UR(Unattended Robot)は日本に根付くか
この記事はUiPathブログ発信チャレンジ2021サマーの19日目の記事です。
どーもこんちわー(低血圧)、UiPath エバンジェリストの市川です。
今日は UR の話をします。都市再生機構でもなければウルトラレアでもない、Unattended Robot のことです。
※ やや RPA マニア向けの記事です。
AR(Attended Robot)と UR(Unattended Robot)
まず事実関係から整理していきますが、RPA には AR(Attended Robot)と UR(Unattended Robot)という2つの実行方式があります。
…大丈夫です?かね??
大丈夫です?よね??
なんでいちいち2回も確認するかというと(まぁ大事なことだから、っていうのもあるんですが)日本では AR を RPA として認めていない考え方があったり、逆に UR の存在を認めずに RPA を名乗っている考え方があるからです。
「RPA というのは AR と UR があってですね~」…という最も基本的な部分ですでにドキドキしてしまう、これが日本の RPA の実態です。
日本の RPA は、ほとんど AR(Attended Robot)
歴史的な経緯から紐解くと、RPA(Robotic Process Automation)という言葉が生まれた当時(2012)は、RPA が意味するものは UR だったと思います。
要するに、かつての AR だと Excel マクロに毛が生えたようなもので、効率も悪くセキュリティや監査、ガバナンスの観点で課題が多い。自動化を集約して実行することで、あたかも人がいて操作を代行しているようにみえるから(人のようだが人でない)ロボ(Robotic)という言葉をつけたわけですね。
かつての AR 的に、手元でチョロチョロっと実行されるものは RPA とは区別され、RDA(Robotic Desktop Automation) とか、単に Desktop Automation と言われたりしてました。
ただ一方で、
・リアルタイムな起動契機でロボットを動かしたい
・アシスタントと対話しながらロボットを動かしたい
・ロボットと人間の作業を相互に連携させ、一連の業務処理を完了したい※
というニーズ・ユースケースがあったことは事実で、ここから単なる Excel マクロ・VBA ではなく、デジタル・アシスタント的な機能を併せ持った AR が台頭してきました。
※ Human-in-the-loop と言われるケースで、厳密には Attended Robot が使われるとは限りませんが、Attended のユースケースとして扱われることがあります。
そういうわけで、海外市場は歴史的経緯もあり、RPA といえば UR が主流です。
一方で日本市場では、RPA といえば AR です。詳細の引用は避けますが、ITR のレポートとかを読むと、ご理解いただけるように思います(たぶん)。
日本では UR はサーバー型 RPA と呼ばれることもありますが、なにぶん、非主流派のためかよくわからない説明がされることがあり、UR が日本ではウルトラレアな存在であることを教えてくれます。
UR だけにな!(爆散)
AR と UR の違い
AR と UR の一番、大きな違いは実行方式ですが、それに伴って様々な特性の違いが現れます。
まずセキュリティについて。セキュリティは、意外と AR の方が考慮点が少ないかもしれません。要するに端末上で実行するプログラムなので、既存の枠組みで考えやすいと思います。一方で UR は、ロボット専用 ID の運用など、いままでにはない検討が必要になる場合があります。
次に監査・ガバナンスについて。監査は AR も UR も考慮が必要かもしれません。まぁ監査についても、従来の枠組みにあてはめちゃえばいーじゃん、という意見もあると思いますが、業務の重要性と、それに伴うガバナンスの対応状況をしっかりと整理する必要があります。ガバナンスの観点では、UR よりも AR の方が考慮事項が多いように思います。
続いて費用対効果(ROI)。これは UR に軍配が上がると思います。UR は集約して実行するため稼働率が高く、端末やライセンスに対する費用対効果が上がりやすくなります。
よく「UR のライセンスは AR の何倍もする」という意見を聞きますが、UR の稼働率は(運用にもよりますが)AR の10倍、場合によっては20倍にもなります。効果の拡大については、なかなか夢があります。
最後に難度について。こちらは UR の方が難しいと思います。サーバーを立てなきゃいけない(クラウドでもいいですが…)、UR に適した設計が必要(キューの利用など)といった技術難度に加えて、実行リソースを共有することから部門間の調整なども必要になってきます。AR のように個人に閉じた世界より、みんなで使える仕組みを考える世界の方が、難度が上がるのは明らかですね。
日本に UR は根付くか?
AR と UR の比較を簡単にしていきましたが、UR を一言でいうと、いろいろ面倒な準備が必要だが、活用できれば効果が大きいということだと思います。
日本における RPA は、身の回りのちょっとしたことを自動化して残業時間を削減する…みたいな、働き方改革ツールの文脈で扱われ、AR が主流となり、Excel マクロや VBA と比較される状態が長く続きましたが、今後はどうなるのでしょうか。
個人の意見にはなりますが、日本における UR は、もう少し普及が進むと考えています。北米の導入事例を調べていても、最初は手軽な AR からはじめ、CoE が成熟すると同時に AR+UR のハイブリッドに進化していく事例は多くあります。日本でも RPA 活用の成熟度が上がるうちに、UR の利点に気づき、難しさをクリアして UR を使うようになるのではないでしょうか。
既にそういった機運も個人的には感じるところであり、日本の RPA も2021年以降は
・UR が活用され
・Attended 的なシナリオ(Human-in-the-loop)で、さらに UR が活用され
・一方で市民開発による AR も広がっていく
といった世界が拓けていくと良いなぁ、と思います。
まとめ
・海外の RPA は UR、日本の RPA は AR
・UR は難しいが、効果は大きい
・これからは日本でも UR が拡がっていく(と良いなぁ)
最後に宣伝
普段は Web セミナーをしたり、Twitter をしたりしてます。
仕事もちゃんとしてますよ!(アピール)
7/22(木)に2回目のワクチン、うってきます。早くコロナが下火になるといいなぁ。。