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芸人『キングコング』が変えた日本芸能史byキンコン西野

このnoteは2020年1月16日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:毛利英昭 さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日はですね、
芸人『キングコング』が変えた日本芸能史
というテーマでお話したいと思います。

広告費がどこに支払われ始めているか?を整理した方がいいよ。

自分たちがやったことを自分で語るのはどうなのかなぁ、という疑問もありつつ、時代の変換期の記録として把握しておいた方がいいと思うので喋りたいと思います。

改めましてなんですが、僕はキングコングというお笑いコンビを組んでいます。

まず、キングコングの仕事内容を整理しますね。

僕らが2人並ぶのは週に1回のyoutubeチャンネル毎週『キングコング』と、
劇場の漫才出番ぐらいなんです。

漫才はデビュー当時から今も変わらず大阪にある『なんばグランド花月』に月に1週間ぐらい立っています。

1日2〜3ステージあるので、だいたい月に20ステージほどですね。

2人が並ぶのはここぐらいですが、意外と漫才してるんですよ。

梶原くんはこれに加えて、ときどき地上波のテレビに出ていて、僕は引きこもり生活。

まぁ、かっこいい言い方をすると、そもそも日本にいないことも多いので、地上波に出させて頂くのは作品が完成した時と、『ゴットタン』と、東野さんに呼び出される時ぐらいですね。

あとはずっと裏でコソコソとやっております。

梶原くんはユーチューバー『カジサック』として働いていて、現在チャンネル登録者数が160万人くらいで、たぶん芸人の中で1番じゃないですかね。

一方、僕は月額1000円のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』を運営しておりまして、会員数は現在3万5000人(2020年5月現在は5万8000人)で国内最大となっています。

でね、きのう梶原くんに聞いたら2019年の休みは年末の3日間だけだったんですって。

僕は僕で、完全オフというのは基本1日もない。

キングコングって、あんまり見かけないくせにふたりとも意外と働いているみたいです。

で、こんなことをしているとよく「稼いでるんでしょ?」みたいなことを言われるんです。

だけど、キングコングについて稼いだ額で語るよりも、お金の出所で語った方が本質的だなぁと思ってます。

ここでね、一般的なタレントさんのお金の出所を改めてご説明しますね。

テレビが始まったのは、1950年代なんですよ。

たしか1952年ぐらいに白黒テレビが出たはずなんですけど、普及してるのはもうちょっと後かもしれない。

なので、テレビの歴史って60年とか70年になる。すごい続いてますね。

で、そのテレビのビジネスモデルは、基本、広告費で回っている。

スポンサーさんが広告費(番組制作費用)として、広告代理店を間に挟みつつですけどテレビ局にお金を出して、番組の制作費の一部がタレントのギャラになる。

番組の合間に流れるCMを見た一部の視聴者さんがCM商品を買ってくれて、
それがスポンサーさんの売上に繋がる。

で、スポンサーさんは、またその売り上げから番組の制作費を出す。

その繰り返しですね。

ここでは、広告代理店の存在とか、細いニュアンスはちょっと忘れてください。

で、こうやって整理すると、めちゃくちゃ間接的ではありますが、視聴者がタレントにギャラを支払っているんです。

CM商品を買うことで。

このテレビビジネスの登場人物は以下の5名ですね。

お客さん、スポンサーさん、タレント、広告代理店、テレビ局。

で、これが Youtube になると、登場人物が3名に減るんですよ。

お客さん、スポンサーさん、タレントです。

広告代理店とテレビ局が削られるんですね。

テレビ同様に『広告ビジネス』ではあるのですが、お客さんが払ってるお金がタレントに渡るまでの距離がぐっと短くなっている。

これは大きな変革で、これによってタレントは、

局員および声の大きなスタッフさんに気に入られるっていうのと、
企画書を通すという作業を無視できるようになった。

この作業を、タレントは60年~70年間ずっとやってきたけど「もうや~めた!」と言いきったのが梶原君ですね。

一方、相方の西野のビジネスモデルはどうなっているかというと、これはもう『広告ビジネス』ですらないんですね。

表現の合間に商品を紹介してないんですよ。

お客さんから直接お金をいただく『ダイレクト課金ビジネス』ですね。

ここでの登場人物は2名に減ります。

お客さんタレント。

この2名のみです。

これによって何がどう変わったかというと、

局員および声の大きなスタッフさんに気に入られるっていうのと、
企画書を通すという作業がなくなったのに加えて、

スポンサーさんの顔色を伺うという作業もなくなった。

Youtubeが子ども向け動画の広告規約を変更しようが知ったこっちゃない。
どうだっていいから、広告収入なんて。

もちろん法とか道徳といったラインを守りつつ、お客さんとタレントの僕の間で「これ面白いよね~」と手を結べていたら、もうそれで生活は成り立つ。

やっていることは、江戸時代の河原乞食ですね。
オンライン河原乞食です。

ただ、どこにもお伺いを立てずにエッジを効かせた表現ができるので、結果的に「河原乞食の方が世界に近かった!」というびっくりするお話です。

おそらくお金の流れで捉えられていない人たちは、オンラインサロンで活動する人に対して「外に出てきて勝負しろよ~」みたいなツッコミ入れてしまうんですけど、

俯瞰して見た時に、外に出てこれていないのは、お金の出所を握られていて表現に制限がかかっている『広告ビジネス』の住人ですね。

つまり、なんでテレビ出ている人が外に出れていないの?っていう疑問に対する答えなんですけど。

スポンサーさんはCMを見てもらわなくちゃいけないので、当然番組の視聴率は高くないと困る。それで、視聴者が求めている番組内容をほしがっている。

今の視聴者が求めているのって、たとえば、タレントの不倫ネタですね。

なので、朝っぱらから、ぶっちゃけどうでもいいタレントの不倫を延々と取り上げる。

テレビに出るタレントは
他のタレントの不倫に対して、誰がいいコメントを出せるか?
という競技で戦わされる日々ですね。

すると、評価基準が
「あの人のコメントは切れ味いいよね~」みたいになる。

これ、海外に出たときに「お仕事何されてるんですか?」って聞かれて「タレントです」と答えます。

それで、「どんなタレント活動なんですか?」と二の矢が飛んできた時に「他のタレントの不倫に対して切れ味の鋭いコメントをしています」と言っても何もならないじゃないですか。

外に出ていないってそういうことですね。

まぁ、くれぐれも言ってくと、
これはタレント批判ではなくシステムの説明です。

それで、今びっくりすることが起きていて、
こんなことは日本の芸能史で初めてだと思うんですけど。

僕がやっているオンラインサロン、企業さんから広告代理店業を頼まれるんですよ。

「予算出すからCMを作って」って。

テレビCMなのか、ネットCMなのか、街看板なのか、どこに広告を出すかも決めて、スタッフさんの座組を決めて、CMタレントのキャスティングも決める、と。

で、今度キャリオクっていう転職サイトのCMを作るんですが、ひいき目抜きにして、今回の企画にもってこいだと思って、CMタレントとしてキングコングを起用した。

西野は絵本作家に転職して、
梶原くんはユーチューバーに転職したんで。

そんでもって、そのCMができるまでの過程を自分たちのYoutubeチャンネルで追いかけるので、活動が雪だるま式的に大きくなる。

まとめるとですね、
このサイクルによって、企業の広告費が『広告ビジネス』で生きている人達から『ダイレクト課金』で生きている人、および経済的自立しているタレントさんに支払われ始めました。

これは怖い話です、ということでした。

というわけで、
 芸人『キングコング』が変えた日本芸能史
というテーマでお話させていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。


※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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