文章を分かり易くにするには、なにしろ削る【テキスト】
文章を分かり易くするために☝
ここでは分かりやすい文章を書くための方法をお話します。
簡単です。
一言で言えます。
なにしろ文章は簡潔にする!
では、どのようにして簡潔にするのか説明していきますね。
① 一文をできるだけ短くする
一文とは、文を書き始めてから句点「 。 」を打つまでです。
人は文章を読む時に、句点が打たれるまでを一つの意味のかたまりとしてみます。
なので、長ければ長いほど何を伝えたいのかを理解するのに時間がかかります。
文章を書いたら、どこかに句点を打てないか確認して下さい。
◆ 悪い例文
わたしの職場では安全研修講座を受講することが義務付けられていて一年に少なくとも二回は全職員が研修を受けなくてはならいのだけれど、わたしは非常勤なので研修の告知を無視していたところ、担当者が来て非常勤でも受けてほしいって言ってきたので、仕方がないから補修を受けた。
如何ですか?
のらりくらりと長い一文でしたよね。
何が言いたいのかハッキリしません。
それに、ただの独り言に聞こえます。
そこで、
◇ 手直し文
わたしの職場では安全研修講座を受講することが義務付けられている。少なくとも一年に二回、全職員が研修を受けなくてはならない。でも、わたしは非常勤なので研修の告知を無視していた。すると担当者が来て、非常勤でも受けてほしいと言ってきた。仕方がないので補修を受けた。
どうでしょう?
このように句点をうつことで、言いたいことがハッキリと分かりますよね?
② 意味が重複している言葉を削る
感情が入っている時に書いた文章には、意味が重複している言葉が書かれている傾向があります。
言いたいことは分かるのですが、くどいと感じさせてしまいます。
◆ 悪い例文
わたしは梅雨が嫌いです。ジメジメしていて湿度が高くて鬱陶しくて気分が落ち込んでくるからです。
洗濯物も部屋に干さなくてはならなくて、室内干しの独特な嫌な臭いをかぐと、本当に嫌な気持ちになります。
それに、いきなり気温が低くなったりすることが急にあったりして、薄着で出掛けたことを後悔します。
この文章は、梅雨が嫌いだということを感情的に書いています。
本当に嫌いなんだということを伝えたいのでしょう。
でも、しつこく書くのは逆効果です。
先ほどの文から重複しているものを書きだしてみますね。
「 ジメジメ 」「 湿度が高い 」「 鬱陶しい 」
いずれも梅雨が原因で引き起こされた嫌悪感の表現です。
「 部屋に干す 」「 室内干し 」
言い回しが違うだけで同じことです。
「 嫌な 」を一文の中に二回も使っています。
「 いきなり 」と「 急に 」は類義語です。
これらを削ります。
◇ 手直し文
わたしは梅雨が嫌いです。ジメジメしていて気分が落ち込んでくるからです。
室内干しをした洗濯物は、独特な臭いがして嫌な気分になります。
それに、いきなり気温が低くなったりして、薄着で出掛けたことを後悔します。
いかがですか? さっぱりとしましたよね。
気持ちも伝わりますよね?
書く時は感情的でもかまいません。そのほうが気持ちも乗っていますから。
でも、書いたあとに落ち着いて読み返して下さい。
意味が重複している言葉を削れば分かりやすい文章になります。
③ 文と文をつなぐ言葉を削る
先にも書きましたが、一文を短くするために句点をうって文を区切ると簡潔になります。
その際に接続詞などで、前と後ろの文をつなぐことがあります。
この文をつなぐ言葉を削ることで、更に文章を簡潔にできます。
◆ 例文
どしゃ降り雨の中を二人で歩いて行くと、たどり着いたのは寂れた商店街だった。
この一文に句点を入れます。
◇ 手直し文1
どしゃ降り雨の中を二人で歩いて行った。そして、たどり着いたのは寂れた商店街だった。
このように手直しをします。
ここで考えるのは、接続詞の「 そして 」がなくても意味が通じるかどうかです。
◇ 手直し文2
どしゃ降り雨の中を二人で歩いて行った。たどり着いたのは寂れた商店街だった。
いかがですか? 意味は通じますよね?
一文だったものを二文にすると、つなぎ言葉を付けたくなります。
でも、なくても意味が通じることがよくあります。
実際に手直しをするときは例のように二段階で考える必要はありません。
句点を打って分ける時点でつなぎの言葉が必要か考えましょう。
◆ 例文
鉄板料理を出すときに、「 熱いのでお気を付けください 」と言っているのは、以前やけどをしたお客様がいたからだ。
◇ 手直し文
鉄板料理を出すときに、「 熱いのでお気を付けください 」と言っている。以前、やけどをしたお客様がいたからだ。
いかがですか?
