2024/8/29 渋谷SUPER DOMMUNEでのT-POP DJの記録
T-POP探検家としての活動はラジオ出演の他、主にブログ「STUDIO MUSHROOM IRON」 で 行なっているのだが、DJとしてフロアに立った事が3回ほどあり、どんな曲を回したのか書き残しておこうと思い立ってあまり更新しないここ(note)を活用する事にした。
「DJとして」とか書いちゃった。あぁ恥ずかしい。T-POP探検家になった経緯もかなり変わってるけどDJ(みたいなもの)になった経緯だって相当おかしい。
DJをはじめたいきさつ
最初はTELEx TELEXsの初来日公演@青山「月見ル君想フ」だった。
2019年のサマソニ出演で来日する彼らが、サマソニの2日前に日本着だからそのまま当日夜ライブやってもらおう!という僕の思い付きと関係各所への提案が実現してしまったのだ。
「月見ル」の人に開演前のDJやってください、と言われて経験も無いのに「はーい」と返事してしまい、慌ててDJについてネットで調べ始めた。Serato DJ Lite対応のそろばんサイズのDJコントローラーを10日前に買って練習して、当日は初めて見るPioneerのCDJとDJミキサーを使った。どうかしている。事故らなかったのは奇跡だ。
もっとも、楽器を趣味にしているからキーを聴き取って合わせるのは得意だし、「Cメロの後のサビ終わりのフレーズ4小節目3拍目裏で次の曲再生」みたいなのも演奏と同じ感覚が応用できたのは良かった。109人のお客さんが目の前にいる状況でT-POPを1時間かけ続けたのは、普段のラジオ放送と違いリアルタイムで反応が返ってきて濃密な感じがした。
自分の部屋でひとりこっそりプレイを繰り返しても一向に経験値が増えてる気はしないが、それでもDJは楽しい。これはこれでT-POP紹介の手段として取り組んでいきたいが、まずは地元の行きつけのライブハウスのバータイムなんかでもっと修行して・・・とか思っていたら2回目は今は無き「du cafe新宿」に、そして今回の渋谷SUPER DOMMUNEに招かれた。
https://www.dommune.com/streamings/2024/082901/ (当日のイベント詳細ページ)
T-POPについて定期的に取り上げてくれているQuick Japanの編集さんを司会に、タイ文学の翻訳やタイドラマ俳優の来日イベントでの同時通訳などで知られる福冨渉さん、視点と言語感覚が斬新で最近タイに興味ありなミュージシャンxiangyuさんをゲストにお迎えしてタイカルチャーについて話そう、というイベントだ。僕は企画段階から参加して出演者候補リストも見ていたので、福冨さんの出演が決まった時点で満員御礼間違いなしだと思った(実際そうなった)。
さらに僕のT-POP先輩でありDJ活動も豊富なchueさんも同席だ。実に心強い。実際彼のDJタイムは本当に素晴らしくて朝までやってくれと思った。
chueさんのセトリもnoteで公開されている。
ではchueさんにならって僕もセトリを書いていこう。ちなみに第一部(T-POP)と福冨さん登場の第二部(タイ映画/ドラマ・文学)を繋ぐDJが僕だったから「T-POPらしさあふれるものから徐々にクールダウンしてタイ映画に着地できるようにしよう」と考えた。BPM130で始まってBPM70まで落ちる展開になっている。
smallroom 005 mini-mart / 19:00
TVの夜7時のニュースのオープニング音楽としてsmallroomが制作したジングル。4EVEのフォトブック(太田出版)の発売告知をトップニュースとして報じる、みたいな隠れたしかけだった。
4EVE / Situationship
MVは日本で撮影され、前述のフォトブック「4EVE in Tokyo おもいでトリップ!」はそのドキュメントとなった。「カラフルで、親しみやすくて、底抜けに楽しい」4EVEの印象こそ、T-POPを象徴するイメージになっていると思う。
Chucheewa / Do You Mind?
