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『人事を尽くして天命を待つ』ビジネスにおけるタイミングの極意【キンコン西野】

このnoteは2024年10月16日のvoicyの音源、『CHIMNEY TOWN 公式BLOG』の内容をもとに作成したものです。


 
 

時代から出遅れてもダメだし、時代より早すぎてもダメ

 
どんなに斬新で、どんなに鮮やかな打ち手でも、タイミングを間違うと何にもなりません。
特に「サービスをリリースするタイミング」なんて、時代から出遅れてもダメだし、時代より早すぎてもダメで、基本一発勝負だから、打ち出すタイミングというのは本当に慎重に探らなきゃいけない。
 
「人事を尽くして天命を待つ」という言葉がありますが、勝負事は本当にこの言葉に集約していて、僕の場合、絵本にしても、ミュージカルにしても、映画にしても、とにかく「徹底的に準備をして、弓矢を構え、頃合いを見計らって、一気にブチ込む」ということをよくやっています。
 
ビジネス書とかは分かりやすくて、ありがたいことに僕のビジネス書は10万部~30万部ぐらいがコンスタントに売れるので、お話はたくさんいただくのですが「いや、まだっす!今じゃないっす!」とよく言っています。
 
逆に『夢と金』というビジネス書を出した時は「今です!」というタイミングだったので、こちらに関しては超タイミング先行で、一文字も書いていないうちにタイトルだけを決めてAmazonで予約を開始しました。
 
あの時は、コロナ禍からずっと続いていた「頑張っても無駄」という響きを纏った嘲笑や破壊ブームが翳りを見せ始めていた頃で、「いや、ゴタゴタ言ってねぇで、根性でやるしかなくね?」みたいな芽が出始めていたので、一気に攻めました。
 
 

タイミングと同じぐらい大事なのが「一気に攻め込める体勢」

 
とにもかくにも勝負事はタイミングが大事なのですが、それと同じぐらい大事なのが「タイミングが来た時に一気に攻め込める体勢を作っておくこと」も大事で、まさに『人事を尽くして天命を待つ』というやつです。
 
周りの人達の戦いを見ていると、「タイミングの重要性」は把握していても、この「一気に攻め込める体勢を作っておく」ということができていない人が結構いるイメージです。
 
外堀から話していくので、少しジレッたいかもしれませんが、「結果を急ぐあまり(不安を消そうとするあまり)Aという手を打ったはいいが、それによってBという手を打てなくなってしまい、勝負のタイミングがやってきた時にBが出せない」みたいなことがあるんです。
 
たとえば、「ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』を作る」となった時に、チケット代の売上だけでは回収することができないお金がかかることは目に見えているわけで、この時、多くのプレイヤーが「助成金」を取りに行くんです。
 
それ自体は悪いことじゃないのですが、助成金の中にはかなり「決まりごと」の多い助成金があって、「これと、これと、これを、いついつまでに提出してください」みたいなのがあるんです。
 
これは映画の製作委員会とかでも同じなのですが、「お金を出していただけるかわりに、口も出されちゃう」みたいなのがあって(僕は徹底的に断っていますが)、要するに助成金であろうが、製作委員会であろうが、コンテンツの中身や方針が軽く人質に取られちゃうんですね。
 
演劇やミュージカルで大手事務所の大物スターをキャスティングすると、ある一定の集客やクオリティーは見込めますが、「これとこれとこれは辞めてください」と事務所から言われちゃう。
 
会社で言うところの株主になられちゃうんですね。
 
これまでは、そういった人質を取られてもプラスになることが多かったから、皆、何も疑わずに「大物スター様、あざーす!」とやっているのですが、そこには、「裏側撮影NGの大物俳優さん」をキャスティングしちゃった時点で密着ドキュメンタリーが作れなくなるというトレードオフが潜んでいて、下手すりゃ「裏側撮影NGの大物俳優さんよりも、裏側撮影OKの無名俳優さんの方が集客もできるし、クオリティーも高い」という場合がある。
 
密着ドキュメンタリーがバズったら尚のこと。
 
 

「可能性を残しておく」ということ

 
この時の『人事を尽くして天命を待つ』の正解は、「密着ドキュメンタリーがバズる保証はないけれど、バズる可能性が僅かにあるから、とりあえず、裏側撮影NGの俳優さんはキャスティングしない」として、可能性を残しておくことです。
 
もちろん、裏側撮影NGの俳優さんをキャスティングすることで客席が全て埋まるのならば、それはそれでキャスティングしちゃってもいいのかもしれません。
 
ですが、大きな勝負になってくると、そういうことってあんまり無いんです。
 
とくに今の時代は「キムタクをキャスティングしときゃ映画がヒットする」みたいなことは無いんです。
 
分かりやすいのはコマ撮り短編映画『ボトルジョージ』で、『ボトルジョージ』は製作に1億4000万円ほどかかっているんです。
 
会社としては当然、この1億4000万円の回収を考えるわけですが、この時、多くのチームが回収を焦るあまり(不安を消したいあまり)に、DVD化したり、配信サービスに配信の権利を売ったりするんです。
 
ただ、DVDをどれだけ売ったところで、配信の権利を売ったところで、1億4000万円は絶対に回収できない。
 
それは確定しているんです。
 
一方で僕は今、シャレ半分本気半分で「『ボトルジョージ』というアニメーション作品を額縁に入れて1点モノのアート作品として販売する」ということも考えておりまして、コッチだと、これからの映画祭の結果次第で回収の可能性はワンチャンあるんですね。
 
実際にやるかやらないかはまだ分からないけれど、アート作品として出すからには「世界に1個」だから価値があるわけで、DVDや配信で皆が『ボトルジョージ』を持っていたら、そもそも「アート作品として出す」という選択肢が消えてしまう。
 
「確実に目的地に届かないルートAを選ぶか、
目的地に届くかもしれないルートBを選ぶ為に、ルートAを捨てるか?」
 
という話です。
 
こればっかりはケースバイケースで正解は無いのですが、これまでの慣習から、盲目的にルートAを選んでいる人が多いので、「ちょっと待って。それ大丈夫っすか?」という西野からの注意喚起でございました。
 
 

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