティストにとっても、出演料(配信権料)のような形で契約しやすいでしょう。
逆に、売上のパーセンテージをSpotifyとどのように折半するか、という交渉もしやすいです。
そして決済機能や配信プラットフォーム手配などは全てSpotify側で一元管理できることも、アーティストにとっては取り組みやすい点になります。
さらに、元々広告収入を得ていたこともあり、オンラインライブ用に特別スポンサーを獲得したり、スポンサー用のスペシャルオンラインライブのような企画もやりやすくなるはずです。
これから10年でVRライブが普及していくと思いますが、そのときにここまでのプラットフォームを持っていれば、それがVRに置き換わるだけになるので、どこも太刀打ちできなくなるかもしれません。
デバイスを持っている分、Apple Musicに軍配が上がるかもしれませんし、VRの場合ゲーム開発との組み合わせも大切なので、コンテンツも持っているSonyが強いかもしれませんが、業界最大手のSpotifyからこの展開が出てきたことは、希望の兆しになるかもしれません。
もう少し時間はかかると思いますが、注意深く見守っていきたいと思います。
Spotifyに興味を持たれた方は、本も出版されていますので、是非読んでみてください。
今のスマートな形になるまでの泥臭い活動があり、手に汗握る展開が読み物としても面白い本です。
CEOのダニエル・エクのリアルな想いを感じられるとても熱い一冊で、音楽業界関係者は必読です。