「 それは 」は書いていなくても意味が通じますよね?
このように削ってみて下さい。
接続詞などは削れるときがあるとお話しましたが、例外もあります。
必要なつなぎ言葉について書いていきます。
順序立てて物事を説明していくとき
◆ 例文
わたしがネットビジネスを始めた理由は二つあります。
先ずは、仕事の将来性に疑問を感じていたからです。
「 これからAIの時代に突入し、人の仕事がどんどんと減っていく 」と、よく耳にします。
わたしの働いている工場でもロボットの導入を検討し始めました。
人件費の削減だそうです。
「 わたしの仕事がなくなるのも時間の問題ではないか? 」不安で仕方がありませんでした。次に、「 稼げます 」という言葉につられたからです。
工場の月給は手取り15万円です。いくらなんでも少なすぎます。
最近、恋人ができたのですが、デートは割り勘です。プレゼントを買ってあげることもできません。
たまには割り勘ではなくて、おごってあげたいし、プレゼントも買ってあげたいのです。
如何ですか?
「 先ずは 」と「 次に 」と書くことで、それぞれが理由その 1 と、その 2 だとハッキリします。
読み手に親切なので残します。
話の方向が変わる場合
削ると不親切な文になってしまうことがあります。前の文と後の文で話の方向が変わる場合は、つなぎ言葉を残します。
◆ 例文
天気予報によると、今日の降水確率は10%だ。
傘を持って出かけた。
それは、「 帰りの時間帯に夕立の可能性がある 」と祖母が言ったからだ。祖母の予感は雨曇レーダー以上なのだ。
如何ですか? 違和感ありますよね?
そこで、「 傘を持って出かけた。 」という文の前に「 だけど 」といれてみます。
また、「 それは 」は余計なので削ります。
◇ 手直し文
天気予報によると、今日の降水確率は10%だ。
だけど、傘を持って出かけた。
「 帰りの時間帯に夕立の可能性がある 」と祖母が言ったからだ。祖母の予感は雨曇レーダー以上なのだ。
いかがでしょうか?
「 でも 」「 しかし 」「 とは言え 」など、逆接のつなぎ言葉は残しましょう。
話の方向が変わったことが分かります。
④ 余計な前置きを削る
文字数をかせぐために、余計な前置きを書く人がいます。
余計な前置きは、言いたいことがぼやけてしまいます。
思い切って削りましょう。
以前、同じ職場のアルバイトで心理学部の大学生がいました。
「 『 殺意の領分 』という話を読んで主人公の心の動きを分析しなさい 」という課題に頭を抱えて「 レポートの枚数が多すぎだ 」と言っていました。
あまりにも困っていたので、前置きを伸ばす提案をして書いてあげました。(笑)
◆ 例文
私が先ず、『 殺意の領分 』というタイトルを目にして感じたのは、とても人の心の奥深くをえぐるような作品だということです。
そこで、『 領分 』という言葉に注目し、先ずはその意味を調べることから始めました。
何故、『 領分 』という言葉を用いたのか? どうして『 領域 』ではないのか? そこにこの作品の作者の意図があるのではないか? 非常に気になりました。
このような書き始めでした。
文字数をかせごうという魂胆がモロバレです。
この後ものらりくらりと書きまして、レポート 1 枚くらいはかせいだ覚えがあります。
?十年前の若気の至りですので、時効ということで。(笑)
それにしても、課題意図からずいぶん遠いところから始めています。いつになったら本題にたどり着くのでしょうか? 知りたい情報がでてこないと、読み手はイライラします。
注意して欲しいのは、自覚がないまま余計な前置きを書いてしまうことです。こうしてしまう人は、思いついたことをそのまま書きます。なにしろ書き始めることで本題への道筋をつけようとします。そして書いているうちに、なんとか本題にたどり着きます。もしくは無理矢理つなげます。
いずれにしても、分かりやすい文書にはなりません。学生の文字数かせぎなら、教授の苦笑いで済むかもしれません。でも、フェイスブックやブログなどの記事や、企画書、提案書などにおいては、伝えたいことが伝わらなくなります。苦笑いでは済みません。
書き終えたら確認して下さい。折角書いた文章でも、余計な前置きは思い切って削りましょう。
『 殺意の領分 』は 弘兼憲史さんの『 ハロー張りネズミ 』という漫画の一話です。講談社・週刊ヤングマガジン・全24巻
ではでは。
エージロー