彼女が作曲したFWENDSの「Can't You See」はImage Suthitaによるカヴァーでタイ映画「バッド・ジーニアス」主題歌になった。こちらの曲ではCyndi Seuiのアレンジによるブリブリなシンセベースが効いていてフロア向きかな、と思って入れた。
Miracle / QRRA
この曲は権利関係が複雑なのか、日本ではApple MusicでもSpotifyでも聴く事ができない。会場でかけるそばからShazamしてた人たちも「え~?!なんで?」と思ったはずだ。ラジオ番組でかけるためにグループのプロデューサーに直談判して音源ファイルを入手した僕からの、ご来場の皆さんへのお礼のボーナストラックだった。
QUADLIPS / Overdrive
イントロのギターカッティングと、フィルターが開いてゆく歌入り、弾むベースラインが何もしなくてもDJっぽく繋がるので便利。本当に何もせずカットインで繋げた。というか家から持ってきたそろばんDJコントローラー(Numark DJ2GO2 Touch)だからフィルターやEQノブなんてないのだ。時々DJミキサー側のEQを使わせてもらった。どうかしている。
BowImm / Present Simple Love
QUADLIPSの曲を倍テンポで捉えて、この曲で違和感なく体感BPMを半分に落とした(リズムをゆったり取るとBPM56)。けだるい声と相まっていきなりチルい。大好き。
POLYCAT / Lauren
ガールポップが5曲続いたのでPOLYCATで場面転換。80年代サウンドを得意とするバンドで、Starship「Nothing's Gonna Stop Us Now」とかポリス「見つめていたい」のパーツを散りばめてある。サックスやスネアの音色とかも80年代。
Billkin / Please Please
第二部開幕の時間も近付いているので、タイドラマ繋がりで人気俳優Billkinの曲を選んだ。マジ名曲。T-POPの括りだけじゃなく良質なポップスとして世界で聴かれるべき。
Hers / It's A Match
大胆な自由恋愛ソングなのになぜこんなに慎ましく自然でロマンティックなのか・・・。3人のハーモニーとエンディングのストリングスのシーケンスフレーズで毎回落涙してしまうので、皆もそうだといいなーとか思いながらかけた。
Neptember / Never Ending Rain
締めくくりは、存在しない映画のサウンドトラックのような曲。福冨さんこの後どうぞよろしくお願いします!という気持ちだった。冒頭の4EVEがT-POPの具体例としては最適な1曲だけど、もちろんそれ以外にこうしたジャンル(Neptemberはチェンバー・ポップとオルタナティブ・フォークの影響と言っている)を追求するアーティストや、それを支持するファンがいる。T-POPがタイ国内でも盛り上がる中、それ一色に塗りつぶされずに他のものも愛され、存在できるタイのオープンマインド。だからこうして歌詞がタイ語で書かれていなくても、これもまたT-POPだと思う。
後日談
この日のイベントは台風10号接近による雨模様にもかかわらず満員で、配信試聴数も海外含め6000を超えたと聞く。僕の恥ずかしいDJ姿も世界に広まっちゃったけど6000人にT-POPが届いたならOKだ。
OKじゃなかったのは翌日以降で、見事に新幹線は全線運休して僕は愛知県に帰れなくなった。ホテルから外出する気分でもない。3泊延長して、ただひたすら部屋にいた。
3回も立派な場所でDJをさせてもらったが、他のDJの皆さんが美味しい魚をきちんと料理し美しく盛り付けて出すレストランだとすれば、僕は「切り身しか出てこないけど魚は全部珍しい」みたいな、ネタだけで勝負するタイプの変な店だと思い知った。
自分の腕も機材も見劣りしまくりだし、調子に乗ってはいけないが、少しは欲を出してもいいだろう。これからも隙あらば図々しく乗り込んでいってT-POPかけまくるんだ!と決意した。
とりあえずジョンピーチさんのYouTubeを見てDJについて何も知らないのを再確認したり次に買うべきDJコントローラーはどれだ?と悩みまくったりしている。