その後、果たして百貨店はどうなったのか
いやあああ、
随分時間経ちましたなぁ。
前回の記事を上げてからほぼ丸3年経ったわけです。
毎日「ヒャッホーーーーーイ!」と暮らしていたら3年経っておりました。
前回の記事にはこう記しました。
「百貨店はそりゃもうここ20年くらい全力でオワコン化してるけど、
インバウンドの恩恵で何とか保ってるぜ」と・・・。
しかし、2020年にコロナがやってきた
ですよねーーーー。
時は2013年、
アベノミクスを皮切りに「円安」も進み、
一気に海外からの観光客が増えました。
「うぉーーー!日本安っす!日本なんでもくそ安っす!」
と歓喜の声を上げてくださる海外New富裕層の方々。
観光資源の豊富な大都市圏に鎮座する百貨店は
神様、仏様、外人様
インバウンドのお客様に「ハイブランド爆買い」を中心に、
買い支えていただくことで、
国内需要のマイナス分を取り返す勢いで、リーマンショックで味わった苦渋はどこへやら、あの時一旦沈み切ったかに見えた売上を戻しつつあったわけです。
日銀がETFを買い続けるように、インバウンドの需要も永遠に続くと思われました。
中の人たちも
「外人さんスゲーーーー!売上スゲーーー!!
俺スゲーーー!!」
と両手で拳を振り上げる毎日。
(とはいえ、インバウンドで売れていた商品カテゴリーは決まっていて、婦人・紳士の国内アパレルなどはリーマンショックの頃がまだ懐かしい、と思うくらいの厳しい日々が続いていました)
くるぞ!くるぞ!オリンピック!
と怪気炎を上げながら、全国各百貨店社内の会議でも、
連日「インバウンドのお客様に向けたホスピタリティ向上」について、
議論がこねくり回されていたわけです。
銀座も梅田も新宿も、準備万端さあいらっしゃい!
全ての案内看板はとっくに多言語対応、
免税承りカウンターも「バカでかく」リニューアル完了、
通訳だって増やしています。
インバウンドをお迎えする「おもてなしの元気玉」は膨れに膨れ、
今にも破裂しそうな勢い、
もう、
完全に外人カマーーーーーーーン!!
バッチこーーーーーーい!!
状態だったのです。
ところが、です。
ところが、ですよ・・・。
この有様ですよ・・・。
酷いじゃないですか・・・・。
酷く・・・ない・・・ですか・・・?
そう、日銀がある時を境にパタリと日経ETF買いをやめたように、
コロナは外国人観光客を根こそぎ刈り取ってしまったのです。
そして今、もう希望の光は見えない
内需が厳しいことくらい、
ずっと前からわかっていましたよ。
だから、賭けていたのです。
何だか知らないけど、
何なら自分たち何もやってないけど、
とりあえずシャネルとかルイ・ヴィトンを用意しておけば「バカスカ売れる」状態。
化粧品、資生堂もコーセイも、アルビオンも「過去最高売上」
優秀な取引先派遣販売員が、優れた商品を、高い販売力で「バカスカ売り捌いてくれる」状態。
パンクする免税手続きカウンターは「定年退職再雇用のおじさま」を有効活用するにはもってこい。
まともな基礎英会話一つ出来なくとも、その熟達した接客技術はテレパシーとなって「言葉の壁を超えて」海外観光客の満足度を爆上げしていたとかいないとか。
しかし、
しかし、この、数十年に一度あるかないか、
バブル期以来の「ヘブン状態」は突如として終わりを告げたのです。
「インバウンド需要がある限り、百貨店は永遠に不滅です!!」
これは、
インバウンドバブル真っ只中に百貨店で働いていた私自身もそう思っていました。
しかし、イ、イ、インバウンドが無いっっ!!!!???
無理だよ・・・。
そんなの・・・無理だよ・・・。
百貨店、どれだけ維持費に金かかってると思ってるのよ?
売上上がらなければそもそも「テナント」が続かないのよ?
社員だけであの「バカでかい建物振り回す」とか不可能なのよ?
ちなみに、ですが、
昨今の百貨店インバウンドバブルを支えていた海外ハイブランドさん達の業績はどうか、と言えば、
ルイ・ヴィトンもシャネルもグッチも、
このコロナ禍にあっても「めちゃくちゃ売上・利益爆増」しております笑
VMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン グループ(以下、LVMH)が、2021年度上半期の決算を発表した。売上高は286億6500万ユーロ(約3兆7278億円)で前年同期比56%増、2019年同期比14%増と好成績を収めた。また、純利益は52億8900万ユーロ(約6878億円)を計上。前年同期から10倍、2019年同期でも62%増の伸び率を示し、第1四半期に続いてコロナ以前よりも好調な業績となった。
(詳細以下の記事ご覧ください。)
何やねーーーん!コロナ前の62%増って、
何やねーーーーん!!
