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思いついて(想像して)もらうまでに費やすコスト

おはようございます。
今朝7時に実花さんのMV(プペル)が公開されてからというもの、嬉しくて、すでに20回ぐらいは観ているのですが、よくよく考えてみたら、公開前に嬉しくて70回ぐらい観ていたキングコング西野です。
#別腹なのよ
#おだまり

さて。
今日は『思いついて(想像して)もらうまでに費やすコスト』というテーマでお話ししたいと思います。

エンタメを軸に話しますが、これは全てのサービス業に共通するテーマなので、是非、全身全霊で熟読してください。

思いついてもらわないと始まらない

現在連載中の『ゴミ人間』でも書きましたが、「お客さんに思いついてもらわないと見つからない」というのがサービスの理です。

いつかCDジャケットを手掛ける人になりたいと願っていたイラストレーターの中村佑介さんは、ひたすら正方形のイラストを描き続け、「このイラスト、CDジャケットに使えるんじゃない?」と音楽関係者に思いついてもらったことで、アジアン・カンフー・ジェネレーションのCDジャケットを手掛けるようになったそうです。

もし、世に出る前の中村さんが長方形のイラストを描いていたら、今の中村さんの活躍は無かったかもしれません。

ONE MEDIA代表の明石ガクトさんは、「仕事を取りたいのならば、#(ハッシュタグ)を取ることが何よりも大切」と言います。
これも、中村さんの戦略と同じ意味です。

『革命のファンファーレ』という書籍を出す時、僕らは明らかに「#革命」を取りにいきました。
革命のアイコンになるべく、表紙で着ているシャツは「赤色」、そして背景も「赤色」です。
『革命のファンファーレ』を出した直後から、講演会の依頼が殺到しました。
先方さんから提案された講演テーマは「美容革命」「不動産革命」「教育革命」……などなど。

その業界の古い“しきたり”に疑問を持った次世代が、こぞって、現代の革命家・キンコン西野をキャスティングしました。
これは、たまたま発生した流れではなく、「革命といえば……」で思いついてもらう為に、戦略的にコストを割いたから生まれた流れです。

SHOWROOMの前田さんでいうところの「#メモ」です。
彼は「#メモ」を取るために、テレビ出演する際にメモ帳を持参します。
とても正しい戦略だと思います。

これによって、「メモ」をテーマにした企画&キャスティング会議では、前田さんの名前が真っ先に挙がります。

「異端者」である幻冬舎の箕輪さんは、ハイボールを片手にステージに登壇しますが、楽屋でもハイボールを呑まれているので、戦略もヘッタクレもない、ただのアル中だと思います。
#絶対に一緒にしないでください

ポイントは、「たまたま思いついてもらったわけではなくて、思いついてもらう為のコストを割いている」という点です。

想像してもらわないと予算は集まらない

キンコン西野のクラウドファンディングの支援総額は4億円を超えているそうです。
ここから察するに、どうやら僕はクラウドファンディングが上手いらしいのですが、どっこい、過去には思うように支援が集まらなかった企画があります。

最も苦戦した企画は、(今では考えられませんが)絵本『えんとつ町のプペル』の制作費を募った回です。

このプロジェクトには、最終的には1000万円の支援が集まりましたが、支援というよりも(支援もありましたが)、その多くは「西野の給料」でした。
感覚でいうと、1500万円分ほど働きました。
#支援してくださった方には心から感謝しています

『えんとつ町のプペル』のことなんて誰も知らなかった当時、何をトチ狂ったか「今度は分業制で作ります」と言い出した西野には、さすがにファンの皆様も呆れ顔。
「分業制?」「いやいや、黒のボールペン1本で描く貴方の絵本が好きなんですけど」といった御意見をたくさん頂戴しました。

