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高価格帯のサービスを提供する際の期待値コントロール

おはようございます。
現在、絵本とミュージカルと伝統芸能の舞台と映画とお遊戯会と飛行機の格納庫を作っているキングコング西野です。
#肩書きを言えるもんなら言ってみろ
 
さて。
今日は『高価格帯のサービスを提供する際の期待値コントロール』というテーマでお話ししたいと思います。
 
僕は昨日の「格納庫の話」を軸に話しますが、何にでも置き換えられる話だと思うので、絶対に聞いてくれよな!
#少年アニメの次回予告の雰囲気
 

稼働率が低くても回るビジネス
 

今回の伊豆大島の視察では本当にいろんなモノがクリアになりました。

中でも一番大きかったのが、昨日もお伝えした「飛行機ではなくて、飛行機がとまっている格納庫をホテルにする」という変更で、それに伴い、すぐに「宿泊料金」の見直しに入りました。

方向としては「1~2万円の部屋を、どれだけたくさんの人に売るか?」ではなくて、「どのようにデザインすれば、一泊30万円の“施設”の満足度を作れるか?」という感じ。
 
「作ったサービスの値段を決める」のではなくて、「値段を先に(高価格帯で)決めて、その値段に見合うサービスを作ろう」…という順番です。
 
「連日、満室じゃないと回らないホテル」を目指すのではなく、「月に5~6件の予約があれば回るホテル」を目指します。
 
ここで「格納庫」(の広さ)が効いてくるのですが、ベッドを多めに用意して、「10人まで宿泊可能」にすることで(10人で割り勘できる選択肢を残しておくことで)、大学生でも本気を出せば泊まることが可能です。
 
ベッドのグレードをワザと散らしておくことで、就寝前の「良いベッド争奪ジャンケン大会」というエンタメも作れそう。
(※立派なベッドからカプセルホテルのベッドまで用意したい)
 
海が望める場所に、大きめの会議スペース(仕事しやすい環境)を用意しておけば、合宿需要も生まれそう。
#個人的にも利用したい
#チーム鴨頭と箕輪編集室とタムココサロンは必ず年間一泊してください
#これで365枠のうちの3枠が埋まりました
#ご馳走さまです
 
「格納庫」にしたことで、収益化にかかっていた煙がかなり晴れた感じがします。
 
そして、今日の話はここからです。
 

とっても大切な期待値コントロール
 

世界と戦う作品を作りながら、サービスも作っている男ならではのお話をしたいと思います。
 
今年のハロウィンに再上映が決まっている『映画 えんとつ町のプペル』では、内気な少年ルビッチが、これまで溜めていた(ずっと誰にも言えなかった)想いを町の皆に吐き出すシーンがあるんです。
 
(※こちら↓)

 
CMにも使われた「誰か観たのかよっ!」という台詞が入っている見せ場シーンです。
 
作品の時間にして、1時間以上引っ張った弓を(矢を)、ここで一気に放つのですが……実は、このシーンでは、ルビッチの顔が映っていないんです。
 
この見せ場シーンで映っているのは『町の人達の顔』で、ルビッチは背中しか映っていません。
 
普通なら、ルビッチの表情をドアップで見たい(見せたい)ところじゃないですか?
 
ですが、あのシーンでは、ただの一度もルビッチの顔は映らないんです。
 
当然、そこには演出的な理由がいくつかあるのですが、そのうちの一つに「期待値を超えないから」があります。
 
お客さんの頭の中でも描かれている『ずっと溜めていた思いをついに吐き出す少年の表情』を超える表情は、なかなか描けません。
 
漫画原作を実写化する際の「世界を変える歌声」を表現できないのと同じ理由です。
どれだけ歌の上手いアーティスト・俳優をキャスティングしても、「世界を変える歌声」は表現できないんです。
なぜなら、本人(アーティストや俳優)の歌声で実際の世界が変わっていないからです。
 
「まぁ、上手いよね」という感想で終わってしまい、上がりに上がった期待値を超えられない。
なので、こういう時は「現場では音が出ている」という“テイ”で、作品的には『無音』で表現されたりします。
 
「想像してください」的な。
 
星の形が変わるほど大爆発のシーンなどの爆発音も『無音』で表現されたりすることがあります。
「星の形が変わるほどの爆発音」は、スピーカーから出せないからです。
 
「ドーン!」という効果音を入れると、かえって、爆発がチープに見えてしまうことがあるんですね。
 
作品であろうと、サービスであろうと、人間を相手にする以上、根っこの部分は同じで、クリエイターやサービス提供者は『作品(サービス)-期待度=』の値を必ず「プラス」にして提供しなくちゃいけません。
 
 
で、ここが今日の話のとってもとっても大切な部分なのですが、お客さんの「期待度」は青天井なのですが、提供できる「サービス」には天井があるんです。
 
大切なので、もう一度言ったりますわ!
 
お客さんの「期待度」は青天井なのですが、提供できる「サービス」には天井があるんです。
 
クリエイターが提供できる「爆発音のマックス」は、映画館のスピーカーのボリュームのツマミを限界までひねったところです。
それ以上の音は表現できません。
 
となると、何らかの手段で期待値を下げるしかないんですね。
 
そのうちの一つに、「表情を見せない」や「音を出さない」といった『答え合わせをさせない』という打ち手があります。
 
 
さて。
 
ここで再び『格納庫ホテル』の話に戻るのですが、料金設定(ビジネスモデル)を見直していた時に、田村Pから「一泊30万円の宿の【料理】にかかる期待は絶対に超えられない」というアドバイスをいただいて、まさにおっしゃるとおりだなぁと思いました。
 
よっぽど豪華な料理が出てこないと納得感がないし、出てきたところで『これじゃない感』が生まれる可能性もある。
 
僕なら、せっかくなら、伊豆大島の「地元ならでは」の居酒屋やスナックに行きたいです。
豪華な料理を用意されて、格納庫から身動きがとれなくなる方がかえって満足度が下がる。
 
その後、スタッフとは「30万円の中に夕食代が入っていたら、夕食への期待が上がりすぎてしまうので、“料理の提供を抜いた状態で”30万円の納得感がある施設にしよう」ということで、話がまとまりました。
 
料理は地元のお店と連携をとって「外付け」という形ですね。
 
これは結構面白い話だと思っていて、要するに、「サービスを提供した方が、お客さんの満足度が下がる場合がある」ということです。
 
大切なのは、サービスの質ではなく、「期待度」を引いた時の値であり、是非一度、皆さんのサービスの「期待値コントロール」がちゃんとできているか見直してみてください。
 
「ここは、むしろ『無音』にした方がいいんじゃね?」という部分が見つかるかもしれません。
 
完全にVIP向けに作るホテル作りからは、まだまだ学ぶところがありそうなので、逐一、御報告いたします。
 
そんなこんなで、ホテル作りを進めている西野から、最後にお知らせです。
 
明日、ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』の演出で使うドローンの動きをテストするリハーサル(オンライン検証会)があります。
 
西野が明るく真面目に働いておりますので、興味がある方は是非、ご参加ください。
アーカイブも残るそうです。
 
現場からは以上でーす。
 
【追伸】
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このnoteは2021年9月8日のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』への投稿をもとに作成しています。

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