「エールとノエル」の聴きどころ!その②
世間はサッカーワールドカップで盛り上がっていますね!
さてさて、前回のコラムに引き続き、エールとノエルのご紹介コラムです。
前回のコラムはこちら
https://note.com/ensemble_germes/n/n72f72d54e64c
前半プログラムはフランス宮廷歌曲をお送りするのですが、固有名詞の人物が登場します。女性はイリス、シルヴィ、クリメーヌ、男性はティルシス。名前の由来は古代ギリシャ・ローマの田園詩です。
何でフランスなのに古代ギリシャ・ローマ?と思う方もおられると思います。
話は14世紀のイタリアに遡ります。ギリシャ・ローマの古典文化を復興しようという「ルネサンス運動」が始まり、ヨーロッパ全土に広まりました。(ルネサンスとはフランス語で再生、復活)
教会中心から人間中心へと変化し、人間の個性や自由といったヨーロッパ文化の基礎となっています。
ルネサンス・バロック期の世俗音楽(特に歌)は、ほとんど古代ギリシャ・ローマ文化のもとに成り立っていると言っても過言ではないでしょう。
さて話は戻りますが、田園詩に出てくる恋人たちはどんな感じなのでしょうか?
ピエール・オーギュスト・コットは19世紀フランスの画家で、今回演奏する曲の約200年後の作品ですが、羊飼いとニンフの恋のイメージにはぴったりだと思います。
さて、17世紀のフランスに戻りましょう。次にご紹介する絵画は17-18世紀フランスの画家、アントワーヌ・ヴァトーの「愛の調べ」。こちらは当時の男女の愛を描いたものです。
音楽を通して愛を語り合う、素敵な絵画です。ロココ調のはしりであるヴァトーの柔らかく流線的なタッチに、同時代の宮廷音楽にも同じものを感じます。
同じ時期に活躍したフランソワ・クープランの名は鍵盤奏者なら一度は耳にしたことがあるかと思います。
彼は17-19世紀に渡り活躍したクープラン一族の1人で、王室礼拝堂のオルガニストを務め、王家の子供達に音楽を教えていました。
今回、お送りするチェンバロ独奏曲の 「魅惑」は、クラヴサン曲集第1巻(1717)に収録されており、ヴァトーの絵画に同名の作品があります。
ギターを持つイケメン(きっと歌声もイケボ)に女性2人はウットリ。
それではフランソワ・クープラン「魅惑」を聴いてみましょう。
フランス風ロンドーの気品溢れる美しい作品です。
オリヴィエ・フォルタンはカナダ出身のチェンバロ、オルガン奏者。パリでピエール・アンタイに師事。1997年、モントリオール・バッハ・コンクールとブルージュ音楽祭で最優秀賞を受賞。モントリオールを拠点とする古楽アンサンブルMasquesの創設者(1996年)であり、音楽監督を務めています。
「魅惑」は、人々を魅了してやまない「イリス」の登場する歌曲と絡めて演奏する予定です。
イリスはギリシャ・ローマ神話では虹の女神であり、その美しさは虹も相まって神々しく、どこか色っぽさもあります。
今回、登場するイリスは神なのかどうか定かではありませんが、人々を魅力する美しさはきっとこんな感じなのかな、と想像しています。
さて、そんなイリスが登場する曲をご紹介します。
ミシェル・ランベール「もう終わりです、美しいイリスよ」
歌詞の大意は以下です。
もう終わりです、美しいイリスよ
死ぬほどの苦しみなのです
あなたが哀れみを感じるのは
私の死を目の当たりにした時だけ
フランスの老舗古楽団体レザール・フロリサンの演奏を聴いてみましょう。
ウィリアム・クリスティ率いるレザール・フロリサンは世界的に知られている古楽団体で、何度も来日しています。大編成のものから室内楽まで様々なプロジェクトを手掛けていて、中でも歌い手5人とヴァイオリン2本と通奏低音の編成で行ったエールドクールのコンサートはとても素晴らしかったです。物語仕立てになっているのも面白い。
レザール・フロリサン Airs sérieux et à boire
こちら長い動画なのでYouTubeで。。。キャプションも付いているので見やすいと思います。
https://youtu.be/uZiZYUCrfyY
さて、ランベールについては前回コラムをご覧ください。
この曲は「1-4声の通奏低音付きのエール」(1689年)に収録されていて、混声4部で書かれています。16世紀の宮廷歌曲は4声とリュート伴奏で書かれていて、その伝統がこの歌曲集にも残っていると言えるでしょう。
今回、歌い手が4人もいるのでアンサンブル多めなプログラム(特に後半)にしてみました。気のおける方たちとアンサンブルが出来る事、とても嬉しく思っています。来週からのリハーサルが楽しみです♪
次のコラムはクリスマスの歌についてお話しします。
次のコラムはこちら
https://note.com/ensemble_germes/n/n9f7e5a39d0b4
演奏会の情報はこちら
『エールとノエル』
~17-18世紀フランスのエール・ド・クールとクリスマスの歌~
17〜18世紀のフランスで貴族に親しまれていたエール・ド・クール(宮廷歌曲)。その内容は恋の歌、牧歌、酒の歌と様々です。宮廷のサロンでお話やお酒を嗜みながら音楽を楽しむ。そんな歌曲と、当時フランスで親しまれたクリスマスソングを織り交ぜたコンサートをお届けします。楽しいひとときを過ごしていただけたら幸いです。
日時: 2022年12月4日(日)開場15:30 開演16:00
場所: 日本キリスト教団 島之内教会
来場&配信チケットはこちら
http://www.sasakihiroko.com/22-12-04/
《プログラム》田尻健監修
第1部【宮廷で語られる恋愛模様】
第2部【クリスマス・ミサ〜フランスのノエル】
M.ランベール M. Lambert (1610-1696)/ 秘められた熱情 D’un feu secret
M.A.シャルパンティエM.A. Charpentier (1643-1704) / 不安もなくあの森で Sans frayeur dans ce bois
クリスマスの歌 Chants de Noël /
言ってください、マリアよ Or nous dites Marie
若き乙女は Une jeune pucelle 他
【アーカイブ配信も行います!】
遠方の皆様向けにアーカイブ配信も決定→チケット発売は12/14まで。配信は12/15-25に行いますのでご注意を⚠️
配信券は2000円、
パンフレットデータ/対訳/解説付き配信券は3000円です。
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