ターゲットの隣にいる人を想像しろ
地球環境のことを考える若者が「牛のゲップは地球温暖化を進めるから、私は牛を食べない」と言っているのを聞いて(@けんすうサロン)、「牛のゲップが地球温暖化を進めるのであれば、むしろ、積極的に牛を食べた方がいいだろ」と思ったキングコング西野です。
#なんでゲップチャンスを残してるんだよ
#そんなことより
#牛って美味しいよね
さて。
今日は『ターゲットの隣にいる人を想像しろ』というテーマでお話ししたいと思います。
どのお仕事にも転用できる話なので、耳の穴かっぽじって聞きやがれ。
作品の中に「エロ」と「グロ」を入れない西野先生
ご存知の方も多いかとは思いますが、僕は自分の作品の中に「エロ」と「グロ」、ついでに言うと「萌えキャラ」を入れません。
理由は二つあって…一つ目は、「そもそも興味がない」ということ。
「見返り」を前提とした『恋』よりも、無償の『愛』が好きで、「親子愛」なんかは大好きで、「キスシーン」が苦手です。
「観る分」には何とも思わないのですが、「作る」となると、やはり抵抗があって、自分の中にそういったものに対する憧れがないので、どうにもこうにも描けません。
たまたまルックスが良かったので助かっていますが、中身は完全に『モテない男(from川西)』で、「乗り物」や「工場」や「蒸気」や「洞窟」や「パッチワーク(ツギハギ感)」「星空」に強い興味を持っています。
『えんとつ町のプペル』は、僕の「大好き」だけが詰まっているので、「恋愛」や「萌えキャラ」や「血渋き」が入ってきません。
「そもそも興味がない」というのが一つ目の理由。
まぁ、これが理由のほとんどを占めています。
#くれぐれも作品を否定しているわけではありません
作品の中に「エロ」や「グロ」や「萌えキャラ」を入れない二つ目の理由が今日の主題で、これはどちらかというと、ビジネス(マーケティング)的な話です。
父ちゃんは「自分の好きなモノ」を選べていたのか?
ある時、僕の父ちゃんのことを想像してみました。
「僕の父ちゃんは、自分の好きなモノにアクセスできていたのだろうか?」という疑問です。
当時は、スマホもパソコンもありませんから、家族皆で一台のテレビを囲んでいました。
チャンネル権はバラバラで、僕が観る番組を決めることもあったのですが、ドラマ『家なき子』にチャンネルを合わせた時に、「安達祐実が好きなんやぁ~ww」と家族から囃されて、バチクソ面倒だったことを覚えています。
ぶっちゃけ安達祐実さんは全然タイプじゃないし(#失礼だろ)、それでいったら隣のクラスの女子の方が100万倍タイプで、僕は純粋に『家なき子』のストーリーを観ていたのですが……家族はバカみたいな顔をして(実際にバカだけど)、「安達祐実が好きなんやぁ~ww」とイジッてきました。
「いや、マジで好きでも何でもないんだけど…」と言えば言うほど、深みにハマるパターンです。
「面倒くせぇなぁ」と思ったのを強く覚えています。
ただ、僕が『家なき子』を観るだけで、こんな目に遭ったぐらいですから、真面目一筋で生きてきた父ちゃんが、ちょっとエッチな番組や、「童顔巨乳の萌えキャラ」が走り回るアニメを観た日なんかにゃ、集中砲火を浴びることは容易に想像できます。
「家族の目がある」というやつです。
そう考えると、当時の父ちゃんが「自分の好きな作品(商品)」を本当に選べていたのかは、甚だ疑問で、「家庭内の立場が悪くならない範囲の中から、作品を選んでいた」と考えられそうです。
その人の隣には誰がいる?
ぶっちゃけ今、一人が一台スマホを持っていて、そこから作品(商品)を取り込むことができるので、まわりの目を気にしなくてもよくなりましたし、サービスを提供する側も、そこの配慮をする必要が無くなりました。
エロコンテンツは、家族を介することなく、父ちゃんにダイレクトに届けることができるようになったので、「エロ」や「グロ」に全振りすることも可能です。
それはそれで素晴らしいことだと思うのですが、エンドユーザー(父ちゃん)にダイレクトに届けることによって、失っているものがあります。
『コミュニケーション』です。
ネットで情報や技術がカジュアルに共有されるようになり、作品や商品のクオリティーが高いところで均一化すると、最後の最後で明暗を分けるのは『コミュニケーションの有無』です。
Aの作品も、Bの作品も、どちらも面白いのならば、お父さんお母さんは、「家族で一緒に楽しめる(家族の会話が生まれる)方」を選ぶでしょう。
地方で絵本の個展をするとよく分かるのですが、親子三世代、親戚一同で起こしいただけるんです。
(※田舎の山奥の寺に数万人のお客さんが集まりました↓)
この時、お客さん(お父さんやお母さんは)、作品以外に「親子のコミュニケーション」を買っているハズで、もしも、そこに「エロ」や「グロ」が混じっていたら、「親子のコミュニケーション」が売れない。
つまり、作品が買われない。
作品や商品を生み出し届ける時に、「エンドユーザーに届ける」は勿論のこと、これからは「エンドユーザーのコミュニケーションを織り込んでおく」というのも、とっても大切で、これからは後者の重要度がどんどん膨れていくだろうなぁと思います。
ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』では、「英語字幕版」と「日本語字幕版」のオンライン配信チケットを用意しました。
つまるところ、「日本語が分からないパートナーとのコミュニケーション」や、「耳が不自由な家族とのコミュニケーション」の販売です。
チケット販売サイトを添付しておきますので、チェックしてみてください。
「個の時代」が長かったので、僕らはすっかり忘れていますが、
「まわりの目」は存在していて、
「息子に見せたくない」も存在していて、
「家族の会話を増やしたい」も確かに存在しています。
一度、ご自身のサービスのエンドユーザーのコミュニケーションに目を向けてみてください。
もしかすると、打ち出し方を見直すことになるかもしれません。
現場からは以上でーーす。
【追伸】
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