見出し画像

少しの工夫(仕組み)でブランドを守る

おはようございます。
4人組バンドは、途中で一人が脱退して3人組バンドになりがちだと思っているキングコング西野です。
 
さて。
今日は『少しの工夫(仕組み)でブランドを守る』というテーマでお話ししたいと思います。
 
昨日の「ブランドキラー」の話の【改善編】です。
 

映画の再上映の障壁
 

今朝のVoicyでもお話ししましたが、今回の『映画の再上映』の最大の発見は、「(キチンとデザインすれば)再上映でもお客さんが来る」ということだと思います。
 
このへんは、もう少しデータをとりたいところですが(引き続き頑張ります!)……一つ確かなことは、ビジネス的に言うと「既存の映画マーケティングでは刈り取りきれていなかった」といったところ。

まだまだ輪郭を捉えられておらず、上手く言語化できませんが、僕ら(映画の製作陣)は、何かの大きな勘違い(思い込み)をしているようです。
 
最初に『ドーン!』と宣伝をうって、話題になったり、ならなかったりしながら、集客がフェードアウトしていって、「もう、だいたい刈り取ったな」となったタイミングで公開終了……というモデルに対して、今回は「いやいや、なんか、その届け方が全てでもなさそうだよ」という結果が出始めています。
 
今回のような再上映を他の作品がやるには、いろいろクリアしなければいけない問題があります。
 
・広告費を誰が負担するのか?
・再び宣伝稼働する広告塔(だいたいの場合は役者)のインセンティブはどうするのか?
 
…などです。
 
『映画 えんとつ町のプペル』の再上映に関しては、映画単体の売り上げで広告宣伝費を回収するつもりが毛頭なく、「ハロウィンのアイコンをゲットすれば、ミュージカルや歌舞伎やコーヒー屋さんといった、その他のメディアで売り上げを作れるんじゃね?」という下心があるので、「先行投資」のように映画を再上映することができています。
 
このあたりは「シナジーマップ(※お金や広告の流れを可視化した図)」をキチンと描くことと、「映画以外のメディアの権利(キャッシュポイント)を握っておくこと」が大切になってくるので、『独立(or社内起業)』と『交渉』は外せません。
 
「グッズ化の権利はB社にあります」「舞台化の権利はC社にあります」となると、映画の再上映にかけた広告宣伝費を回収することができないので、「広告宣伝費全額負担するから、再上映をしましょう!」とは、ならないんですね。
 
このへんの込み入った話は、また今度させてください。
今回で、いろいろ見えてきました。
 

「開発至上主義」から、「継ぎ足し主義」へ
 

いずれにせよ、今回の再上映ではファーストラン(2020年12月25日の公開分)では届かなかった層に届いていることは間違いなくて、『えんとつ町のプペル』という作品の支持がまた一回り大きなものとなりました。
 
これは、横展開(ミュージカル化や、歌舞伎化)の追い風以外のナニモノでもなくて、つまるところ「ブランド」というのは、こういった「継ぎ足し作業の賜物」なのだ。
#なのだ
 
「いかに丁寧に継ぎ足していくか?」 そして、昨日もお伝えしたとおり、「ブランドに関わる人間が、いかにブランドに対して自覚的であるか?」が、どうやら、とっても大切みたいです。
 
一代で滅びる刹那的(インフルエンサー的)なブランドで終わるのか、それとも次の時代、また次の時代へと受け継がれていくレガシーブランド(時間を味方にしたブランド)になるのか?…は、ここにかかってきます。
 
代替不可能な「時間」こそが最大の資産で、僕らのようなベンチャーは戦略的にここを取りにいかないと生き残ることはできません。
 
「お金をかければコピーできてしまうもの」には価値が無いんです。
 
ブランドのバトンを受け継ぐ世代(次の世代)の最大の課題は昨日もお伝えしたとおり、「そのブランドがブランドになるまでに流された汗や血を想像するしかない」です。
 
ここの想像力が不足した瞬間に、無自覚な(悪意無き)ブランドキラーになってしまいます。
 
「その問題をどうクリアしていくか?」は、バトンを渡す側も一緒になって考えるべきで、個人的には最近「すっごく簡単だけど、意外と効果的かも」と思ったのが、「別部署の見学」です。
 

別部署の見学
 

先日、CHIMNEYTOWN代表のヤン君と、インターンのモリゴン&リノちゃんが、それぞれファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』の稽古場の見学に来てくれて、作品が生まれるまでの空気をモロに浴びて、クラクラしていました。
 
ミュージカルでは、たった3~4秒のシーンを作るのに、何時間もかけるわけですが、このことを想像する(伝え聞く)のと、現場でインプットするのとでは雲泥の差で、その時、本当の意味で「ブランドの重み」を知るのだと思います。
 
「これまで、『えんとつ町の○○』という商品を、いとも簡単に出して、『今回は売れなかったねー。あははww』とか言ってたけど、そのことが、どれだけ、これまでクリエイターが流した血や汗を安く見積もった行為で、どれだけ暴力的な行為か?」という。
 
そういえば、吉本にいた頃に、現場マネージャー(デザイン素人)が『えんとつ町のプペル』のグッズの商品画像を自分でデザインしていて、「一般的なお客さんは『誰がデザインしたか?』までは見ないぞ。つまり、キミのやっている仕事が、『えんとつ町のプペル』のデザイナーの仕事としてカウントされて、その人の信用を傷つけて、その人の仕事を奪うことに繋がることを、キミは想像できているか?」と話したことがありました。
 
デザインの現場を目の当たりにすると、きっとそんなマネ(※素人のボクがデザインしまーす!)はできなかったハズで、ブランドを守っていくには「別部署の見学」を積極的に進めた方がいいんだろうなぁと思います。
 
これは「システムで改善できる問題」なので、今日この瞬間からできそうです。
 
「ブランドを守っていくこと」というテーマは、まだまだ掘り下げる部分がありそうです。
また「気づき」があれば、共有します。
 
現場からは以上でーす。
 
【追伸】
サロン記事の感想を呟かれる際は、文章の最後に『salon.jp/nishino』を付けて《本垢》で呟いていただけると、西野がネコのようになつく場合があります。
 
【10月31日】
TOHOシネマズ六本木で、「舞台挨拶」があります。
うまくいけば、楽しい仮装で登場できそうです。
ご家族で是非↓

▼西野亮廣の最新のエンタメビジネスに関する記事(1記事=2000~3000文字)が毎朝読めるオンラインサロン(Facebook版)はコチラ↓

このnoteは2021年10月25日のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』への投稿をもとに作成しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?