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歌舞伎の事情と、ストーリーの事情

おはようございます。
歌舞伎の制作を進めつつ、映画のアメリカ公開の話も進めているキングコング西野こと「完全に世界で活躍しているヤツ」です。

さて。
今日は『歌舞伎の事情と、ストーリーの事情』というテーマでお話しします。

今日の話はクリエイティブに全振りしているのですが、少し踏み込んだ内容になっているので、今日の記事は一年後も公開しないでください。

ここから先はサロンメンバーさん以外、ナイショです。
「歌舞伎の台本制作には、こんな事情があるよー」というような話です。

一歩前に進んだよ

演出チームの方からストーリーが半分ちかく変わった訂正台本が送られてきた事件を受けて、めげない西野は今日も脚本執筆に明け暮れています。

昨日、たくさんの方から励ましのコメントをいただいたのですが(ありがとうございます!)、くれぐれも言っておきますが、昨日の記事は愚痴でもなく、「面白くなかったら、ストーリーを半分近く変えた演出チームの責任ですよ」といった予防線を張っているわけでもなく、シンプルに「変えられちゃったけど、ここで折れないし、最終的にはクオリティーでブン殴るし、おもんなかったら僕の責任です」という宣戦布告です。

あいかわらず、トンネルは抜け出せていないのですが、今朝、大きく一歩進みました。
夜に演出チームに提案して、首を縦に振らなかったら、クオリティーでブン殴るのではなくて、物理的にブン殴ってやろうと思っています。

昨夜は遅くまで海老蔵さんとやりとりをして、今日も朝から海老蔵さんと長電話。
作品にかける彼の想いは本物なので、なんとしてでも勝たせてあげたいです。

さて。

そんな中、今日は歌舞伎版プペルの魅せ方…具体的に言うと、絵本や映画やミュージカルと明らかに違うストーリー展開について、皆さんと共有しておきたいと思います。

歌舞伎ファンは歌舞伎役者を観に来ている


映画やミュージカルが凄く分かりやすいと思うのですが、ストーリーの背骨としてあるのは、「ルビッチの成長」で、ずっと声をあげることができなかったルビッチが、ラストシーンで勇気を振り絞って声をあげ、その叫びに“ほだされる”ように、「これまで声をあげられなかった人達」が一人、また一人と声を上げます。

「キッカケを与えたのがプペルで、ファーストペンギンになったのがルビッチ。そして続く町の人達」という構図です。

ストーリーを前面に押し出すなら、きっとこの形が理想だと思うのですが、歌舞伎は「歌舞伎役者を観に行くエンタメ(といっても過言ではない)」で、今回の場合だと、市川海老蔵が一番イイ感じに見えるようにストーリーを組まなければなりません。

つまり、「勇気を振り絞って声をあげた子供に寄り添うゴミ人間」じゃ足りないんです。

#伝わってます
#届け
#この想い

「歌舞伎役者ファースト」という方向性に関しては最初から大賛成で、その規制があるから、映画やミュージカルとは全く別のものが書きあがるんだろうなぁと胸を踊らせ、筆を執りました。

さて。

そうなってくると、ラストシーンは「ルビッチが声をあげて、勇気の感染が拡がる」ではなく、「ゴミ人間(市川海老蔵)が権力に立ち向かう」になります。

ただ、ゴミ人間は歌舞伎でもあの調子のナヨナヨキャラで、とても権力に立ち向かうタマじゃありません。
プペルだと、似合わないんです。

演出チームから届いた訂正台本には「待て待てまてぇーい。このプペルが来たからにぁ~」とあったので、「ふざけるな。真面目にやれ」と一蹴しました。

睨みをきかせて、見得をきるプペルは、プペルじゃないじゃん(笑)

「歌舞伎として成立させなきゃいけない」を優先しすぎて、キャラクターを整合性をブッ潰すのであれば、そもそも原作モノに手を出すなよ…という話で、ここは「歌舞伎に期待されているもの」と「ストーリー(キャラクター像)」を両立させなきゃいけません。

今、この話を聞いて、「いや、それはそうしてくれないとコッチ(お客)も困るんだけど、とは言え、『プペルが権力に立ち向かう』って、どうやって表現するの?」と思っている方は少なくないと思います。

御安心ください。
ここではまだお話しできませんが、ビックリするぐらいの大正解を(今朝)叩き出しました。

今度の新作歌舞伎『プペル ~天明の護美人間~』は、こういった「歌舞伎役者を前面に出さなきゃいけないけど、それをそのままやっちゃうと、ストーリーとキャラが破綻してしまう」という裏事情を踏まえて、そこに対して西野がどんなアンサーを出すのか?も期待して観ていただけると嬉しいです。

一つ嬉しいニュースとしては、これは「ストーリーが半分以上変わってたよ事件」が無かったら辿り着いていなかった答えで、結果的に、前より全然良くなっている。

月並みですが、トラブルをプラスにするもマイナスにするも自分次第だなぁと思いました。

昨日は、なんか心配させちゃってごめんなさい。
毎日大変だけど、僕は今日も頑張ってます。

あなたも頑張って。

現場からは以上でーーす。

【追伸】
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このnoteは2021年12月2日のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』への投稿をもとに作成しています。

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