つまり、彼らにとっては
「別に日本の百貨店がコケても別に痛くも痒くもない」
と言うことです。はい。
残念ながら、そう言うことです。
お金持ちは世界中にいて、
これだけコロナ対策よろしく、低金利で市場にお金がばら撒かれたら、
お金持ちは「ハイブランド」をネットでも買うのです。余裕で買うのです。
みんなネットで買うのです。
あんなに銀座・日本橋・梅田・新宿ほか各百貨店店の「超一等地を占拠」しておきながら、「苦しいのは百貨店だけ」なんて!!
百貨店が今後リニューアルとか、出店交渉する際は、
さらに深々と「ハイブランド」に頭を下げる未来しか見えません。
もう、地面に頭入っちゃうんじゃないかって勢いです。
そうは言っても営業をしないわけにはいかない
このコロナ禍いつまで続くのでしょうか。
問題は「完全にそこ」です。
昔のように誰もが自由に移動、旅行出来る状況にならない限り、
百貨店は今のままの経営を続けることは不可能でしょう。
もしまたインバウンドが復活すれば「ヘブン状態」は約束されているはずなのに!
だからと言って、
このまま手をこまねいていて良いはずがありません。
どうにか、
少しでも新しい、面白い売場を、商品を用意して、
少しでも多くのお客様に足を運んでいただくほかありませんし、
オンラインショッピングの世界でも利益が出せる状態にならなくてはいけません。
ここで私が、
「こうすれば良くなる」なんてことを言えるはずがありません。
世の中の流通コンサルとかマーケターは百貨店についても色々言いますが、
そんな簡単に改善したら、25年もオワコンが続くわけがないのです。
百貨店のオワコンぶりを舐めないでもらいたい。
「構造的に根源的にオワコン」なのですから、
インバウンドのような神風が吹かない限り救われることはないのです。
この不可逆未曾有のオワコンループを脱却するには、
基本的には百貨店を辞める以外、道はないようです。
どうやらそれに気が付いてしまった、
いくつかの百貨店は「百貨店であることを辞めました(もしくは辞めます)」
さすがは鉄道会社系です。
1960年代頃、鉄道のターミナル駅に百貨店があることは「ステータス」であり、
トレンドでした。
あの頃は「百貨店が必要とされていた」のです。
モノが今みたいに溢れていなかった時代、百貨店は庶民にとっても唯一無二の娯楽であり、贅沢の象徴でした。
ですから、鉄道会社はこぞって皆自前で「百貨店」を作ったのです。
あくまで、時代と顧客(と株主)が求めることに対応するのが鉄道会社の事業のテーマであり、百貨店業を続けることがテーマではないのです。
彼らは、「時代と顧客(と株主)は百貨店を必要としなくなった」と判断したのでしょう。
今、庶民は百貨店のモノなんて高くて買えません。
私も庶民ですから当然買えませんよ。
で、
小田急、百貨店やめるってよ
と相成りました。
一時的な「閉店」で、再開発後の新ビルにて復活する、
と言う巷の声もありますが、
まあ、無いでしょうね。
個人的な見解にはなりますが、今後百貨店が復活することは「未定」なんてプレスリリースに書いている時点であり得ないと思います。
もし復活することがあるならば、
「絶対復活するからな!待っててくれよな!」
ってあらかじめ言いますよ、普通なら。
客商売ですからね。
未だかつて「新しくなって再登場」が決まっているコンテンツが、
その旨をインフォメーションしないことありました?
少なくとも年間数百億単位で売上を上げている店には数十万単位の顧客がいます。
商売を続けるならば「みすみすお客様を逃すこと」は全力で避ける筈です。
まともな経営者なら絶対にそうすると思います。
ひとりだってお客様を離さないための最善手を打たない時点で百貨店業態のままの復活は無い、と予想します。
新宿の基幹店でさえ「百貨店」ではいられない現実
これは「コロナ」だけのせいなのでしょうか。
私自身、長年百貨店業界に身を置き、
良い時(はほぼなし)悪い時を過ごしてきました。
2013年からのインバウンドバブル黎明期からピーク期を真横で見てきました。
その私が敢えて言います。
百貨店がそのオワコン化から脱却出来ないのは、
決して「コロナ」だけが原因ではありません。
先ほども言いました。
「構造的且つ根源的なビジネスモデルの問題」なのです。
そしてその中身は多くの方が言っている通りです。
商品粗利益率の割にコストが高い。
それを補う条件は「売上が一定量を超えること」のみ。
この一定量以上の売上を担保するものが、
減少著しい「日本の国内需要」だけである時点で苦難しかないことは、
火を見るよりも明らかなのです。
え?自分達で利益率の高い商品作れ?
出来ません。
え?国内厳しいなら海外に販路を持て?
出来ません。
なぜ出来ないかについてはまた次回。
ここまでお読みくださいましてありがとうございました。
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