クラウドファンディングを立ち上げて、これから分業制で作る『えんとつ町のプペル』という絵本が、どれだけ凄い事件なのかを何度プレゼンしても、まったく刺さりません。

結局、僕のプレゼンは最後まで刺さらないまま、半ば強引に目標金額を達成させて、とりあえず、分業制で1ページ分を作ってみました。

その1ページを披露して、再度、『えんとつ町のプペル』のクラウドファンディングを実施したところ、今度は、とくにプレゼンもしていないのに、もの凄いスピードで支援が集まり、最終的には支援額は4600万円を超えました。

ここから読み取れる答えは「お客さん(支援者)は、完成が想像できないものには、お金を出さない」ということ。

僕の打ち手としては、いきなりクラウドファンディングを立ち上げるのではなく、自腹で(キチンとコストを割いて)分業制で絵を一枚だけでも用意して「お客さんが完成を想像できる状態で」クラウドファンディングを立ち上げるのが正解だったのでしょう。

たった、これだけのことで、集まる予算が多きく変わります。
#プレゼン資料って大事だね

ポイントは、「想像してくれることを期待するのではなくて、想像してもらう為のコストを割く」という点です。

5分のMVに5000万円をかけた理由

今朝、公開された蜷川実花監督のMVはご覧いただけましたでしょうか?
まだ観られていない方は、「ドラマバージョン」と「ダンスバージョン」があるので、是非、二本とも観てください。
本当に最高なんです。

【ダンスバージョン】

MVの中身について、実花さんの方から「『今度のMVは、蜷川実花が作ったミュージカル【えんとつ町のプペル】を観に行く』という設定にしようかと思うんだけど、どうかな?」という話をいただいた時に、「その設定だと、おもくそ予算をかけられる!」と黒西野が算盤をはじきました。

「『えんとつ町のプペル』のミュージカルを観に行く」という内容のMVを世に出した時点で、「これ、本当にミュージカル化した方がいいんじゃないの?」「ていうか、プペルは実写化した方がいいんじゃないの?」と“思いついてくれる人”が大量に生まれるからです。

そして、実花さんが作り上げた5分間の世界を観れば、90分(実写映画一本分)の完成形を想像してくれる人が生まれます。

事実、撮影現場に居合わせた「電通よりの偉い人」から、「これ、ハリウッドに持っていって実写化しましょうよ」という声をかけられました。
思いつかれたし、想像されたわけですね。

つまり、今度のMVに費やした予算を因数分解すると、そこには『映画えんとつ町のプペルの宣伝費』の他に、『ミュージカル&実写映画化を思いついてもらう(想像してもらう)代』があって、ハリウッドで実写映画となると制作費100億という規模になってくるので、それを掴む為の経費としては安すぎる。

気をつけなきゃいけないのは、「思いついてもらう」「想像してもらう」にはキチンと落とし穴があって、そこで予算をケチって、ショボいモノを見せてしまうと、「えんとつ町のプペルをミュージカルにしても、こんなもんだよね……」「えんとつ町のプペルを実写化しても、こんなもんだよね……」といった感じで、自らの息の根を止めてしまいかねないので、変な話ですが、思いつかれてしまう(想像されてしまう)時は、全力でコストをかけた方がいいと思います。

ひとつ確かなことは、今回のMVのあの圧倒的クオリティーが、現在進行中のブロードウェイミュージカルの追い風になった(予算が集まりやすくなったし、「生で観たい」という気分が高まった)ことは間違いないので、近々、ミュージカルチームは蜷川神社にお参りにいってください。
#どこにあるの

今日の話を一言でまとめると……「思いついてもらう為のコスト(時間、洋服、髪型、小道具、予算)は必要経費だからケチっちゃダメだよ」です。
あとは、「そもそも、『思いついてもらうコスト』のことを頭に入れておかなきゃダメだよ」です、
#二言やないかい

現場からは以上でーす。

【追伸】
サロン記事の感想を呟かれる際は、文章の最後に『salon.jp/nishino』を付けて《本垢》で呟いていただけると、西野がネコのようになつく場合があります。

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2020年12月25日公開!
映画『えんとつ町のプペル』
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このnoteは2020年10月31日のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』への投稿をもとに作成しています。


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